Interop Tokyo 2007 基調講演レポート 「IP Network新時代」古川享氏

Interop Tokyo 2007 基調講演レポート 「IP Network新時代」古川享氏

~「IPネットワークが活用され、新しい文化を創りつつある」

 今年のInterop Tokyo 2007の基調講演には古川享氏が登壇した。古川氏がこういったネットワークにフォーカスしたイベントで基調講演を行なうこと自体は珍しいことではない。しかし、Microsoftを辞してから慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構教授となった古川氏が、どのようなスタンス、立場からネットワークについて語るのか注目が集まった。

 古川氏は冒頭で、あらゆる企業から一切縛りのない「個人の立場」で話すと前置きしてから、“ネットワークの役割”について語り出した。

デジタル化によって変わったこと

 まず、デジタル化とネットワーク化によって大きく環境が変わったものとして「音楽」を取り上げた。CDに端を発する音楽のデジタル化は、コンシューマにおける音型だけでなく、音楽制作の現場においても大きな変化を起こしている。

 レコーディング機材はもとより、アンプもデジタル化し、その波は楽器もおよんでいる。ロックバンド「U2」がイギリスで行なったコンサートでは、PAのコントロールもデジタル化され、コンソールからのモニター用データは光ファイバーでIP化されて送られている。

「ネットワークの帯域が増してきたことで、あらゆるモノがIPに切り替わっている」

 デジタル化は音楽だけに留まらない。放送業界でもデジタル化は進んでおり、デジタルTVカメラのOSがLinuxで稼働し、放送用データがIPネットワークで送信されるようになってきている。

デジタル家電に搭載されるIPスタックのルーツ

 現在では、さまざまな機器がデジタル化し、ネットワークにつながり、IP通信を行なうようになっている。古川氏は、この流れを作り出した最初のきっかけを、2001年にNTT西日本がおもちゃメーカーのタカラ(当時)と共同開発した「フレッツ・ロボ」に求める。

 フレッツ・ロボは、PCにUSBで接続して利用する形態だったが、内部にIPスタックを搭載しておりロボ自身がIPを話すことができる点で画期的だった。

 それまでIPスタックはBSDのソースコードをベースにしたものが主流だったが、このBSDのスタック自体がボトルネックになる場合があるという。

 フレッツ・ロボは、それをゼロから書き直すことで、ファイルサイズで300KbyteのOSに対して、スタックを15Kbyteにまで小さくすることができた。そして現在、ネットワーク機能を搭載したHDDレコーダの8割に、このスタックがライセンスされているという。

「それまでのスタックの限界を突破するコンポーネントが世の中に初めて出たのがフレッツ・ロボです」

IP化がさまざまサービスを可能にするオープンさを生み出す

 そして古川氏は、デジタル化IP化のさらなる事例を立て続けに紹介した。デジタルシネマの撮影と編集、4Kシネマのマルチキャスト配信による国際会議、TV局間の映像配信回線のIPによる多重化、ハイビジョン映像がスタッフ一人でも撮影可能な事例、六本木ヒルズ内のインフォメーション映像のIP化、などなど。

 これらのIP化の動きは、単にケーブルや回線がデジタルに置き換えられるというだけでなはなく、DTCP-IPのように新しいコンテンツ保護技術をもたらしたように、これまでとは違うサービスを可能にするオープンさを生み出している。

「デジタルメディアを考えるときに重要な要素は、どういうネットワークかということ以外に、どういうサービスアプリケーションが実装できるかという、開かれた仕様が大事」。これによって「単に多くの機器がつながり始めたと言うことだけじゃなく、あらゆることが起きている」と古川氏は強調する。

 その一つの事例としてイギリスBBCを取り上げ「彼らはすでに放送事業者であることを捨てて、客に向けてコンテンツをあらゆる方法で届ける事業者であると宣言している」。そして、一方で日本は「高速伝送技術は世界最先端だが、どういうコンテンツを届けるかというところでは後塵を拝している」という。

 技術によってどのようなサービスが可能になり、それによって届けられるコンテンツこそが大事だということだ。コンテンツは文化であり、文化は社会に影響を与える。

「IPネットワークのスピードが増してきて、接続できる機器も増している。単なる箱が家庭にはいるだけじゃなく、放送機器や映像制作部門にIPネットワークが活用され、新しい文化を創りつつある」

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