| 第1回 IPv6アドレスの基本 | (2004.11.17) |
穂坂俊之
JPNIC
IPネットワークに接続されたコンピュータには、それぞれのコンピュータを識別するために番号が付与されるが、この番号をIPアドレスと呼ぶ。IPアドレスには現在IPのバージョンの違いにより、IPv4アドレスとIPv6アドレスがある。現時点で広く使われているのはIPv4アドレスだが、IPv6アドレスの割り振りを受け、IPv6サービスを提供する事業者も増えてきた。最近はIPv6の本格サービス提供の準備に向け、大規模な割り振りを受ける事業者も欧州や日本で現れている。この連載ではIPv6アドレスについて基本的な仕組みを押さえたうえで、IPv6アドレスの分配ルールがどのように運用されているかの解説を中心に、IPアドレスレジストリの立場から、IPv6アドレスに関する最新の状況を紹介する。
IPv6のアドレス体系
まず、IPv6のアドレス体系について簡単に触れておこう。IPv6アドレスは128ビットからなるアドレスであり、単純計算ではおよそ43億の4乗個のアドレスが利用可能となる。32ビットからなるIPv4アドレス(約43億個)よりも格段に多くのアドレスが利用可能であることが分かるだろう。
IPv4アドレスは8ビットごとに4つに区切って10進数に直し、ピリオドで区切った表記を行う。しかし、IPv6ではこの表記だと長くなり過ぎるので、16ビットごとに8つに区切って16進数に直し、コロンで区切った表記を行う。その際、連続して0が続く場合、表記を省略できるというルールがある。また、IPv4と同様にプリフィクス長を表すための「/」を使った表記も使われている。
(IPv4アドレス表記例 192.168.0.0/24)
(IPv6アドレス表記例 2001:0DB8::/32)
IPv6アドレスの種類
IPv6アドレスは、一般的には以下に挙げる3つに大別される。
| (1) | ユニキャストアドレス 単一のネットワークインタフェースに対して使用されるアドレス。 |
| (2) | エニキャストアドレス 複数のネットワークインタフェースに対して使用され、そのうち1つのホストのみと通信を行うためのアドレス。 |
| (3) | マルチキャストアドレス 複数のネットワークインタフェースに対して使用され、同一アドレスを持つすべてのホストと通信を行うためのアドレス。 |
(1)のユニキャストアドレスには、集約可能なグローバルユニキャストアドレス(以下、グローバルIPv6アドレス)とリンクローカルユニキャストアドレス(以下、リンクローカルアドレス)とがある。このうち、前者のグローバルIPv6アドレスが、IPアドレスレジストリからの分配の対象になる。このアドレスの構造はRFC3587によって図1のように定義されている。
図 1:IPv6アドレス構造
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具体的には、フォーマットプリフィクス「001」のアドレス(2000::/3)が目下レジストリによって分配されているアドレスとなる。 後者のリンクローカルアドレスは、接続された同一セグメント内でホストを一意に識別するためのアドレスで、「FE80::/10」という専用のプリフィクスが用意されている。128ビットアドレスのうち、16ビットのサブネットIDはエンドユーザー組織が内部ネットワークのセグメント分けのために自らの判断で利用できる部分である。また、下位64ビットのインタフェースIDは、それぞれの端末のネットワークインタフェースこどに対してつけられる部分である。IPv6に備わっているアドレス自動設定機能を活用する場合、EUI-64というMACアドレスを利用したルールによってり自動生成される。したがって、正確にはグローバルIPv6アドレスの上位48ビットがIPv6の階層的なアドレス分配メカニズムの対象となる。 エニキャストアドレスには、それ用のプリフィクスが用意されているわけではない。エニキャストアドレスはユニキャストアドレスの特殊なものとして定義されており、具体的にはインタフェースIDのビットがすべて「0」となっているアドレスとなる。 マルチキャストアドレスには、上位8ビットがすべて「1」となっている「FF00::/8」というプリフィクスが用意されており、上位9ビット目から12ビット目までの4ビットで、そのマルチキャストアドレスの意味を表現している。12ビット目が「0」であれば、そのアドレスはIANAによって割り当てられた固定のマルチキャストアドレスとされる。 また、11ビット目が「1」であれば、そのマルチキャストアドレスを割り当てたプロバイダに割り振られているプリフィクスが埋め込まれることになる。 サイトローカルアドレスとユニークローカルアドレス IPv4アドレスでは、インターネットに直接接続しないホストに割り当てるアドレスとして、10.0.0.0/8 や 192.168.0.0/16 などのプライベートアドレスが規定されている。これと同じように使えるIPv6アドレスとして、「FEC0::/10」というプリフィクスを持ったサイトローカルアドレスと呼ばれるアドレスが規定されていたが、今ではこれは廃止されている。 現在、このサイトローカルアドレスに代替するアドレスとして、ユニークローカルIPv6ユニキャストアドレスの仕様策定の議論がIETF(The Internet Engineering Task Force)を中心に行われているが、未だ正式決定に至っていない。2004年10月に行われたARIN(American Registry for Internet Numbers)のミーティングにおいても、「勝手に経路広告を行い、プロバイダ非依存アドレスのように使用されてしまうのでは」という、ユニークローカルアドレスに対する懸念が出席者から表明された。さらにこれに同調する意見も出るなどの状況もあり、このまますんなりとは最終決定されないような雰囲気である。本件に関しては、今後も注意深く状況を見守る必要がありそうだ。 ここまでで説明した内容をまとめたものとして、表1にIPv6アドレスのフォーマットプリフィクス別の割り振り状況を示しておく。 |
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階層的なアドレスの管理と分配 次に、グローバルIPv6アドレスの分配の概要を見ていこう。IPアドレスには所有権という概念はなく、公共の資源を管理・使用することを認可されたものとされている。そのため、アドレスの売買や譲渡は認められていない。アドレスの管理は階層的になされており、管理構造の最上位にいるのがIANA(Internet Assigned Numbers Authority)である。 そのIANAから地域別にアドレス管理を行っている地域インターネットレジストリ(RIR:Regional Internet Registry)へアドレスの割り振りが行われる。RIRにはアジア・太平洋地域を主に管轄するAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)、北米地域を主に管轄するARIN、欧州地域を主に管轄するRIPE NCC(Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)、そして南米・カリブ海地域を主に管轄するLACNIC(Latin American and Caribbean Internet Addresses Registry)の合計4つがある。この地域分けで分かるように、日本を管轄するRIRはAPNICである。また、日本及び韓国、台湾をはじめアジアの数ヶ国では、国別インターネットレジストリ(NIR:National Internet Registry)がRIRからの権限委譲を受けてアドレス管理業務を行っている。JPNICは、ここでいうNIRにあたる組織である。 RIR(もしくはNIR)からはさらに、ローカルインターネットレジストリ(LIR:Local Internet Registry)と呼ばれる組織へ、アドレスの割り振りが行われる。LIRはRIR/NIRから委任を受け、エンドユーザーへアドレスを割り当てる組織であり、一般的にはISPである。LIRは、自分の取得したアドレスをエンドユーザーに割り当てるほか、下流のISPに対する割り振りを行うこともある。 IPv4アドレスでは、ある特殊な要件を満たせば例外的にエンドユーザーがRIR(もしくはNIR)から直接アドレスの割り当てを受けることもできるが、IPv6アドレスでは事業者による経路集約を最大限有効化するという観点から、RIR(NIR)からエンドユーザーに直接IPv6アドレスの割り当ては行っていない。したがって、エンドユーザーはすべて自身が接続する通信サービス提供者からグローバルIPv6アドレスの割り当てを受けることとなる。つまり、利用する通信サービス提供者を変更した場合、グローバルルーティングプリフィクスは変更されることになる。 ここまで、「割り振り」「割り当て」と似たような用語を使っているが、IPアドレスの管理上この2つは区別される。IPアドレス管理上、上位の組織が下位の組織に対し、「再分配用」としてアドレスを分配することを「割り振り(allocation)」という。これに対して、エンドユーザーもしくは割り振りを受けた組織自身のインフラに使用させる目的でアドレスを分配することを「割り当て(assignment)」という。 ![]() 図 2:IPアドレスの管理構造 一般に、企業もしくは個人がグローバルIPv6アドレスの割り当てを受けたい場合、その企業・個人は接続されている上位の通信サービス提供者よりアドレスの割り当てを受けることになる。また、再分配用のアドレスの割り振りを受けたい場合は、RIR/NIRへ割り振り申請を行うことになるが、別途管理ルール(アドレスポリシー)に定める要件を満たす必要がある。 現在、JPNICでは既にIPアドレス管理指定事業者である組織を対象に、APNICへのIPv6アドレス割り振り申請の取り次ぎを行うサービスを提供しており、これらの組織はJPNICを通じて割り振り申請を行うことが可能となっている。 次回は、具体的にどのようにIPv6アドレスの割り振り、割り当てがなされているかを中心に、現在有効なIPv6アドレスポリシーについて触れていく予定だ。 |
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