| ワイヤレスブロードバンド技術の本命と目されるWiMAXは、当初からIPv6と親和性が高いと言われていた。そこで、それぞれの国際的な普及団体であるWiMAX ForumとIPv6 Forumが、連携して問題の解決にあたることが決まった。 IPv6普及・高度化推進協議会/IPv6 Forumのメンバーで、WiMAX Forumとの連絡役を務めるIRIユビテックの伊藤公祐氏による、WiMAXとIPv6の新たな関係と、その先に見えてくるものの解説をお伝えする。(IPv6Style編集部) |
(株)IRIユビテック ユビキタス事業部 シニアコンサルタント
伊藤公祐
ワイヤレスブロードバンドの本命技術WiMAX
日本の電波行政の緩和策により、2.5GHz帯がモバイル通信用に開放されることになった。これによってWiMAXというIEEE 802.16をベースにした無線ブロードバンド通信方式への注目が高まっている。WiMAXは、これまでの携帯電話用の通信技術に比べて、データ通信速度も格段に高く、しかもWi-Fiとは違い移動通信にも対応しており、ユビキタス社会を実現するために必要な無線ブロードバンドネットワークの基盤として期待の高い標準技術である。
WiMAXのベースとなっているIEEE 802.16は、位置づけとしては携帯電話網やIEEE 802.20といった広域での無線通信を目的とするWANと、無線LAN技術としてWi-Fiで定着したIEEE 802.11の中間に位置づけられており、MAN (Metropolitan Area Network)と称される中距離をターゲットにした地域網となる。ただし、802.16は802.11と技術的に多くの共通点を持っており、先行して普及した802.11の技術応用によって802.16は3G/4Gに比べて、コスト的には抑えた開発が可能になることが期待されている。
しかも802.16は、その広帯域データ通信を実現するため、802.11にない付加機能を備えている。まずデータ転送を最適化するためのPHS (Payload Header Suppression)、エリア拡大に対応するためのFEC (Forward Error Correction)、通信品質を確保するQoS、そしてモビリティに対応するためのハンドオーバーやMobile IP対応を実現している。また、WiMAXにはオプションが多いことも特徴としてあげられる。キャリアがバックホールで使うための大規模なネットワークやユビキタス端末向けの省電力型デバイスの開発など、用途によってオプションを選び分け、システムを構築することが可能となっている。
なぜWiMAXが注目をあびているのか
一般的にWiMAXの魅力は「これまでの携帯電話通信になかったブロードバンド通信帯域である」と言われている。このこと自体は間違いではないだろう。しかし、われわれIRIユビテックとしては、IEEE802.16による無線インターネット基盤の構築をいち早く日本で手がけてきた経験から、WiMAXの最大の特徴を次のように見ている。
一つめは、前述したようにWi-Fiと共通の技術組成をもっているため、低コストでインフラを構築するポテンシャルがあること。二つめは、集中的な制御プロトコルによって各端末の通信をBS(ベースステーション)から管理できる構造になっていることと見ている。通信が集中管理できるということは、そのインフラが収益を見込む事業インフラとしての秩序ある通信網と成り得るわけである。そして3つめは、IPv6との親和性の高さだ。
親和性の高いIPv6とWiMAX
IPv6が設計された際に、次世代インターネットのニーズとして取り込んだモバイル対応だけでなく、セキュリティやグローバル特定性といった秩序あるネットワークへの対応といった要素が盛り込まれた。この方向性はWiMAXと完全に一致したものであり、IPv6をこの5年間に推進してきた目から見て、IPv6とWiMAXは非常に相性の良い技術であると感じている。この認識は、WiMAXのグローバル普及団体であるWiMAX Forum、いち早くIEEE 802.16の技術でサービスをWiBroという名で開始した韓国、そしてネットワーク技術の標準化団体であるIETFでも一致したものと感じている。
こういった状況を背景にして、IPv6というレイヤー3技術とIEEE 802.16というレイヤー2技術の連携を重視し、システムとしてビルドアップする際に生じてくるレイヤー間の課題を解決していこうという活動が始まっている。
IETFでは新WGにてWiMAXとIPv6を一緒に議論
時系列で追っていくと、まずIETFにおいてWiBroやIPv6の推進に積極的なサムソンの声掛けで、IPv6 over IEEE802.16(e) NetworksというBoFが2005年9月に発足した。BoFの目的は、主にモバイルWiMAX上でのIP接続性の維持とFast Handover Mobile IPv6 (RFC4068)などの動作における課題の解決、WiMAX Forumサイドへの推奨や必要に応じたプロトコル修正要求といった技術的な提案を上げることであった。
BoFでの検討を重ねた結果、2006年7月のIETFモントリオール会合においてBoFはワーキンググループ(WG)に昇格し、そのターゲットをIPv6のみならずIPv4まで視野に入れ、そしてモバイルWiMAXだけからIEEE 802.16全体へと拡大し「IP over IEEE 802.16 Networks (16ng)」として議論を開始した。チェアをつとめるサムソンのSoohong Park氏によれば、第1回目のWG会合では全体的な課題の共有と、モバイル(802.16e)やノマディック(802.16d)でのIPネットワークディプロイメントシナリオの発表などが行われたという。
IPv6のモバイル要素にフォーカスするWiMAX Forum
IETFでの活動と同期を取る形で、WiMAX ForumではNetwork WGがWiMAX上でのIPv6の接続性について議論をおこなっている。Network WGの中にIPv6 Subteamが設置され、現在CMIPv6(Cellular Mobile IPv6)などモバイル対応の検討を進めるとともに、アドレスアサイメントサイズについての検討も課題に上がっている。
WiMAX Forumの各WGは個別にオフラインミーティングを開催しており、Network WGではこの8月に富士通のホストで東京でのミーティングが計画されている。現在のところIPv6 Subteamの参加メンバーに日本人が見受けられなかったので、IPv6を引っ張る日本としてのさらなる貢献が期待される。
WiMAXに新市場創出を期待するIPv6 Forum
IPv6 Forumも、ユビキタス時代における新たなマーケット創出に有効なIPv6との連携技術の一つとしてWiMAXを支持し、WiMAX Forumとの協調を表明している。まず2006年2月に開かれたIPv6 ForumのWorld CongressにてWiMAX Forumに対するリエゾンが設定され、IPv6普及・高度化推進協議会の主要メンバーである筆者が選任された。
そして3月にはIPv6 ForumとWiMAX ForumのボードメンバークラスがTV会議を行い、基本的な協調関係を進める確認が取られた。その後、前述のWorld CongressでまとめられたIPv6 ForumのVision 2010というペーパーがWiMAX ForumのWebサイトにも6月に掲載されるなど、徐々に連携は深まっていっている。
二人三脚で歩み始めたWiMAXとIPv6
7月のIETFモントリオールと時期を同じくして開催されたWiMAX Forum Member Conference(サンディエゴ)では、WiMAX ForumのWGチェアクラスのミーティングにIPv6 Forum側のオフィシャルリエゾンとして筆者が招待され、IPv6 Forumの紹介とWiMAXを絡めたIPv6関連の大規模なプロジェクト、そして今後期待できるマーケットについてプレゼンを行い、今後の更なる協力関係を進めていくための確認を行った。
さらに今回の会合でのトピックとして、KDDIがボードメンバーとして承認されたことがあげられる。KDDIによるプレゼンでは、CDMAとWiMAXを相互に補完しながら運用するシームレスなネットワーク間ハンドオーバーを具体化し、それをIPv6網で統合していくというシナリオを表明した。スケーラブルなサービスネットワーク構築の軸はIPv6が有効だというメッセージは、WiMAX Forumメンバーにも浸透したのではないかと思われる。
簡単にサンディエゴでのWiMAX Forum Member Conferenceの開催概要について触れておくと、会期は7月10日より1週間で、参加者数は約600名。IETFと似て、各WGのセッションが平行して行われる形態をとっている。WGには、Network WGの他に、Technical WG、Application WG、Marketing WG、Service Provider WG、Certification WG、Regulatory WGなど多くの活動がある。
2.5GHz帯解放で日本にWiMAXが本格上陸
日本では現在、弊社も立ち上げ支援させていただいた4.9GHz帯を利用したサービス(非免許制区分)が都市部で開始されているが、WiMAX Forumが対象としている周波数帯の一つである2.5GHz帯の取り扱いについて、11月頃に総務省の方向性が固まる見込みだ。事業免許の取得に向けて携帯電話キャリアだけでなく、固定網系のオペレータによる実験活動も加速してきている。
2.5GHz帯がどのように割り当てられ、どういう技術による無線インフラが主流となるかまだわからないが、WiMAXの姉妹技術標準であるWiBroが既にお隣の韓国ではサービスを開始しており、WiMAXは技術的にも市場的にもいま実用化に近いところまできていると見る。ユビキタス社会基盤の確立には、IPv6とWiMAXのマッチングが非常に有効な道であると大きく期待し、今後も積極的に推進していく予定である。
■WiMAX Forum
http://www.wimaxforum.org/
■IPv6 Forum
http://www.ipv6forum.com/






