IPv6Style編集部
青山祐輔
Interopの目玉の一つは、幅広い分野に及ぶカンファレンスだ。著名人や業界のキーマン、監督官庁の担当者といった、さまざまなパネラーが登場した。その中から今回は東京大学大学院の江崎浩教授がチェアをつとめた「IPv6ホットトピック in 2006」の模様をお伝えする。
「現状のIPv6は蒸気機関だ」 ~荒野高志氏(インテック・ネットコア)
インテック・ネットコア代表取締役社長でJPNIC理事の荒野高志氏は「新事業分野におけるIPv6ソリューション」と題してセッションを行なった。IPv4アドレス枯渇に関する予測は深刻なものとなっており、IPv6への移行は急務だ。しかし、なかなか一般企業にまではその意識が浸透しておらず、どのようにしてIPv6移行を促すかという視点から、荒野氏は解説をおこなった。
荒野氏は、IPv6普及・高度化推進協議会の意向ワーキンググループの主査を務めており、数々の実証実験の指揮を執ってきた。しかし、これまでの実験を振り返ると2003年までに行なわれた実証実験は、技術的には興味深いもののコストメリットが見えないものや、現実的な運用には向かないものが多く、本当の意味で実用につながっていないという。
しかし、2004年前後からIPv6よIPv4の“違う点”が正しく認識されるようになり、その違いが有効に働く場面での導入例が増えてきたという。そこから荒野氏は、これからのIPv6導入においては、次の3つのモデル「Smooth Transition」「Force Deployment」「Solution-Oriented Deployment」が有効だという。
Smooth Transitionは、オフィスにおける機材の更新時にIPv6対応のものに、あらかじめ入れ替えてしまうというもの。事業者のネットワーク設備は、おおむね5~6年前後で入れ替えられることが多い。従ってIPv4アドレスの枯渇が目の前に迫っている今、この1~2年以内に入れ替える予定があるならば、IPv6化するか、少なくともIPv6対応製品を選定することは必須だ。
Force Deploymentは、国が法令を定めることによって導入を強いるものだ。アメリカでは2008年までに政府調達においてIPv6対応を必須としたり、日本でも総務省が同様の方針を打ち出す見込みだったりと、一種の公共事業的な側面からIPv6の導入を促進しようというもの。
3つめのSolution-Oriented Deploymentは、IPv6やIPv4というプロトコルの違いに関係なく「問題を解決する技術の一つ」としてIPv6を利用していこうというもの。種々のネットワーク構築手段があるなかで、IPv6でできることはIPv4でもできるという反論があるが、これは逆も成立するのだ。そして、同じことができるならば、コスト面や将来性を考えるとIPv6の方がソリューションとして有効なのだから、そちらを利用するのは当たり前だという考え方だ。
これら3つの導入モデルもあわせて考えれば、今後のネットワーク導入においてIPv6の採用はごくごく当たり前のものとして受け入れられていくだろう。
そして、荒野氏は現在のIPv6技術を、蒸気機関の発明に例えて言った。産業革命の以前に蒸気機関が発明された当初は登場したが、当初は“馬”の代用品にしか過ぎず新しいことができわけではない。しかし、改良が進んで機械として洗練され、さらに蒸気船や蒸気機関車という本当のイノベーションが起きて、産業革命に結びついたのだという。
「そして歴史的には蒸気機関が産業革命を起こしたと言われるようなった。IPv6も同じような位置づけにあると思っている」という。IPv4によるコンピュータネットワークが出現してイノベーションが起き、さらにIPv6によるユビキタスネットワークがいろんなものをつなげる役割を果たし、その上に全く新しいサービスやプロダクトが生まれる。そのとき初めてIPv6がイノベーションを起こしたと言われるだろうとまとめた。
IPv6とWiMAXは二人三脚 ~伊藤公祐氏(IRIユビテック)
IRIユビテックの伊藤公祐氏からは、今後のIPv6とWiMAXの関係について報告がなされた。
WiMAX自体は、あくまでも無線ネットワーク技術であり、IP層はIPv4でもIPv6でも問題なく動くが、WiMAXの技術仕様を策しているWiMAX Forumでは、WiMAXの市場性を高める技術してIPv6を指示していくことを表明している。
また、インターネットにおける標準技術を策定するIETFにおいて、IPv6 over IEEE802.16 networksというBOFがスタートしている。そこでは、移動体向けに現在策定が進められているモバイルWiMAX上において、IP接続性をどのように維持していくかといった技術ディスカッションが行なわれており、BOFは早いうちにワーキンググループへと移行し、本格的な検証作業が開始される予定だという。
IPv6で都市全体の省エネ化 ~Robert Dolin氏(エシェロン)
ビルオートメーションやファクトリーオートメーションのオープンプラットフォーム、LonWorksを開発したEchelon社のRobert Dolin氏からは、米国でIPを利用したビル管理による省エネプログラムの実例が紹介された。
今回のプレゼンで取り上げられたのはサンノゼにある1999年に建設されたエシェロンの本社ビル。このビルは旧来のノンIPタイプのビル管理システムが導入されており、それをLonWorksによってIPベースのシステムに統合したという。
一時期、大きく報道されたようにカリフォルニア州では電力不足が深刻化しているため、このため夏のピーク需要時には電力料金が上昇する仕組みになっており、その料金はウェブ上にてリアルタイムで公開されている。
エシェロン本社では、ビルの管理システムをIPベース化して全体を総合的に監視することで、省エネ化を実現したという。真夏の午後2時頃に消費電力がピークを迎える頃に、室温を2.5度以内で若干上昇させ、照明もわずかに暗くする。こういった調節を自動的にシステムが行なうことで、エネルギーの消費量を30%削減することができたという。
もちろん、明るい照明が必要な仕事をしている従業員や、室温を下げる必要があるフロアなどは個別に調節もできるため、省エネだからといって特に我慢を強いることもなく、従業員の満足度も高いものになるという。
現在のところ、LonWorksはIPv4ベースで、個々ビルごとに管理を行なっているが、IPv6によって複数のビルを同時に管理可能になれば、省エネ効果はより上がる。また、それを都市全体や、州、または国というレベルで考えれば、より大きなレベルでエネルギー消費量の削減を達成できる。
そして、エシェロンがもう一つ注目する技術がWiMAXだという。Dolin氏によれば、アメリカにおいては、まだまだ管理システム自体が導入されていない建築物は多く、またそういった建物は設備が古くインターネットに接続されていないという。WiMAXを利用することで、そういった建物にも安価にインターネット接続導入し、IPベースの管理システムを利用できるようになるだろうとした。
最後にDolin氏は、こういったインフラに対して新しいテクノロジーを導入することに対する社会的な影響について「人や企業は、今のやり方で収益を上げているので変化に抵抗するもので。そういった古い企業は省エネを強制化することによる雇用とか景気に対する影響を口実にして抵抗する」という。
しかし、現実を見れば「エネルギー危機というのはすでに近づいてきているのですから、後手にまわらず先手にまわるというのが私どもに与えられた一番の課題だ」として、地球環境保護のためには積極的に最新技術を利用していくことが重要だと語った。







