IPv6 Summit in TOYAMA 2006 レポート その1

IPv6 Summit in TOYAMA 2006 レポート その1

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IPv6Style編集部:青山祐輔

2006年3月3日、富山県富山市においてIAJapan IPv6ディプロイメント委員会が主催する「IPv6 Summit in TOYAMA 2006」が開催された。東京大学大学院の江崎浩教授による基調講演のほか、独立行政法人NICT総務部長の吉崎正弘氏、NTTドコモのネットワーク研究所長 今井和雄氏といった、これまでのIPv6関係のイベントにはないバラエティに富んだ顔ぶれによるセミナーが行われた。

基調講演 「インターネット第4の波 GET MONEYからSAVE MONEYへ」
江崎浩 東京大学大学院教授

東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授が基調講演を行った。「インターネット第4の波 GET MONEYからSAVE MONEYへ」と題し、IPv6化のメリットがコスト削減にこそあるという点を、いくつかの事例を紹介しながら強調した。その概要を以下に紹介する。

江崎浩 東京大学大学院教授

IPv4環境ではNATとプライベートアドレスによるネットワークが初期コストの低さから多く行われているが、引っ越しによるネットワークの統廃合やネットワーク機材の更新といった自体が発生すると、とたんに時間的にも金銭的にもコストが増加するという。はじめからグローバルIPアドレスを利用していれば、そういったコンフリクトは発生せず、さらにIPv6ならばクライアント側の再設定も最小限で済む。

また、これまで景気が悪かったため、長期的なスパンでシステムを考えにくい状況が続いて、多くの企業が初期コストを抑えようとして、その一環でNATが使われてきたが、結局それは安物買いの銭失いということになっている。

その良い例がIP電話の導入であった話しだ。フリービットが全国の200ヵ所以上の拠点を結ぶ社内電話を9か月でIP化するということをやった。これがIPv4の場合、1つのIP電話端末につき8つほどの設定を手動で、しかも1個ずつおこなっていく必要があるが、今回はIPv6を利用したため、細かい設定が不要となった。これまでは、エンジニアの人件費は高いのにIP電話の設定をするだけのために、何時間も何日もかかりきりになってしまっていた。それに比べれば、IPv6を利用したときのコストの差は歴然としている。

日本においては、結局一番高く付くのは人件費であって、そこを小さくしながら競争力を維持することが大切。プライベートアドレスは、一見するとコストが小さく見えるが、ライフタイムコスト、ランニングコストを考えると、人件費が掛かってしまい高く付く。最初からグローバルIPアドレスを振ることで、それを抑えられる。

ただし、IPv4のグローバルアドレスは、現在枯渇の問題に直面している。2005年に発表された研究では、現状では残っているアドレスは25%しかなく、しかも需要は増え続けている。最短では2008年、最長でも2012年にはすべて使い果たしてしまう見込みだという。

IPv6ワールドコングレスという、世界中からIPv6のエキスパートを集めた非公開なミーティングに参加している。これはいかにして世界各国でIPv6を展開していくかを話し合う場だといい、前回の主題はITのROIをIPv6によっていかに改善していくかだ。

IPv6はこれまで日本がリードしてきたが、アメリカが2008年に連邦政府のネットワークをIPv6に移行することになり、さまざまな動きがでてきた。この数年、アメリカにおいて国防総省(DOD)の関係者と定期的に会合を行っているが、2005年の後半になってからは会合に出席するDODの人間が、ネクタイにスーツを着た人間から、制服を着た人間に変わった。これは、すでに構想から実務レベルに移ったと言うことで、彼らが本気で取り組んでいるということだ。

DODがなぜIPv6を導入するかというと、それも結局はコスト削減が目的。2月に開催された、GLOBAL IP BUSINESS EXCHANGE 2006において、小池百合子環境大臣が「環境とIT」ということで講演を行ったが、環境問題もIPv6にとって追い風となる。

さまざまなシチュエーションにおいて省エネが課題となってきており、環境対策はコストではなく効率性を生み出す要素になってきている。IPv6を利用したファシリティコントロールを導入したことで、空調に掛かってきた消費電力が40%も削減できた事例もある。

こういったコストとの削減を目指してくと、最終的には街全体をIT化するという考えまで行き着く。IT化によって街全体が安心で安全になれば、人々の活動効率があがる。こういったインフラの先行投資を行えば、どこにも真似できないような街ができる。

アジアに行くとインフラが整っておらず、作業効率が悪い。IT化は私たちの作業効率を考えられないほどに挙げている。そしてIPv6によって、それはさらに向上する。

セミナー 「行政とIPv6」
吉崎正弘 NICT総務部長

総務省の前総合政策課長で現在は独立行政法人情報通信研究機構の総務部長を務めている吉崎正弘氏は、「行政とIPv6」というテーマでこれまでIPv6の普及のために行政が行ってきた役割について総括を行った。

吉崎正弘 NICT総務部長

まず吉崎氏は、自身とIPv6の関わりについて、総務省における予算のとりまとめ役として「v6のプロジェクトにいくらお金をかけようか?」といった視点でのものであって、その意味では「IPv6のシロウト」であると強調。しかし、シロウトとしてどのようにIPv6を見ていたか、と話しを始めた。以下にその概要をまとめる。

IPv6の定着のために行政ができる役割は、はっきり言ってあまりない。IPv6を主に使うのは民間であるからだ。しかし、小さいながらも行政が果たせる役割が3つほどある。

1つは、共通に使える基盤となる技術開発や、標準化といったルール作りを支援すること。2つめは、IPv6の立ち上がり時期にショウルーム的なプロジェクトを行い、国民に見てもらい体感してもらって、普及の導火線とすること。3つめは、全体の中ではごく一部かも知れないが、行政みずからがユーザーとなる官庁利用。

IPv6の特徴と、それが行政とどのように関わっていくか、それを今挙げた3つの視点にあわせて話したい。まずは、アドレスの数が非常に増える。たくさんあれば何がいいのかというと、昨年センサーネットワークの研究に予算が欲しいと相談された。地震の時などのヘリコプターからセンサーをばらまき、災害復旧のための調査ができるというもので、IPv6ならばアドレスの数を気にせずに利用できると説明された。

次にエンドトゥーエンドの通信。これのどこが行政に関係あるのかというと、行政自身が利用しているシステムを見直すときに影響がある。毎年、数千億円単位で全国の行政のシステムの入れ替えに費用が掛かっているが、これらはIPにすらなっていないレガシーなものが多い。また、IPv4だとNATでプライベートアドレス、ネットワークの最設計時にアドレス付け替えといった問題が発生する。最近は省庁の再編もあり、またいつ行われるかわからないが、IPv6なら簡単に統合できる。実際に、総務省では旧3省のネットワークが混在してしまっている。

あとは、マルチキャストがある。日本ではブロードバンドが相当に普及しており、世界でも最も安くて最もはやいところまできた。そこでは、映像もかなり送られている。ただしユニキャストのため、ネットワークの基幹部の負荷が問題になってきている。それをマルチキャストで解消できる。

地上デジタル放送がスタートして普及を進めており、2003年に東名阪で開始し、2006年にはその他地域でもスタートする。たとえば、富山は早くから地デジに取り組んでいる。テレビ鉄塔は1万5千本、日本にある。同じような作業を2011年までにおこなって、2011年夏にアナログ停波されてしまう。50年かけてやったことを数年間でやるというので非常に大変な作業だが、はっきり言ってしまえば、どこまでできるか自身がない。

そこで、あらゆる手段で放送波を届けたいと考えている。選択肢に多様性を持たせると言うこと。その選択肢の1つがIPによる伝送だ。しかし、ハイビジョンクラスをIPで送ると、画質を保証するだけで大変だ。また、大量の情報を送るとユニキャストでは無駄が多いが、マルチキャストなら良い。IPv6でのマルチキャストならば解決できるかもしれない。

リアルタイム通信の実現。映像をどんどん送っていくことが通信では重要、期待したい。v4はデータも音声も映像も区別なく送る。輻輳がでてきたときに映像がとぎれたりする。IPv6だと優先度を付けて、映像をとぎれないように送ることができる。IPv6というと通信の中で考えがちだが、通信と放送が融合する中で、放送、テレビ番組を伝送すると言うことを2011年までにやることになるとしたら、IPv6に期待することは大きい。以上が、行政がIPv6に期待すること。

では、行政としてIPv6の普及のために何をやってきたのか。e-Japan戦略は、5年間で世界最先端のIT国家にするというもの。2003年夏にe-Japan戦略2がスタートしたが、これは日本の社会経済システム全体をIT化していこうというものだった。

その中で電子政府におけるIPv6というのが重要になってくる。アメリカでも2008年までにIPv6を採用しようと急に方針転換し、これまではIPv6アドレスの割り当てもドイツ日本が群を抜いていたけど、アメリカでも急増しており、いよいよアメリカが本気を出してきたという感じがある。

アメリカにおけるIPv6のメリットは、日本の場合とほぼ同じ。しかし、アメリカでは大統領制のため、動きが速い。日本の場合は非常に進みにくい。IPv6も取り組み自体は早いけど、うかうかしてると抜かれるおそれがある。日本の行政の、よく言えば慎重、悪くいえば動きの遅さというものが、IPv6においても見られる。実際、IPv6への取り組みも、省庁によって全然違う。また、総務省の中でも、情報を推進すると旧郵政省のセクションと、電子政府を管理している行政管理セクションとでは相当温度差があるよう感じている。霞ヶ関全体では、IPv6をやりたいという声は、まだまだ強くはない。ぜひ日本中からそういう声が強くわき上がるように、支援して欲しい。

IPv6の普及のためには、少しずつでも染み込ませていくのが大事だと思う。IPv4、IPv6どちらもインターネットで、どちらも日本の中だけで閉じているものではない。従って、国際連携が大事だ。たとえば、日中韓の情報通信大臣会合が定期的に開かれている。ただ、中国と韓国と日本では、IPv6は大事だという点では、共通認識があるが、思惑はそれぞれ違っている。インターネットというとアメリカだったが、これからはIPv6でアジア、IPv6で日本、という形でアジアを中心としつつできるだけ日本がIPv6の旗を振っていくことが、これからの日本の産業を考えたときに重要になってくる。

最後にこれまで総務省がやっていることについて、若干の反省を話したい。IPv6は、はっきり言ってしまえば思ったほど進まなかったなと思っている。IPv6自体は技術的に非常にいいけれど、ハードソフトがそろっていなかったから。その点から言えば、そろそろ爆発的にテイクオフしてくれそうだなと今年ぐらいではと思っている。

総務省の反省としてv6移行実証実験を行ってきたが、そもそも「移行」というのがネーミングとして間違ったんじゃないかと今頃になって思う。移行ではなく別物なのだから、アドレスにしても量の話ばかりして、もっと質の話しをすべきだった。

その質はなにかというと、コミュニケーションの本質が変わるというもの。コミュニケーションは、人と人とが言葉を介することで同じ気持ちになるというもの。これからは、そうではない。モノとモノにまで行く。これがユビキタスネットワークだ。

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