logo
Published on IPv6style (http://www.ipv6style.jp)

電子政府のIPv6対応の現状

By aoyama
作成日時 2007-05-09 04:08

 日本においてインターネットの普及は、基本的に大学や個人、企業などの民間によって進められてきた。それがIPv6の普及に関しては総務省が強く支援を行なっているということに、違和感がある人もいるかもしれない。

 日本政府が国の方針としてIPv6に取り組み始めたのは、2000年に当時の森喜朗総理大臣が所信表明演説において、IPv6に言及したことに端を発している。

 IT戦略本部のメンバーだった出井伸之・ソニー取締役代表執行役会長兼グループCEO(当時)は、森元首相に対してIPv6推進を進言した一人だ。出石は後から振り返って「首相がIPv6と言ったということが歴史に残るから」と説得したというが、確かにその言葉通りになった。

 e-Japan戦略に盛り込またIPv6だが、実際に誰もが「使える」ようになったのは、この1年ほどのことであるし、政府によるIPv6の利用に至っては、現在ではほぼゼロという状況だ。

 しかし、2006年1月に公開された「IT新改革戦略」では「今後、各府省の情報通信機器の更新に合わせ、原則として2008年度までにIPv6対応を図ることとする」と、具体的な期限を区切ってIPv6への対応が示されており、各府省もIPv6対応に向けて活動を続けている。

 それでは、現在の政府のIPv6対応状況をまとめてみよう。

IT新改革戦略
 Ⅱ 今後のIT政策の重点
  1.ITの構造改革力の追求
  (3)21世紀型社会経済活動
12.利便性・効率性・安定性及びセキュリティ機能の総合的な向上に資する電子政府共通基盤の構築に向けた検討を行う。また、今後、各府省の情報通信機器の更新に合わせ、原則として2008 年度までにIPv6 対応を図ることとする。さらに、高度で安全な電子行政の推進に向け、今後開発することが必要と考えられる技術について検討を行い、この検討結果を踏まえ、官民連携により必要な技術開発を推進する。(p23)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/060119honbun.pdf [1]

政府がIPv6を導入する意味

 日本においてIPv6を普及させる方策としては、民間事業者が提供する接続サービスや対応製品を企業やコンシューマでの利活用に対して、行政が支援するような施策を行なっていくことだけでなく、官公庁自身がIPv6のユーザーとなることで需要を生み出していくという手段もある。

 官公庁がIPv6を導入するということは、単にIPv6を民間に率先して導入していくことで産業振興を計るという面だけでなく、省庁再編にともなって複雑化した官公庁のシステムやネットワークをIPv6によって効率的に統合し、コストの削減を図るという目的もある。

 また、電子政府の進展によって、様々な行政手続きがオンラインで行なえるようになるということは、それらを扱う省庁の内部でも、それにあわせた電子化が必要になるということでもある。

 利用者側の手続きを電子化していながら、内部では紙の書類で手続きを進めるという笑い話みたいな状態では、そもそも電子化によるコスト削減にはつながらないどころか、返ってコストの増加につながってしまう。

 そして、IPv4アドレスの枯渇という危機が、現実のものとして迫りつつあり、今後IPv6が様々なシーンで利用されることが想定され、政府は否が応でもIPv6への対応が迫られることになる。

行政へのIPv6導入の過程

 では、国の方針において具体的にIPv6に関してどのように記されているのだろう。内閣・IT戦略本部が2006年1月に公開した「IT新改革戦略」では「今後、各府省の情報通信機器の更新に合わせ、原則として2008年度までにIPv6対応を図ることとする」と、具体的な期限を区切ってIPv6への対応が示された。

 また、電子政府推進計画にのっとり各府省のITインフラの効率化を目指して2004年2月に「業務・システム最適化計画策定指針」が策定されおり、2005年から2006年度末にかけて各府省から公開された業務・システム最適化計画には、各府省の内部ネットワークでIPv6の導入を検討する旨が記されている。

 たとえば経済産業省では次のように述べている。

経済産業省情報ネットワーク(共通システム)最適化計画 平成18年3月7日
 第2 最適化の実施内容
インターネット等外部ネットワークのIPv6への対応状況及びIPv6に対応したハードウェア及びソフトウェアの製品動向を踏まえ、本情報ネットワークのIPv6への対応を検討する。http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/e-meti/network_saitekikakeikaku.pdf [2]

 さらに2006年8月には各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議では、「各府省は、IPv6等普及が見込まれる情報通信技術について、適用する範囲とその効果を明確にしたうえで、その効果的な導入を図る」ことと、再度IPv6に関する方針が明確にされた。

電子政府推進計画・2006年(平成18年)8月31日・各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定
 第2 目標達成のための施策
  Ⅱ 費用対効果等を踏まえた成果重視施策
   4 全体最適化に向けた諸課題への取組
    (2) 情報システムの高度化
     ② 情報通信技術の効果的な導入
各府省は、IPv6等普及が見込まれる情報通信技術について、適用する範囲とその効果を明確にしたうえで、その効果的な導入を図る。http://www.e-gov.go.jp/doc/060831/suisin.html [3]

 ただし、この決定は一律的に行政のネットワークをIPv6へ移行させるというものや、IPv6/IPv4デュアルネットワークへの完全対応を強制するものではない。IPv6を利用する場所や、導入の仕方は、あくまでも各府省の判断にゆだねられている。

 では、各府省がIPv6を導入しようとした場合、具体的にどのような手順で進めていけば良いのだろうか。民間企業でも大規模にIPv6を導入した事例は少ないため、現在のところ移行や導入に際しての、一般的な手引き書のようなものはほとんどない。

 それを受けて総務省では、2007年3月に「電子政府システムのIPv6対応に向けたガイドライン」を公開した。このガイドラインは、各府省がIPv6を導入するにあたっての計画策定の手順や、IPv6対応製品・サービスの現状、またそもそもIPv6の必要性などをまとめたものだ。

 そのほかIPv4とIPv6のコスト構造を、インフラやサーバー、一般職員が利用するクライアント向けの製品などを細かく見た上で比較しているなど、官公庁のみならず、一般企業におけるIPv6対応に向けた行動指針としても有効な内容となっている。

 このガイドラインの策定に携わった総務省・総合通信基盤局・データ通信化の高村信 課長補佐によると、このガイドラインを策定したのは次のような理由だという。これまで行政においてIPv6を大規模に導入した事例がないため、各府省の担当者からの「参考になる資料がない」という声を受けて、“導入計画を作るためのマニュアル”という位置づけで作られたものだ。

 これまで総務省では、様々な実証実験を行なってきており、その成果として個別具体的なネットワークのソリューション事例については、多くの蓄積がある。それらは「IPv6移行ガイドライン」として公開されている。

 この移行ガイドラインには様々なシステムや状況でのIPv6利用事例が集められており、その資料としての価値は高い。しかし、各府省の担当者がすべてIPv6に詳しいとは限らないため、移行ガイドラインを十分に使いこなせない。そこで、IPv6の専門家でなくても、「IPv6移行計画」を作ることのできる、マニュアルが必要だったのだ。

 2007年度からは「電子政府システムのIPv6対応に向けたガイドライン」をもちいて、各府省において具体的なIPv6導入手順が決められていくことになっている。各府省同士をつなぐ政府の共通ネットワーク「霞が関WAN」のIPv6対応も2007年度中に開始される。

 電子政府の完全なIPv6対応という最終目的が、いつ達成できるかはまだ不透明と言える。しかし、これまで長く足踏みを続けてきた「電子政府のIPv6対応」の、本当の第一歩が動き出した。

この記事のトラックバックURL

http://www.ipv6style.jp/trackback/961

Source URL:
http://www.ipv6style.jp/jp/20070431/soumu.html