JPNIC 理事/インテック・ネットコア専務取締役CTO 荒野高志
JPNIC IP事業部 穂坂俊之
割り当て可能なグローバルIPv4アドレスの枯渇時期に関しては様々な見方、予測があった。そのような中、2003年7月にAPNICのGeoff Huston氏が、アドレス割り当て累積量はほぼ線形であり、IANAのアドレス在庫が無くなるのが2021年、RIRの在庫が無くなるのが2022年という予測を行った。RIRのもつ詳細かつ信頼のおけるデータを用いて解析を行ったということもあり、以来、同氏の予想が広く引用されるようになった。(※注1 [0])
ところがこの予想が発表された後からIPv4の消費量が増加傾向を見せ始めた。RIRが公開している統計資料から集計した結果によると、2003年の1月~10月に割り振られたホスト数が約6,664万ホスト(3.97×/8)だったのに対し、2004年の同期間に割り振られたホスト数は1億1,104万ホスト(6.62×/8)、2005年の同期間に至っては1億4,854万ホスト(8.85×/8)となっている。
この増加傾向を見て、2005年の夏あたりからIPv4の枯渇時期の予測を見直す動きが始まっている。まず、CISCOのTony Hain氏がInternet Protocol Journalの2005年9月版で、「現在の消費ペースが続くとすると、早くて2009年、遅くとも2016年にはIANAの在庫が枯渇する」と発表した。(図1参照)
図 1:Tony Hain氏による枯渇時期予測
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これを受け、Geoff Huston氏も自身の枯渇時期予想を見直した結果、2005年11月9日現在、IANAの在庫が無くなるのが2012年5月12日、RIRの在庫が無くなるのが2013年の5月27日と予測している(※注2 [0])。いずれの予測も、2003年当時の予測から枯渇時期が大幅に早まっているが、Tony Hain氏の予測の中央値付近にGeoff Huston氏の予測が収まっていることから、2012年~2013年あたりがIPv4アドレスのRIR在庫が無くなる時期として現在最も確からしい予測と言っても良いであろう。
このように枯渇予想時期が早まったのは、先にも述べた通り昨今のIPv4アドレス割り振り量の増大が原因である。では何故、今割り振り量が増加しているのであろうか。いくつか考えられる事項を列挙してみる。
- 日韓はもとより、米国や中国など世界的に、常時接続・ブロードバンドの家庭への浸透してきたことにより、ダイヤルアップ環境時と比較すると飛躍的にユーザ1人あたりの必要アドレス数が多くなった。
- IP電話、オンラインゲームなどグローバルIPアドレスの割り当てでないとサービスを受けられないアプリケーションが増えた影響で、今までプライベートIPアドレスの割り当てを行っていた事業者が、順次グローバルアドレスの割り当てに切り替えてきている
- RIR/NIRのアドレスポリシーの運用も、以前と比べると緩い方向に変化してきている。NATを採用するかどうかは完全にユーザの裁量としたこと、/8を超えるプライベートネットワークに対してもグローバルアドレスが割り当てるような事例が出てきていること、などがあげられる。また、アサインメントウィンドウという事業者の裁量に任せる割り当てシステムが順調に機能しはじめてきており、申請者側の申請バリアを下げるなどスムーズに割り当てプロセスが回るようになり、結果として割り振り量が増えているという側面も見逃せないだろう。
もちろんこれまで示したデータはあくまで予想であり、実際に枯渇するX年は種々の要件によって左右されるだろう。しかし上記の1~3のような状況が世界の各地で起こっていくことを考えると、IPv4の消費ペースがさらに早まることは考えられても、遅くなるとは考えにくい。加えて「駆け込み需要」として、無くなる前にアドレスを申請してしまおうという動きが起こるのも間違いない。
一方では、枯渇時期を遅らせるような要因も存在する。IPv6への移行状況もひとつの大きな要因であるが、その他にもGeoff Huston氏は未使用アドレスの回収/再利用をあげている。しかしTony Hain氏は、使っていないアドレスの返却、再利用が効率良く行われるとは思えないとしており、回収・再利用は多少の延命策にしかすぎないと見るのが妥当である。
いよいよ枯渇時期があと2年などというように目前に見えてきたときのIPv4アドレス割り振り/割り当て状況はどうなるであろうか? 既にアドレスの割り当てを受けている企業ネットワークが直ちにIPv4アドレスが使えなくなるわけではないが、一方でISPは新規のIPv4顧客受付を停止せざるをえない。そのような状況で、前述した駆け込み需要をはじめとして、場合によってはアドレスのブラックマーケット化、国間や組織間でのアドレス分配の不公平さへの不満など、アドレス割り振り/割り当て業務周辺ではかなりの混乱があると考えられる。とても年限ぎりぎりまで使えるとは思えない。
唯一かつ根本的な対応はIPv6の導入と移行であろう。たとえばテレビ放送の分野では、地上アナログ波の2011年停波が決定しており、それに対応する移行策が政府、民間レベルでさまざまにはかられている。それに比べるとインターネット分野では、場合によっては地上アナログ波の停止よりも先にIPv4アドレスが枯渇するかもしれないのに、そのことへの対応やIPv6への導入は遅れているといわざるを得ない。
IPv6の製品や運用技術はすでにレディになりつつあり、実システムへのIPv6導入を促進していく必要がある。新規システムはIPv6上に構築し、システム更新時期を迎えたシステムもIPv6対応にしていくなどという取り組みが必要となるだろう。次回の更新時期にはもはやIPv4のアドレスは枯渇している可能性もあり、更新時期と更新時期の間にIPv6移行を実施せざるをえない可能性とその際のコストデメリットを考えると、当初からIPv6対応をしておくことは十分な理由があることだと考えられる。
以上、IPv4アドレスの割り振り量の最新状況、及びそのインパクトについて述べてきた。2009-2016年というTony Hain氏の予測がどの程度当たるのかについては、今後、継続的な割り振り量の監視及び解析が必要である。JPNICでも独自にこれを行うプロジェクトを立ち上げる予定である。また適宜、ご報告していきたいと考えている。
http://www.potaroo.net/ispcol/2003-08/ale.html [1]http://www.potaroo.net/tools/ipv4/ [2]
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