トップベンダーとしての責務を果たす
~NTT Comが「Arcstar IP-VPN」IPv6接続のトライアル提供を開始
NTTコミュニケーションズは9月13日、同社の企業向けVPNサービス「Arcstar IP-VPN」において、IPv6接続のトライアルサービスを開始することを発表した。Arcstar IP-VPNでは来年度よりIPv6対応を開始する予定で、本トライアルサービスは、正式提供に先駆けた"トライアル"との位置づけになる。なぜ今「IP-VPNでIPv6」なのか、トライアルサービスを提供する背景について、サービス仕様の検討にあたった同社サービスクリエーション部 サービス企画担当の北村 真弓氏および守谷 聡氏と、機能検証や設計などを担当した同社IPテクノロジー部の谷口 広毅氏に聞いた。
●トライアルサービスの位置づけ
まず、IPv6トライアルサービスの提供を開始する理由について守谷氏は、
「NTTコミュニケーションズでは"世界に先駆けたIPv6対応"を掲げ、インターネット系のさまざまなサービスでIPv6対応を行なってきました。グローバル・バックボーンのIPv6による構築など、さまざまなノウハウを蓄積してきましたが、今回の取り組みは"閉域網"でもIPv6のニーズが出始めている、という意識から取り組みを決めたものです」
という。この背景には、今年4月に総務省が公表した「電子政府システムのIPv6対応に向けたガイドライン」の影響もあるという。このガイドラインでは、2008年移行に稼働を始める政府関連の全システムで原則としてIPv6対応を行なうこととされている。これに関連し、政府・公共団体そのものや、そこにシステムを納入する事業者などが検証やテストを行なう環境として利用する、という用途がまず思い浮かぶ。
「閉域網でIPv6が必要なのか」という疑問の声に対しては、IPv4枯渇問題や、端末間セキュリティ確保などIPv6ならではの付加機能の点から、政府系ネットワークや大企業イントラネットワークを中心にIPv6化に向かう流れがあるのは確かで、閉域網といえども例外ではない、ということのようだ。

サービスクリエーション部
サービス企画担当
守谷聡氏
今回のトライアルサービスは、「IPv6ネイティブ接続環境の提供」(守谷氏)となる。これは簡単に言えば、「IPv6専用の通信を行う」ということになる。ユーザーにとっては、いち早くIPv6環境適応に向けた準備をすすめることが出来る。
さらに、今回のトライアルサービスでは、「ユーザー企業のニーズを探り、正式提供時のサービスに反映させていく」という意味も込められているという。IPv6を使えばさまざまな新サービスも可能になるのだが、企業ユーザーがIPv6をどう使いたいと希望しているのか、その実情を直接知ることができるという意味で、サービス提供側であるNTTコミュニケーションズにとってもよい機会となるわけだ。
●ネットワークの用途と構成
トライアルサービス提供が発表されてから半月足らずではあるが、「既に数社から応募希望があった」(北村氏)という。まだ詳細なヒアリングにまでは至っていない段階ではあるが、ユーザー企業の反応も上々という感触が伺える。実際にこのトライアルサービスに参加するユーザー企業はどのような用途を想定しているのかに興味がわくが、これに関して北村氏は、
「政府向けのRFP(提案依頼書、Request For Proposal)を書く段階でIPv6対応を盛り込む必要が出てきているので、こうしたプロジェクトに関わるベンダー等ではテストや検証の環境も必要になる」
としており、ユーザーの用途としては、IPv6環境でのシステム開発、アプリケーションの動作検証、移行プロセスの実験/検証といったさまざまな用途を想定している。

サービスクリエーション部
サービス企画担当
北村真弓氏
ネットワーク構成について谷口氏は、
「今回は"スモール・スタート"という位置づけなので、ユーザー企業としても数百回線といった大規模なところは想定していません。それもあって、今回のトライアルサービスのネットワーク環境は一部既存のIPv4網とリソースを共有する形で構築しています」
という。一部 v4網との共有があることでも分かるとおり、このネットワーク自体はデュアルスタックでのサービス提供開始を視野に入れている。IPv4からIPv6への移行過渡期においては、IPv4/v6両対応のデュアル・スタックが実運用上求められることが想定されるが、そちらについても、「来年度からの正式提供に向けて準備をすすめている」という。

IPテクノロジー部
谷口広毅氏
●サービス提供者としての責任
従来のIPv4ベースのネットワークでも、ユーザー企業がIPv6の利用を望むのであれば、ユーザー側の責任で機器を用意した上でトンネリングやプロトコル変換などの手段でIPv6での端末間通信を実現することは可能だ。しかし、このタイミングでIPv6ネイティブ接続をトライアルサービスとして提供する必要性を、守谷氏はこう訴える。
「トンネリングやプロトコル変換などの手段では、IPv6を使いたいと望むユーザー企業側に負担を掛ける形になるし、通信帯域の有効利用という観点からも通信品質や安定性の面でも不利になってしまう。ネットワーク側としてIPv6の接続性を提供し、対応して行かない限り、"IPv6でイントラネットを構築したい"というユーザー要望には応えられないことになり、今回のトライアルは、ネットワーク側としていち早くIPv6対応を図ったことに意義がある」
IPv6対応を実現するに当たって、NTTコミュニケーションズでも軽くはない負担を担うことになるわけだが、それでも今後のユーザー企業の需要を見越し、きちんと対応していくことが「リーディング・カンパニーとしての責任」だという。
NTTコミュニケーションズは、企業向けVPNサービスでは国内のトップ・キャリアであり、数多くの法人通信を支えてきた実績がある。こうした実績に基づく通信事業者としての自負と責任感と、政府のガイドラインが相まって、このタイミングでIPv6への移行を見据えた本格的な取り組みが開始された、と理解して良さそうだ。
■NTTコミュニケーションズ
http://www.ntt.com/
■Arcstar IP-VPN
http://www.ntt-vpn.com/ip-vpn/


