【連載】JPNIC通信 第5回「APNIC23でのIPv6関連のポリシー議論」

【連載】JPNIC通信 第5回「APNIC23でのIPv6関連のポリシー議論」

社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター
IP事業部 奥谷泉

IPv6に関わるポリシー提案

 連載第1回目では、2006年9月に開催された第22回APNICミーティングでの提案事項について紹介しましたが、次回APNICミーティングの開催時期が迫ってきました。第23回APNICミーティングは2007年2月26日~3月2日、インドネシアのバリで開催されます。

 このミーティングにあたってもIPv6に関する提案がいくつか提出されており、合計5点の提案のうち、4点がIPv6に関するものです。残りの1点はJPNICのIPv4アドレス枯渇対応チームから提出されたもので、IPv6が直接のテーマではないものの、枯渇に向けて対応準備が迫られるという点では密接に関わってくると考えられます。

 上記5点の提案のうち、今回は特筆すべき内容として「IPv6における初回割り振り基準の変更」と「IPv4アドレスの枯渇に向けたポリシー」のふたつの提案に焦点を当ててご紹介したいと思います。

初期割り振り基準の見直し
 ~意図した対象への分配に近づくように~

 初期割り振り基準とは、すなわち、事業者が、RIRやJPNIC等のレジストリから初めてアドレスの分配を受けるにあたり、満たしていなければいけない基準です。そして、現在のIPv6アドレスの初期割り振り基準が、本来対象として想定していた組織にとっても障壁となっているケースがあることについては第4回でも簡単に紹介しました。

 基準はいくつかの要件から構成されていますが(※1「割り振り基準」を参照)、問題となっているのは要件「d)2年以内に最低でも200の/48の割り当てを行う計画があること。」です。

 この要件は、現在IPv4において200以上の顧客を持っている事業者であり、今後IPv6サービスを提供する意思があれば基本的に満たすことができると考え設定されたものです。しかし、IPv6サービスにおいては2年で200の顧客を獲得するのは難しいと考える事業者もあり、想定していた割り振り対象の事業者にとっても障壁となっているとの声がこれまでもぱらぱらとあげられていました。

初期割り振り基準の見直し
 ~提案内容と対応状況~

 すでにほとんどの他のRIRではこの基準の見直しを実施しており、この提案も上に述べた障壁を取り除くことを目的としています。内容としては、初期割り振り要件d)(※1 )の「200の割り当て」を「合理的な数の割り当て」と変更することにより、厳密に200の割り当てを計画していなくとも一定数の割り当てを行う計画があれば認めるようにしています。

 JPNICとしても提案の趣旨には賛成です。しかし、提示されている変更内容のように、要件を緩やかにすることは、これが必ずしも申請のし易さにつながるものではないと思われます。したがって、現時点では割り当て数ベースの要件そのものの撤廃を求めたいと考えています。最終的にどのような案に落ち着くにしても、想定している申請対象者にとって障壁となる要件を取り除くことを目標として、議論の状況を見ながら調整を進めていくことになると思います。

 今のところ、国内から本提案に対するコメントは特にいただいていませんが、もしより適切な案がありましたらip-usersメーリングリストまでお聞かせください。

IPv4アドレスの枯渇に向けてのポリシー
 ~現状のIPv4アドレスの消費~

 IPv4の枯渇に関する動向については、すでにJPNICから報告や発表を行っているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。簡単におさらいすると、RIRからLIR(国内ではIPアドレス管理指定事業者)へ分配されるIPv4アドレスの寿命は2012年頃と予測されており、今から5年後ということになります。

 数年前にも枯渇の噂が出回っていた時期がありましたが、今回の予測は、IANA見割り振り空間の残量(2006年末時点で55*/8)と過去数年の消費量(年間約10*/8)から算出しているため、かなり具体的な数値であると言えます。(※2

 JPNICは2006年はまずこういった状況の周知を行ってきましたが、今年2007年か らは、枯渇に向けた必要な準備に向けて具体的なアクションを進めていきたいと 考えています。

 これまでのアドレスポリシーではIPv4アドレスが定期的に補充可能な前提で運営 されてきましたが、今後はある時期から分配が行えなくなる枯渇期に向けて、ポ リシー面でも準備が必要であると考えられます。そこで、専門家により構成され たIPv4アドレス枯渇対応チームを設立し、次回のAPNICミーティングに向けての 提案を策定するに至りました。

 この提案の目指すところは「予めIPv4アドレスの割り振り停止時期を明らかにす ることにより、関係者に必要な準備を促し、枯渇時においてもできるだけ混乱の ないアドレスの分配」を進めることです。

 具体的な提案のポイントは以下の5点になります。

  • IPv4アドレス枯渇対応は全世界共通のポリシーをもとに取り組みを進める
    ⇒地域間の不公平感が生じることを避けるため
  • 全てのIPv4アドレスを割り振ってしまわず、一定量(10*/8)のアドレス残してを割り振りを終了する
    ⇒IPv4からIPv6ネットワークへの変換用等、その他予期せぬ用途のために必要となる可能性があるため
  • 割り振り終了期日を予め決定し、十分な時間を取って告知する
    ⇒ISPをはじめ、関係者へ必要な準備期間を与えるため
  • 最後の割り振りまで特に延命のためのルール変更などは行わない
    ⇒延命は一時的な対策にしかつながらず、むしろ枯渇後の対応から焦点が外れる
  • 割り振り(割り当て)済みアドレスの回収は別の議論とする
    ⇒回収には大きな時間を手間を必要とし、長期間の延命にはつながらないため、取り組みは進めるが、枯渇に向けた大きな解決策としては捉えない

 より詳しい提案の意図や内容については、提案文書(PDF)をご覧ください。

 なお、APNICのメーリングリストでは現在すでに、一定量のアドレスを在庫として残すことに対する懸念や、代案として、徐々にポリシーを厳しくすることにより自然の経済原理で、本当に必要な人に行き渡るようにすればよい等の意見が出ており、合意に至るまではおそらく次回のAPNICミーティングだけではなく、何度か議論を重ねていくことになると思われます。

 最終的にどのような提案が通るにしても、現在のペースでの消費が続けば、好む好まざるに関わらず、IPv4アドレスは今後数年で、RIRから分配できなくなる計算になります。従って、その解がIPv6への移行に限定されるのか、その他よい方法があるのかについてはまた専門家に見解を譲るとして、少なくともその時点までには、現在のグローバルIPv4アドレスベースのネットワークからの脱却が必要となると言えるでしょう。これはポリシー面での対応とはまた別の話になりますが、こういった枯渇時期を乗り切るにあたっての関係者との調整も今後JPNICとして進めていきたいと考えています。

 その他の提案の概要についてはこちらをご確認ください。次回の号ではAPNICミーティングでのこれら提案事項の結果をご報告する予定です。

※1 IPv6初期割り振り基準

以下の4つの要件を満たしていること
    a) IP指定事業者であること
    b) エンドサイトでないこと
    c) /48を割り当てた組織に対し、IPv6の接続性を提供する計画があり、その経路広告を、割り振られたアドレス一つに集成して行うこと。
    d) 2年以内に最低でも200の/48の割り当てを行う計画があること。

※2 IPv4アドレス枯渇に関する資料

IPv4アドレス消費量の統計(随時更新:Geoff Hustonによるレポート)
http://www.potaroo.net/tools/ipv4/
JPNICの報告書 http://www.nic.ad.jp/ja/research/ipv4exhaustion/ipv4exh-report.pdf

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