【連載】JPNIC通信 第7回 「IPv4アドレスの枯渇を取り巻くポリシー動向」

【連載】JPNIC通信 第7回 「IPv4アドレスの枯渇を取り巻くポリシー動向」

タグ:JPNIC APNIC

社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
IP事業部 奥谷泉

前回の号では第23回APNICミーティングでのポリシー提案をご紹介しました。

この号ではその後、2007年9月3日~9月7日、インド・ニューデリーで開催された第24回APNICオープンポリシーミーティングでの提案についてご紹介したいと思います。

今回のポリシーSIGセッションのテーマをあげるとすれば「IPv4アドレスの枯渇に向けた準備」であったと言えます。

プログラムでは当初8点の提案事項が予定されていましたが、IANAでのIPv4アドレス在庫の枯渇予測が「2010年5月」と、今後三年後を切っていることから、枯渇に向けた提案3点について3分の2以上の時間を費やす結果となりました。

 参考:IPv4 Address Report
 http://www.potaroo.net/tools/ipv4/

また、前回より継続議論となっていたIPv6に関するポリシー提案は、提案者の意志によりすべて取り下げとなりました。各提案事項の結果は以下の通りです。

  • prop-046: IPv4アドレスの枯渇に向けた提案 →継続議論
  • IPv4 countdown policy (Izumi Okutani, JPNIC)
  • JPOPM12での議論をベースにしたJPNICからの提案。主な目的は2点:
  • ・現在の基準でIPv4アドレスの分配を受けられる期限の明確化と、この日付予測のRIRによる公式な周知
  • ・IPv4アドレスの在庫が一定数(IANAフリープールが5×/8)を切った時点で、それ以降の分配方針は各RIR地域単位で決定できること
  •  http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-046-v002.html

  1. prop-051: 残りのIPv4アドレス空間に関する割り振りポリシー →継続議論
  2. Global Policy for the Allocation of the Remaining IPv4 Address Space (Francisco Obispo, CENIT)
  3. IANAのアドレスプールが25×/8になった時点で各RIRへ均等に5×/8ずつを分配するとしたLACNIC地域発の提案
  4.  http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-051-v001.html

  • prop-050: IPv4アドレスの分配組織に対するAPNICにおける移管ポリシー →継 続議論
  • APNIC transfer policy for IPv4 address holders (Geoff Huston, APNIC)
  • APNIC管理下のIPv4アドレスの分配を既に受けている組織が、他組織に対して/24単位でアドレス分配を行うことを認めるとした提案
  • http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-050-v001.html

  • prop-042: IPv6における初回割り振り基準変更の提案 →取り下げ
  • Proposal to change IPv6 initial allocation criteria (Jordi Palet Martinez, Consulintel)
  • IPv6アドレスの初回割り振り要件としてあげられている「2年以内に200の/48の割り当てを行う計画があること」を求めることは割り振り対象者にとって障壁となっているため、見直しを目的とした提案。APNIC23から継続議論。
  • http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-042-v001.html

  • prop-043: IPv6ポリシー文書における"暫定"の記述の削除 →取り下げ
  • Proposal to remove reference to IPv6 policy document as an "interim" policy document (Jordi Palet Martinez, Consulintel)
  • 現在のIPv6ポリシーは"暫定"との位置付けとなっているが、運用して数年経過しているため、この記述を削除しようという提案。APNIC23から継続議論。
  • http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-043-v001.html

  • prop-048: IPv6におけるULA-centralアドレスについて →取り下げ
  • IPv6 ULA-central (Jordi Palet Martinez, Consulintel)
  • グローバルインターネットには広告しない閉じたネットワークでの利用を目的とした、グローバルに一意のアドレスを設ける提案。IETFドラフト"draft-ietf-ipv6-ula-central-01.txt"をベースとしている。
  • http://www.apnic.net/docs/policy/proposals/prop-048-v001.html

  • prop-047:eGLOPマルチキャストアドレスの割り当て →取り下げ
  • eGLOP multicast address assignments (Marshall Eubanks,David Meyer)
  • APNIC23からの継続提案として議論予定。詳細は今後確認。
  • http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-047-v001.html

  • prop-049: IANAからRIRへのAS番号割り振りポリシー →コンセンサス(賛同)
  • IANA policy for allocation of ASN blocks to Regional Internet Registries (Axel Pawlik, RIPE NCC)
  • IANAからRIRへのAS番号の割り振りに関するポリシー。実運用を文書として明文化したもので実質的な影響はない。
  • http://www.apnic.net/policy/proposals/prop-049-v001.html


IPv4アドレスの枯渇に関する提案を中心としたAPNIC24での議論をご紹介する前に、アドレス管理面での枯渇に向けた状況について簡単におさらいをしたいと思います。

◎アドレス管理面からの枯渇に向けた対応

IPv4アドレスの枯渇に向けての課題としては枯渇期までと、枯渇後の両面において混乱を防止するポリシーが必要になると考えられます。また、分配済アドレスの回収等、既存のアドレスの有効活用も重要な課題です。このうち、JPNICはまず枯渇期までの混乱を防ぐポリシー策定に重点を置き、前回の第23回APNICオープンポリシーミーティングから提案活動を進めています。

枯渇期までの分配ポリシーとして、最も重要と考えられることは、申請者にとっての混乱を最小限に押さえることだと考えられます。そのためには最後にIPv4アドレスの申請を行えるタイミングを明らかにし、分配基準をむやみに変更しないことが大切になります。また、枯渇に伴い、IPv4をひとつも持たないネットワークが今後出てくると、その場合、IPv6ネィテイブとIPv4ネットワーク間の通信をどう実現していくか等の課題が想定されます。こういった課題へ対応するために、IPv4アドレスを現在の分配基準に基づきすべてISPに分配するのではなく、枯渇期における課題に対応するために一定のアドレスを確保する必要があると考えています。

つまり、まとめるとJPNICが必要と考えている要素は以下の3点です。

  • + 最後にIPv4アドレスの申請を行えるタイミングを明確にすること
  • + IPv4アドレスを現在の分配要件基づいて最後まで使いきることはせず、一定サイズを枯渇期における課題への対応のために利用すること
  • + それまで分配基準は変更せず、現在の基準を維持すること

このような考えに基づき、2007年春に第23回APNICオープンポリシーミーティングをはじめ、各RIRのミーティングにて以下の内容で提案を行いましたが、結果としてはコンセンサスに至りませんでした。

  • + 全てのIPv4アドレスを割り振ってしまわず、一定量(10*/8)のアドレス残してを割り振りを終了する
  • + 割り振り終了期日を予め決定し、十分な時間を取って告知する
  • + 最後の割り振りまで特に延命のためのルール変更などは行わない
  • + 割り振り(割り当て)済みアドレスの回収は別の議論とする

特に割り振り終了日を人為的に定めることに対しては強い懸念が表明され、ARIN地域では独占禁止法に抵触するとの指摘も受けたためです。詳細に興味のある方は前回の号をご覧ください。

◎今回のミーティングにおけるJPNICの提案

そして、前回のミーティングでの結果に基づき、APNIC24に向けた提案では最後に申請を行えるタイミングを明確にすることには引き続き重点を置きながらも提案要素をいちから見直し、以下を基本方針とした案を策定しました。

  • + 各RIRの在庫アドレスをより早い段階で確定し、LIRへの周知が可能となるようIANAのIPv4在庫が一定数(/8×5)を切った時点で各RIRへ一律同じ数のブロック(/8×1ブロックずつ)を分配してIANA在庫を使い切る
  • + IANA在庫がなくなる時点をIANA Exhaustion Date(IED)と定義し、その予測を各RIRで提供する
  • + 各RIRはIEDまでは現状の分配基準を維持するが、それ以降は各地域でそれぞれ、枯渇に向けた課題に対応するために適切と考えられる分配方針を適用することを認める

前回の案と異なるポイントとしてはIANA在庫の分配と、RIR在庫の分配の定義を分け、RIR在庫の分配方針を各地域の方針に委ねるとした点です。また、各RIRの最後の数ブロック通常とは異なる用途で利用される余地は残しながら、分配自体を留めず最後まで使い切ることが明確となる内容にしました。

なお、当初の予定では、RIRにおける最後のブロックの分配用途についても提案に含めていましたが、事前にJPNICオープンポリシーミーティング(2007年7月17日 日本教育会館)で議論を行ったところ、この用途については意見が分かれ、総意が得られなかったため、IED以降のRIRプールの具体的な用途について情報提供としての発表に留めています。

◎IPv4アドレスの枯渇に向けた各種提案事項

ミーティング当日は、APNIC24では情報提供を目的とした発表も含め、枯渇テーマにした発表が4点ありました。3点が提案事項、1点がJPNICからの情報提供としての発表です。

  • 情報提供: APNIC在庫の分配について (JPNIC 枯渇期対応専門家チーム)
  • prop-046: IPv4アドレスの枯渇に向けた提案 (JPNIC 枯渇期対応専門家チーム)
  • prop-051: 残りのIPv4アドレス空間に関する割り振りポリシー (LACNICおよびAfriNICによる共同提案)
  • prop-050: IPv4アドレスの分配組織に対するAPNICにおける移管ポリシー (APNIC Geoff Huston)

JPNICからの情報提供としての発表は、APNICの最後のブロックをAPNIC在庫の最後の数ブロックの分配方法についていくつかの案を提示しました。例えばIPv4アドレスを持たない人とのコミュニケーションをスムーズにすることに重点を置くのであれば方法としては初回割り振りに限定する、トランスレーターネットワークに限定する等の案があげられます。一方、IPv6への以降準備に重点を置くのであればIPv6への移行計画を持つ申請者にのみIPv4アドレスを分配する方法もひとつの案として考えられます。どの案についても今後その影響をより具体的に検討し、国内のフォーラムでも議論を行ったうえで次回のAPNICミーティングで提案を行うことが必要となります。

残り3点の提案事項は、結果の一覧を参照するとわかる通り、すべて継続議論となりました。テーマが大きいことを考えると致し方のかもしれませんがJPNIC、LACNIC、どちらの提案にも共通するIANA在庫の分配の枠組みは早期に決定しないと本来の目的が充分に果たせない可能性があるため、具体的な数についてまだ議論の余地があるにしもてRIRへの一律分配の枠組みについて少なくとも今回のミーティングで通したいものでした。しかし、最後に、IANAからRIRへ一定サイズの分配をあらかじめ行う枠組みに合意できるか参加者の挙手をコーディネーターが確認したところ、賛成の数が反対を心持ち上回ったものの、参加者のコンセンサス(総意)と判断されるまでにはいたりませんでした。

一方、pro-050については提案者自身、今回は議論の喚起を目的として実際に通すことまでは目指していていないと聞いており、想定内の結果であったといえます。

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