ヴィント・サーフ Google副社長 記者会見レポート 質疑応答編(2)

ヴィント・サーフ Google副社長 記者会見レポート 質疑応答編(2)

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~インターネットの父が語るIPv6とNGN、そしてネットワーク中立性

 TCP/IPの開発者として「インターネットの父」と呼ばれるヴィント・サーフは、現在Google Inc.の副社長兼チーフインターネットエヴァンジェリストをつとめている。彼がGoogleに移籍する際に様々な憶測を呼んだが、実際にGoogleに彼がどんなミッションを担っているのかは、はっきりしていない。

 その彼が来日に際して記者会見を行なった。内容はインターネットの中立性や、Googleが密かに進めているというIPv6について、そしてNGNやWeb2.0といった話題のキーワードについても積極的な意見を述べていた。

 そこで記者会見でのヴィント・サーフ氏の全発言を、日本語訳をお伝えする。第1回目のスピーチのあとに行なわれた質疑応答の後編をお届けする。<編集部>

-- NGNについてどうお考えでしょうか。通信事業者によるインターネットへの逆襲のようにも思えるのですが。

 NGNは、インターネットに立ち向かおうとする、通信事業者による3回目の企てだと、懸念しています。彼らはこれまでに2回ほど、インテリジェント・ネットワークの構築を試みて、いずれも失敗しました。そして3回目となる今回、彼らはNGNの構築しようとしています。

 NGNの議論において通信事業者は、すべてのアプリケーションは整然と制御可能でなければならない、と主張しています。すべてのパケットは正確かつ迅速に届けられ、あなたが使いたい映像は常に正しく送信され、送られるそばから視聴できなければならない、そんな必要があるのだそうです。しかしそうした主張に対し私はこんな反論をします…あなたが私に映像データを伝送している間、別に私はそれを見る必要はありませんし、ファイル転送のように最終的にファイルの体を成してさえいればそれで結構です、と。

 私のこうした考えは様々な議論の種となります。彼らは「しかし音声データ通信の場合はQoSが必要でしょう?内部制御が可能な構造を持つネットワークなしに、どうやって電話の品質を保てましょうか?」と反論してくるでしょう。私はそれに対しても、Google TalkやSkype、あるいは特に制約や設定のない普通のインターネット上で動く他のVoIPアプリケーションを試してごらんなさい、と逆に問いかけます。また私は、Google Talkとあなたの携帯電話を比べてみて、どちらが良かったか比較してみてください、とも言うでしょう。おそらく多くの利用者は、携帯電話の方が低品質だと答えると思います。

 私が申し上げたいのは、私のこうした考え方に対し、一つとして明確たり得ない彼らの見解は、これまでずっと継続してきた「インターネットの柔軟性」という価値を貶めようとするまやかしに過ぎない、ということです。もちろん、転送レートが低すぎれば音声通話が成立しないことは百も承知です。しかし私たちには圧縮技術があります。今日において、大体50kbpsもあれば全二重(双方向)の音声通話が十分可能でしょう。

 すでに世の中には、圧縮技術があり、世界中の海底には光ケーブルも張り巡らされています。パケット通信も広く普及しましたし、回線交換網とは違い、誰とも話していない時にパケットを流していなくてもいいのだから、回線も節約できます。これらはすべて利用可能なものだし、すでに使われているのです。こうした現実を直視すべきだと思いますが、いかがでしょうか?

-- Web2.0のインパクトについてどうお考えでしょうか。

 実は私もそれが何なのかを知りたいと思っています(笑)。さておき、Web2.0とは、Webサービスの別の言い方だと思っています。現在この言葉はマーケティング的に用いられていますね。特にこれといった斬新なアイディアではないけれどそれを世間に広めたい、そんな時にあなたはそれに新しい名前を付けて、売り出しますよね。でもまあ、そういうのもそんなに悪いものではありません。

 私も今いろいろWebサービスのことを考えていますが、Webサービスという考え方はとてもおもしろいと思います。処理、メモリ、通信などの資源をフルに使って仕事をする、コンピュータの新しい使い方ですね。また、SOAP、UDDI、XMLといった技術の成熟も、Webサービスの世界を拡張していると思います。

 Webサービスにおいてアプリケーションは抽象化され、あなたは使いたいアプリケーションをWebインターフェース経由で呼び出すことができます。もしあなた自身が物理的に移動しなければならない時も、移動先で簡単に作業を続けられるのです。

 たとえば災害が起きて、PCを置いて避難しなければならない。こうした場合でも、避難先のコンピュータ上に何か特別な再設定することなく、Webサービス経由でアプリケーションを継続して利用できます。またあなたの会社が他のどこかと合併したとして、両者がWebサービス経由のビジネス・アプリケーションを利用していれば、簡単に移行できます。

 あるいは、あなたが二つの会社に従事していたとします。そして各々の会社が業務プロセスを自動化しているとします。もし両者がいずれもWebサービスのアプリケーションを用いて業務を遂行していれば、両者の業務プロセスはインターネットを介して簡単に相互間でやりとりが可能なはずです。私はこのようなアイディアが大好きです。

 もちろん、課題もあります。たとえば2つのコンピュータが相互にやりとりする際の物理的な距離です。ある一つの拠点でのWebサービス利用だけなら、より多くのコンピュータやネットワーク資源が必要となる場合も含め、大した問題は生じないはずです。一方、東京と南アフリカのケープタウンのそれぞれに設置されたコンピュータを用いるような使い方だと、両者のデータの往来はちょっと大変そうですね。すなわち物理的な制約によって、サービスの利便性や抽象性を低下させてしまう可能性があるのです。

 とはいえ、Webサービスの考え方は概してすばらしいものであることに、異論はありません。それゆえ私たちも、その考え方に沿ってアプリケーションを実装しているのです。

-- Googleのインデックスはパワフル過ぎて、プライバシー等の問題をはらんでいるのではないか、とも指摘されます。こうした意見をどのようにお考えですか。

 まず、私たちのデータベースの構造についてお伝えしましょう。私たちはデータのインデックスを持ってはいますが、データそのものはそれぞれのリンク先である皆さんがお持ちです。これは、私たちのデータベースがどんなのものなのかを論じるのに、ちょっと厄介な構造です。このデータベースにおける個人情報の問題を考える場合には、その情報がデータベースのどこに、どのような経緯で反映されたのかを、インデックス作成当初に立ち戻って考えなければならないのです。

 私たちがどのようにWWW上でインデクシングを行い、それを再びサービスとして公開しているか、今一度考えてみましょう。インデックスの対称となるのはWWWで収集可能な、HTMLとXMLで記述されたWebページです。収集されたデータは、収集時点でWebページの形態ではなくなり、私たちには内容が分からなくなります。また私たちが作ったインデクシング用の強固なプログラムは、特にデータ形式を整えて何かを表現するような機能はありませんから、データベースの中には直接入りません。従って、データベースの中には個人情報も含まれているとは思いますが、私たちはそれを直接見て解釈するようなかたちにはなっていません。

 ここで、企業と個人情報の関係について整理させてください。多くの企業は、普通に活動している限り、多くの個人情報を収集することになります。たとえば私が以前働いていたMCIでは、毎月90テラバイトほどの通話記録が生成されます。この情報は、誰が誰にどれくらい電話をしていたか、という個人情報そのものです。私たちを含め多くの企業が、通常の活動を行う上で個人情報を手にすることになる。だからこそ多くの方が個人情報について気にしているのでしょう。

 問題は、企業が個人情報を集めているか否か、ということではありません。それをどんな用途に用いているのか、そしてどのように取り扱うべく取り決めているのか、ということだと思います。これは技術の問題ではなく、経営の問題です。つまりその企業が個人情報とどう向き合っているのか、という企業の意志決定の問題なのです。このように考えると、Googleは莫大な個人情報を抱えている、と言うのは必ずしも正しい指摘ではありません。むしろGoogleの仕事は、個人情報を何に使うのか、またそれをどのように守るのか、を決めていくことなのです。

 一例をご紹介しましょう。私たちは皆さんにサービスを利用いただくために多くのデータを蓄積したのですが、この保護の取扱いについて、米国の裁判所から召喚を受けました。彼らはこの数ヶ月、私たちがインターネット上で集めた情報を提供するよう求めてきました。大体1000万レコード程度になるでしょうか。

 これは私たちのサービスにはまったく関係のない、法律の世界でのできことなのです。実際私たちは誰からも訴えられていません。しかしこの件だけではありませんが、一つの象徴的存在として狙われてしまうようです。もちろん私たちはそんな世界には与しません。法廷では、なぜあなたたちがそんなことを求めるのか分からないということ、私たちは情報を提供したくないので、もしどうしてもそれを必要とするなら理由を示してほしい、と伝えました。

 この数ヶ月、本当に緊張したやりとりが続いていました。しかし最終的に私たちは、彼らの要請に応じ、きわめて単純ないくつかのクエリーだけを提供しました。この件について、これまで多くの注意を払ってきました、私たちは正しいことをしたと確信しています。

 以上のように、この問題に対する皆さんがお持ちの懸念は、私も共有していると思っています。ただ、次に述べるような理由で、ひょっとすると問題の見方が少し違うのかもしれません。

 私はもう63歳と年老いてしまいましたが、そんな私であってもGoogleを使って日々いろいろなものを発見しています。たとえば、執筆者の私でさえその存在を忘れてしまった、1974年頃に書いた簡単なドキュメントでさえ、今やネット上で見つけることができます。その中には今読み返すとちょっと恥ずかしいものもあります。今朝も私は、「ああ、やっぱりその恥ずかしいドキュメントを見に行くのなんて、やめよう」と思いました。けれどそれらは、私のそんな逡巡とは関係なく、ネット上にあり続けるのです。

 若い世代の人々は、驚くべき方法でインターネットを使い、日々進化させています。実際ネット上には、自分の人生の多くのことをネット上で公開し、他者と共有している、そんな人も見かけますね。彼らは、とにかくお構いなしに何でもネットに載せてしまう。それは彼らの恐れを知らぬ若さによるものでもあるでしょうが、彼らにとっては、共有すること、自分がネット上に載せた何かを誰かに見てもらい、使ってもらうこと、それが楽しくて仕方ないのでしょう。

 30-40年後、彼らは大企業の責任ある立場に就いているかもしれません。その時、Googleで検索して、自分たちが子供だった頃の所行を見つけることでしょう。彼らは「何のことだか全然分かりません」としらを切るはずです。何しろ、実際にそう言った人を私は知っていますし、彼らは大抵「若気の至りで…」と弁明するのです。もちろん私も、こうした体験をした時に、自分に正直でいる方法なんて、分かりませんけどね(笑)。

 こうした情報も個人情報の一つですが、単にそれらを隠し、削除するのではなく、それらを蓄積し、また守ることも重要なことなのです。世界のどこかで、そうした情報が誰かの役に立つかもしれない。そして彼らは、その情報を利用できるようきちんと整備してほしい、と思っているかもしれない。

 ヨーロッパでは個人情報保護の法律ができましたね。日本の状況はあまり詳しくありませんが、やはりその分野の専門家が同様の取り組みを進めていることでしょう。ただ、そうした取り組み以外にも重要なことがあるのだと、私は思っています。

~終わり

(翻訳 黒坂達也)

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