2007年11月19日から22日までの4日間、秋葉原コンベンションセンターで「Internet Week 2007」が行われた。
「東京でディープに語る4日間」という副題どおり、インターネットに関する技術の研究・開発、構築・運用・サービスに関わる人々が一同に会し、関心を持つテーマについて議論し、理解と交流を深める、という主旨のイベントだ。
主催は社団法人日本ネットワークインフォメーションセンターで、総務省をはじめとする官公庁や、インターネット協会、WIDEプロジェクトなどのインターネット関連の団体が後援。
ここでは、2日目に行われたワークショップ「IPv4アドレス在庫枯渇問題を見通す」の様子をレポートする。このワークショップは2部構成になっており、前半が「IPv4アドレス在庫枯渇問題に関する最新動向」として出席者からの発表があり、後半は「IPv4アドレス在庫枯渇問題を見通す」というテーマでのパネルディスカッションが行われた。ここでは前半の各発表にフォーカスを当てて、レポートを行う。
IPv4在庫枯渇とはどんな問題なのか
冒頭、日本ネットワークインフォメーションセンター(以下JPNIC)IP事業部長の前村昌紀氏より、まず、「IPv4在庫枯渇とはどんな問題なのか」というおさらいが行われた。
IPv4アドレス在庫枯渇の現状として、有名なGeoff Huston氏のグラフを用いながら、現在のIPv4アドレスの在庫が42×/8であり、未分配IPv4アドレスの在庫は2010~2011年には枯渇するという予測を示した。
また、今年度IANAからRIRへのIPv4アドレスの割り振りの総数は13×/8と、2005年に並んで最多であり、その内7×/8がAPNICへの割り振りで、アジア圏、特に中国でのv4アドレスの消費がぐんぐん伸びているという。
v4アドレス在庫の枯渇により「今までのインターネットはそのまま動き続けるが、新たなユーザーやサービスが追加できない」として、これからどんどんインターネット利用が拡大していく中、どうやって構築していくかが重要な問題であると述べた。
具体的な在庫枯渇後の影響については、ユーザーはv4がv6になってもあまり気にしないかもしれないが、事業者がサービスを変更するときには、機器の面など制限を受ける可能性があり、また、ネットワーク事業者、機器製造事業者、技術研究者にも追加投資や技術開発などの必要が発生するかもしれないとした。

日本ネットワークインフォメーションセンター IP事業部長
前村昌紀氏
総務省の検討状況
総務省電気通信基盤局電気通信事業部データ通信課課長補佐の高村信氏より、総務省の「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」における検討状況の説明があった。ただし説明された内容は10月16日に開催された研究会までの検討経緯とのことで、議論としてはまだ途中であることが前置きされた。
調査研究会は、
- ・IPv4によるインターネットの限界に関する推計およびその対応策
- ・速やかなIPv6化実現に当たっての課題および解決方法
- ・標準化対応をはじめとする本分野における国際戦略のあり方
の3つを主な検討事項として、8月8日から今年度末まで開催が想定されている。
まず第一に、IPv4アドレスの枯渇がいつで、その影響はどの程度のものなのかという検討から始まり、その検討結果が10月16日に中間報告として出された。
最初に、IPv4アドレス在庫の枯渇の国際的な議論についての説明があり、各地の管理団体が2010年ごろには枯渇する可能性があることを公式に表明すると同時に、対応方策としてはIPv6への移行が解決策であることについても公式に表明されているとした。また市場取引などの「割り振り済みIPv4アドレスを他者に移管すること」については、各地域の思惑が交錯し、議論がまとまるのは難しいだろうとの見通しを示した。
次に、最後のIPv4アドレスの在庫についての割り振りに関する国際的議論についても説明された。国際的在庫がある程度の数になった段階で各地域に割り振るという意見や全ての者を平等にという意見など、様々な意見が各地から出ていることの紹介がなされた。
IPv4アドレス在庫の枯渇時期予測結果については、国際的在庫(IANAのPool)の枯渇は2010年の半ばから2012年初頭。日本国内では(APNICからアドレスがもらえなくなるのは)2011年初頭から2013年半ばとしている。ただし、携帯電話のIP化など特別な状況が発生すれば当然枯渇時期は変わってくるとした。
「IPv4アドレス枯渇対応方策」の検討状況については、3案が提起されていて比較検討中である。
- ・NATを利用した「IPv4アドレスの節約」
- ・IPv4アドレスの再配分を促す「IPv4アドレスの市場取引」
- ・「IPv6への移行」
の3つで、各方面への影響、コスト、永続性などの面から、更なる課題の洗い出し、解決策の検討を行い「望ましい方策」についてさらに議論をしていく。
今後はv4アドレス枯渇後に何をするのか、ボトルネックは何なのか、国としてどうしていくかということについて年内までに検討される予定だという。

総務省 電気通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課 課長補佐
高村信氏
JPNICの検討状況
次にJPNICの前村昌紀氏より、「JPNICにおけるIPv4アドレス在庫枯渇対応の検討状況」が説明された。
JPNICでは2006年4月3日に「IPv4アドレス枯渇に向けた提言書」を公開し、以来枯渇に対する対応の検討作業を続けている。
まず、IPアドレス管理政策面について以下の検討を行っている。
- ・枯渇期の分配ポリシーに案する検討
- ・枯渇時期予測の検証と、経済指標や利用者動向を読み込んだ検討
- ・分配済み未利用IPv4アドレスの回収と再配分に関する検討
- ・IPv4アドレスの取引について妥当性、問題点の検討
検討結果については最終的には12月7日に発表予定で、中間発表ではあるが、枯渇の時期についてはJPNIC独自の予測でも2011年という予測結果であるという。
再分配については、回収再配分、積極回収の枠組みを作ることは難しく、また、市場取引についても仕組みを作ることが難しく、また登記、資産化、課税国際取引など問題が多い。さらに、理想的に流通したとしてもv4の在庫を考えるとそんなに長くは持たないだろうなどとの見通しを示した。
次に枯渇の克服策としては、IPv4アドレスの在庫枯渇によって困ることを挙げて影響や対応策の整理を行っている。
枯渇後に事業者が採りうる対応策は3つに集約されるとして、
・何らかの手段でIPv4アドレスを調達する
・プライベートIPv4アドレスを利用して新規顧客を収容し、NATを介してインターネットに接続する
・IPv6を利用して新規顧客を収容する
を挙げたが、それぞれに問題があり更なる検討が必要との見解を示した。
JPNICの対応の基本は「的確な情報の提供」であり、業界の旗振り役として、他の関連団体とも連携協調して枯渇問題にあたっていくとしている。
IPv4/IPv6共存SWGの検討状況
IPv6普及・高度化推進協議会IPv4/IPv6共存WGを代表して、ぷららネットワークスの土井猛氏から「IPv6普及・高度化推進協議会 IPv4/IPv6共存WGの検討状況」が発表された。
共存SWGはIPv4とIPv6の共存を目指して様々な検討を行っている。IPv4が新たに配布されない状況を想定し、ネットワーク技術やサーバー技術など、システム単位での共存技術についての議論、整理が行われている。
10月10日に第一回共同SWGが行われ、その後もiDC、ASPホスティング事業者の意見などを取り入れつつ、IPv4/IPv6共存についての検討作業を行っている。
今回のワークショップでは、Webホスティング、メールサービス、IP電話サービスについて、IPv6を増設する場合の共存についての議論が説明された。
また、DNS、セキュリティアプライアンスに関する議論についても継続していくという。
11/28開催のSWGでまとめを行うが、今後は、モデルシステムを作ってみて、実際IPv4で動いた状態でv6をオンにするような検証を行い公開するような仕組みを作りたいという意向も示した。

ぷららネットワークス
土井猛氏
まとめ
v4アドレスの枯渇問題については各所で様々な議論が行われているが、もは状況的には「v4アドレスは本当に枯渇するのか」という段階ではなく、「v4アドレスが枯渇した後にどうするのか」という具体的な検討状態に入っている。今回のワークショップでは、総務省、ISP、JPNICといった日本のインターネット政策の中心といってもいい団体の各検討状況が報告された。3者ともまだ最終報告段階ではないが、それぞれまもなく最終報告がなされると、「v4枯渇後」の具体的な動きがより一層見えてくるだろう。


