株式会社ぷららネットワークス
世界で初めてIPv6マルチキャストを使ったIP放送サービスが、2004年7月8日に開始された。この「4th MEDIAサービス」は、1年で20万契約の獲得を目指している。コンシューマ向けIPv6サービスとして、最大規模のものとなる可能性は高い。
IP放送サービスとしては、Yahoo! BBの「BBTV」、KDDIの「光プラスTV」がすでに提供開始されている。この先行する2社とのビジネスモデル上の違いは、水平分業的な枠組みにある。
4th MEDIAサービスは、NTT東日本のグループ企業であるぷららネットワークスが、このサービスのためにジュピター・プログラミングなどによって設立された多チャンネル放送事業者であるオンラインティーヴィとともに行う放送とVoDのサービス。ぷららをはじめ、@nifty、BIGLOBE、hi-hoなどのISPがセールスチャンネルとなり、会員のサポート、課金回収を行う。
ぷららネットワークスは、これまでISPの背後でIP電話のプラットフォームサービスを提供してきたのと同様なスキームで、動画サービスも展開していくことになる。4th MEDIAの多チャンネル放送がIPv6マルチキャストに対応したということは、1台1台のセットトップボックスがIPv6に直接つながるということだ。
このサービスが対象しているのはアクセス回線としてフレッツADSLあるいはBフレッツを利用しているユーザ。NTT東日本では、「フレッツドットネット」というIPv6通信サービスを提供しているが、このサービスのIPv6マルチキャスト対応インフラを利用している。
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| 4th MEDIAのビジネススキーム |
このサービスに関しては、2003年8月から10月まで、一般からモニターを募集して試験を行っている。しかしその時点では、IPv6を使うかどうかは考えていなかったと、ぷららネットワークスのサービス企画部長、中岡聡氏は話している。
「地上のインターネット回線を使って4Mbps以上の帯域でビデオ配信を行うためには、放送としての免許が必要になる。電気通信役務利用放送法でいうと、放送では、端末まで全チャンネル情報が届いていることが原則だが、通信を活用した放送としては、最寄りの収容局まで届いていれば、放送としてみなすというのが総務省の解釈。ということは県1ヵ所までマルチキャストといったレベルではなく、収容局までマルチキャストが届いていなければならない。すると地域網レベルでの対応が必要になる。その場合、既存の網を改変して収容局までマルチキャストが届くようにするのか、新しい網をつくるのか。新たに網をつくるならIPv4かIPv6か、という問題になる」(中岡氏)。
結局、NTT東日本は、マルチキャストが通る商用のIPv6通信サービスとして、フレッツドットネットを提供することになり、4th MEDIAサービスとしてもこれを利用することになった。NTT西日本もIPv6マルチキャストが通るサービスを今年度内に提供開始の予定であるため、これを待って4th MEDIAサービスも全国展開ということになる。
中岡氏は、4th MEDIAのようなビデオ配信サービスをIPv6で実施するのは正解だと言う。そのおもな理由として、アドレスが潤沢であるということと、機器の特定がしやすいということの2点を挙げる。「以前、インターネットがダイヤルアップ接続だった頃、同時接続率は10分の1だった。現在のPPPoEの世界でも2分の1に留まっている。しかし4th MEDIAのような放送サービスだと、いったん電源を入れてしまえばユーザは切ることがない。すると同時接続率は100%ということになる。つまり、固定IPアドレスを割り振っているのと同じことになる。一番心配されるのは、このサービスが普及するほど、IPv4アドレスの枯渇が現実になっていくということだ」。IPv6なら膨大なアドレス空間があるため、枯渇を心配することなく、端末にIPアドレスを固定で与えられる。
また、IPv6では、機器それぞれにグローバルアドレスを与えることができる。つまり、接続されている機器の数をはっきりと確認することができ、さらにアドレスによってここの機器を特定できることから、認証情報として利用することが可能になる。「IPv4では、回線、あるいは世帯単位の認証はできるが、そのなかで何台接続されているかという認証は難しい。それがIPv6だと1台ごと端末にアドレスを持っているので、どの端末が接続して何を見ているのかが把握できる。ケーブルテレビでやっているように、セットトップボックス2台目からは1台目の半額の視聴料ですよといった展開ができる。放送サービスは世帯ごとに視聴権限を与えているのではなく、視聴端末ごとに権利を与えている。4th MEDIA1契約で、追加料金なしに、セットトップボックスを何台でもつなげられてしまうわけにはいかない。すると端末認証が必須になる。これを実現できるのはIPv6しかない」
IP放送で光への移行を狙う
ISP横断的に提供されているNTT東日本のアクセス回線サービスを利用し、IP電話に続いてIP放送のプラットフォームを提供することで、顧客であるISPがユーザに対し、インターネット、IP電話、ビデオのいわゆる「トリプルプレイ」を提供できるようにするというのがぷららのビジネスだが、NTTグループの一員としての役割も強く意識しているという。
「NTTグループが目指しているのは光を普及させること。ぷららとしても、Bフレッツを売ることが1つの役割だ。ADSLに対する光の違いをユーザに実感してもらうために必要なものとして、まずIP放送サービスがある」(中岡氏)
ぷららネットワークスは、8月2日より、「Bフレッツスイッチキャンペーン」として、IP放送サービスとともにBフレッツを新規契約するユーザに対する大幅値引きを開始した。通常26,250円のIP放送用セットトップボックスが無料であるのをはじめ、IP放送サービスの初期費用も無料、Bフレッツの基本工事費も無料、さらにぷららの基本月額サービス料も5ヶ月間無料となる。
「通信・放送系のサービスで、当初端末を無料で配らずに成功したサービスはほとんどない」。4th MEDIAサービスは1年で20万契約が目標なので、マーケティング的な試みとしても思い切った手段が必要という。しかし、ADSLでこの種のキャンペーンをやる予定は、同社にはまったくない。
IP電話も必ずIPv6になる
IP電話もIPv6に移行すべきサービスだと、中岡氏は言う。現在ぷららがプラットフォームサービスとして提供しているIP電話サービスをIPv6化するかどうかについては未定だが、「4th MEDIAの端末にIP電話機能をつける見通しは立てているので、そのときにはIPv6でやる。REGISTERリクエストのような、IPv4であるからこそ必要なSIPプロトコルは、IPv6では要らなくなる。IP放送とIP電話は、インターネットサービスと違い、クローズドなサービスなので他の事業者のことを気にしなくていい。将来、IP電話は間違いなくIPv6になる」という。
「4th MEDIAサービスのユーザが増えるほど、IPv6のユーザが増えていくことにもなる。IPv6普及の観点からいっても、インターネットサービスはすでに使われているので、何か別のサービスが引っ張らなければならない。それをダイヤルアップやADSLでやるかといえば、光でやる。光を使ったらいつのまにかIPv6になっていたというのが望ましい」
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