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更新: 12時間 45分前

スマートハウス構築の中核となる新通信規格「ECHONET Lite」がHEMSの標準インタフェースへ(前編)=HEMS事業への参入を促進するため一般公開!=

日, 2012-01-22 00:02
ECHONETで構築したスマートハウスのイメージ 〔出所 http://www.echonet.gr.jp/echo/pamphlet/pdf/data1.pdf〕

エコーネット(ECHONET)コンソーシアム(注1)は、去る2011年12月22日、スマートハウスの中核技術であるHEMS(宅内エネルギー管理システム)の標準インタフェース(通信プロトコル規格)として「ECHONET Lite」を公開、スマートグリッド時代を拓く新規格として大きな注目を集めている。この「ECHONET Lite」は、エコーネットコンソーシアムによって策定(2011年6月30日)され、経済産業省傘下のJSCA(スマートコミュニティアライアンス)内のスマートハウス標準化検討会(2011年11月7日設置)で、欧米のZigBeeをはじめZ-Wave、KNXなどのプロトコルも含めて検討され、これらを退けて推奨規格となった。
ここでは、2011年12月21日(翌日の22に日公開)に開催された「ECHONET一般公開記者発表会」の内容を紹介する。

(注1)ECHONET:Energy Conservation and HOmecare NETwork 、「家庭におけるエネルギー節約、在宅介護ネットワーク」の実現を目指して設立された「エコーネットコンソーシアム」が策定した、ホームネットワークの基盤ソフトウェアおよびハードウェアの規格。なお、旧ECHONET規格の搭載機器は、2010年度に1400万台を突破している。エコーネットコンソーシアムは1997年12月設立。会員数は64 社・組織(2011 年7 月時点)

≪1≫「ECHONET Lite」がHEMSの標準インフェースとなった背景

マルチベンダ環境で、使いやすいホームネットワークの通信規格の策定を目指す「エコーネットコンソーシアム」(図1)は、これまで、屋内電力線(PLC:Power Line Communication)や無線、赤外線などを使用して、家電製品などを制御するための宅内ネットワークを構築する「ECHONET」規格を策定してきた。

具体的には、2003年12月には通信プロトコルやインタフェース関連の規格「ECHONET規格Ver.3.20」を、続いて、ECHONET Ver.3.60(2007年12月)を策定し、2009年にはIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)において国際標準規格として認定された。


図1 エコーネットコンソーシアムの組織体制(クリックで拡大) 〔出所:http://www.echonet.gr.jp/news/file/file_46_55.pdf〕

さらに、2011年6月には、国際的にオープン化が求められるスマートグリッド時代を背景に、IP(インターネットプロトコル)対応の、

(1)ECHONET Ver.4.0(OSI参照レイヤ1~7層を規定)
(2)ECHONET Lite Ver1.0(軽量版:OSI参照レイヤ5~7層を規定)

という新しい規格が策定された。


山田 淳氏(エコーネットコンソーシアム 普及委員長)

とくに、ECHONET Liteは、対応機器が増えたために機能が肥大化してきたECHONETプロトコルの機能を軽くした軽装版(Lite)として策定され、日本におけるスマートハウスの中核となるHEMSの推奨インタフェースとなった。

しかも、今後スマートハウスビジネスを展開するさまざまな分野の企業が、HEMSの事業参入しやすくすることを目指して、会員に限定して公開(2011年6月30日)していたECHONET Lite規格を、一般公開することに踏み切った。これは、米国のZigBeeなどが非公開であることを考慮すると画期的なことである。

エコーネットコンソーシアムの普及委員長 山田 淳氏は、『今回のECHONET LiteをHEMSの推奨規格(標準インタフェース)とするにあたって、図2に示すように経済産業省の傘下にあるJSCA(スマートコミュニティアライアンス)の中の国際標準化ワーキンググループ(WG)が大きな役割を果たした』と述べた。


図2 JSCA(スマートコミュニティアライアンス)の組織構成図(クリックで拡大) 〔出所 http://www.echonet.gr.jp/news/file/file_46_56.pdf〕

このECHONET Liteは、具体的には、次のような経緯で策定され、公開された。

(1)図2に示す国際標準化WG配下の「EMS SWG」(注2)の下に「スマートハウス標準化検討会」が設置(2011年11月7日)され、
(2)この検討会の下には、さらに①「HEMSタスクフォース」と②「スマートメータータスクフォース」が設置され、
(3)ECHONET LiteはこのうちHEMSタスクフォースで、推奨され、
(4)最終的に、スマートハウス標準化検討会で「公知な標準インタフェースとして承認され、公開された。

さらに、山田氏は『このほど、ECHONET Litが一般公開されることによって、中小企業やベンチャー企業が新しいHEMS事業へ参入しやすくなりました。』と、公開の意義を強くアピールした。

(注2)EMS SWG:Energy Management System Sub Working Group、エネルギー管理システム分科会)


≪2≫ECHONET Lite 規格のプロフィール

ECHONET Lite規格は、インターネット普及による通信環境の変化に対応し、容易にホームネットワークを実現することを目指して仕様を軽くしている。また、トランスポート層以下の規定を外して、通信処理部だけの仕様とすることで、トランスポートフリーな規格にした。たとえば、『IEEE 802.15.4(ZigBeeの物理層/MAC層)などグローバル標準の通信プロトコルや、インターネット標準プロトコルであるIPの適用が容易にできるようになり』(山田 淳氏)、従来に比べてに非常に簡単に実装することも可能となった。

このほか、白物家電や設備系機器ばかりでなくスマートハウス向けに、家庭用太陽光発電、燃料電池や、家庭用蓄電池などの登場に伴って、ECHONET機器オブジェクト詳細規定が改定された(後述)。

さらに、国際競争力を強化するため、旧ECHONET規格がIECの国際標準となったように、ECHONET Lite規格および機器オブジェクトの詳細規定についても、2012年度中の国際標準化を目指している。

ここまでは概要を説明してきたが、次に、もう少しECHONET Lite規格の内容を紹介しよう。


≪3≫ECHONET Ver.4.0とECHONET Lite Ver.1.0の違い
平原 茂利夫氏(エコーネットコンソーシアム 運営委員長)

図3に、前述したECHONET Ver.4.0とECHONET Lite Ver.1.0の違いを示すが、アミ掛けして強調している部分が、両者の規格化の範囲である。これからわかるように、ECHONET Ver.4.0の場合は、最下位に示すレイヤ1の伝送メディアからレイヤ7のサービスまですべてのプロトコルが規格化されている。

この背景について、エコーネットコンソーシアムの運営委員長である平原 茂利夫氏は、『エコーネットコンソーシアムが設立(1997年)された当時は、家電を接続する規格がほとんどなかったため、レイヤ1~7までを規格化する必要がありました。しかし、その後、さまざまな標準規格が作成されてきたため、図3の右側に示すように、伝送メディア(MAC層/物理層)などは規定せずに、上位の通信ミドルウェアだけを規格化しました。これによって、ECHONET Liteは、従来のECHONETに比べて大幅に軽装化できたのです』と説明した。

また、ECHONET環境で使用される、家電機器やエアコン、センサー類などの機器オブジェクトの仕様(各機器がもつ情報や温度・電圧などの制御対象を含む)については、両者で共通に使用できるようになっている。


図3 ECHONET Ver.4.0とECHONET Lite Ver.1.0の違い(クリックで拡大)
≪4≫スマートハウスにおけるHEMSタスクフォースとECHONET Liteの関係

図4に、JSCA(スマートコミュニティアライアンス)のHEMS TF(タスクフォース)の検討対象範囲と、とECHONET Liteの検討対象範囲を示す。図4の左側に、スマートハウスに関するHEMSタスクフォースの検討範囲を「点線と■(青色)の部分」で示している。すなわち、HEMSタスクフォースは、HEMSと家電機器・住設機器・エネルギー機器間のインタフェースを決めることがその検討範囲になっている。

具体的には、図4の中央に示すように、HEMSタスクフォースでは、コマンドとプロトコルの部分を決めていくが、これをECHONET Liteの用語に対応させると、図4からわかるように、

(1)「プロトコル」は「ECHONET Liteの通信処理部」
(2)「コマンド」は「ECHONET Liteの機器オブジェクト」

に対応している。


図4 JSCAのHEMS TF(タスクフォース)とECHONET Lite(クリックで拡大)
≪5≫トランスポートフリーなECHONET Lite

図5は、ECHONET Liteが前述したトランスポートフリーなプロトコル構成となっていることを示す図である。図5からわかるように、ECHONET LiteはOSIのレイヤ1~4〔レイヤ1:物理層、レイヤ2:MAC層、レイヤ3:ネットワーク層、レイヤ4:トランスポート層〕に依存しない、すなわちトランスポート層以下のプロトコルに依存しないトランスポートフリーな規格であり、図5の紫色の「ECHONET Lite通信処理部」だけのプロトコルとなっていることが大きな特徴である。

レイヤ4以下では、通信アドレスはIPアドレスあるいは、伝送メディア(例:Ethenet)のMACアドレスなどが使用される。


図5 トランスポートフリーなECHONET Liteの構成(クリックで拡大)
≪6≫スマートハウスにおける機器オブジェクトの追加

図6は、ECHONET Liteで追加された機器オブジェクトを、スマートハウスに適用したイメージ図である。これまで、家庭において使用される機器は、電気を使う機器(エネルギーを使う機器)すなわち『省エネ機器』が主であったのに対し、スマートハウスでは、電気を発電する太陽光発電や燃料電池、あるいは電気を貯める蓄電池などの、『創エネ機器』、『畜エネ機器』が導入・設置されるため、これらを含めた機器オブジェクト(コマンド)が追加された。今後、電気自動車(EV/PHV)などをはじめ順次新しい機器オブジェクトの登場が予想されるが、その場合は、エコーネットコンソーシアムが各業界とリエゾン(連携)をとり、コマンドを追加・拡張していく。


図6 スマートハウス構築に向けた機器オブジェクトの追加(クリックで拡大) FC:Fuel Cell、燃料電池
HP:Heat Pump、ヒートポンプ
≪7≫ECHONET Liteは2012年中に国際標準化の予定

すでに、旧ECHONET規格は、すべてIECあるいはISO/IECで国際標準化が実現されている(図7)が、今回のECHONET Liteの国際標準化については、現在準備中であり、最短で2012年9月、遅くとも2012年度中には達成されることを目指している。

具体的には、機器オブジェクトを含めたECHONET Liteは、図8に示すように、ホームネットワーク関連技術の標準化.を担当しているIEC TC100(注3)という専門委員会で審議され標準化される予定となっている。

(注3)IEC TC100:IEC第100専門委員会、AUDIO、VIDEO and MULTIMEDIA systems and equipment、オーディオ、ビデオとマルチメディアシステム/装置を担当。

具体的なECHONET Lite/機器オブジェクトの標準化のスケジュールは次に通りである。

(1)2011年6月:NP(注4)提案(TC100国内委員会)
(2)2011年8月:NP提案承認(TC100国内委員会)
(3)現在、IEC/TC100への規格提案書を作成中
(4)2012年3月:規格書提出(IEC/TC100)
(5)2012年9月:国際標準化(IS。注5)完了(最短の場合、遅くとも2012年度中)

(注4)NP:New work item Proposal、新業務項目提案

(注5)IS:International Standard、国際規格


図7 IECまたはISO/IECの国際標準となっている旧ECHONET規格(クリックで拡大) FC:Fuel Cell、燃料電池
HP:Heat Pump、ヒートポンプ
図8 IEC TC100におけるECHONET Lite/機器オブジェクトの国際標準化(クリックで拡大) NP New work item Proposal(新業務項目提案)
IS International Standard(国際規格)
≪8≫別の視点「IEC TC 57」からも「システムインタフェース」を策定

また、別の視点、すなわち、元々スマートグリッド関係(配電関係)のネットワーク規格の標準化を担当しているIEC TC57(注6)においても、上位の配電側からみて、どのように家庭のHEMSを接続するか、そのシステムインタフェースが検討されている。具体的には、ドイツのシーメンスから提案され、TC57内に2011年3月に設立されたWG21(注7)で審議が行われている。

図9に、IEC TC57 WG21の「システムインタフェース」(配電側と需要家側間のインタフェース)の位置づけを示すが、その標準化の検討には、ホームネットワーク技術に関連している、日本のエコーネットコンソーシアムや米国のZigBeeアライアンス、そして欧州のKNXアソシエーションなどとリエゾンを取りながら行われている。このWG21には、エコーネットコンソーシアムから2名のエキスパートが派遣され標準化活動が行われている。

(注6)IEC TC 57:POWER SYSTEMS management and associated information exchange、電力システム管理および関連する情報交換)

(注7)WG 21:Interfaces and protocol profiles relevant to systems connected to the electrical grid、「送電網に接続されたシステムに関連するインタフェースおよびプロトコルプロファイル」の策定を担当するワーキンググループ


図9 配電側と需要家側(家庭)の間のインタフェースの策定(クリックで拡大) NP New work item Proposal(新業務項目提案)
IS International Standard(国際規格)

運営委員長平原茂利夫氏は、『そのWG21における標準化のスケジュールは、図10に示すように、前述したシーメンスからの提案で、2011年3月にWP21が設立されました。これを皮切りに、2011年11月には、リエゾンレターという形で、WG21にエコーネットコンソーシアムとして参加したい旨を出しましたが、これは受理される見込みとなっています。現在、ECHONET Liteのユースケースの収集とその選択作業を行っているところです。』と現在のエコーネットコンソーシアムの状況を披露した。引き続き、現在も、国際的にECHONET Liteが認知され、2012年12月(遅くも2012年度中)に標準化が達成されるよう標準化活動が続けられている。


図10 ECHONET規格の国際標準化(クリックで拡大) NP New work item Proposal(新業務項目提案)
IS International Standard(国際規格)

(つづく)


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米国アリゾナ州フェニックス市で開催されたSGIP主催『Grid Interop 2011』=注目を集めたIEEE 1888に関する東大の活用事例=

金, 2011-12-16 14:18
2011年12月6日(火)、米国アリゾナ州フェニックス市で開催されたSGIP主催「Grid Interop 2011」の会場風景 (上)Grid Interop 2011で挨拶するラルフ・スポーラー(Ralph Sporer)氏〔欧州合同ワーキンググループ議長(CEN, CENELEC, ETSI & the EC)〕 (下)満席となった初日のプレナリセッション(全体会議)における熱心な討論風景

米国スマートグリッドの一大イベントである「Grid Interop 2011」が、2011年12月5日(月)~8日(木)の4日間、米国アリゾナ州のフェニックス市で開催された。この会議は、米国の標準技術研究機関であるNIST(注1)が運営するSGIP(注2)によって年に一度開催されており、スマートグリッドに関係するステークホルダが一堂に会する場となっている。このGrid Interop 2011のB2G分科会において、東京大学の江崎浩教授(GUTP代表:東大グリーンICTプロジェクト代表)は、新スマートグリッド通信技術(プロトコル)「IEEE 1888」(2011年2月制定)が、東日本大地震後の、2011年夏の日本の電力逼迫(ひっぱく)問題に対し、どのように効果的に活躍したかを報告し、注目を集めた。この発表を通して、SGIPが策定を進めているスマートグリッドに関する技術標準のカタログ(CoS:Catalog of Standards)に、IEEE 1888が掲載される見通しとなった。

(注1)NIST:National Institute of Standards and Technology、米国立標準技術研究所
(注2)SGIP:Smart Grid Interoperability Panel、スマートグリッド相互運用性パネル(2009年11月発足)。

≪1≫NISTが運営するSGIPの構成と各分科会の役割

米国・商務省の配下にある技術標準研究機関であるNISTは、産業技術に関する規格の選定や調達仕様の策定などを行っている組織(技術の標準化は行わない組織)であるが、スマートグリッドに関する各種規格を公正に扱いながら、産業界の調整を担う役目を果たしている。そのため、Grid Interop 2011で開催されたSGIPの分科会会合の多くが、NIST関係者の主導するものとなっている。

図1に、Grid Interop 2011を主催したSGIPの組織構成図を示すが、図1の右下に示す分科会(DEWG:Domain Expert Working Group)の中には、

(1)B2G:Building-to-Grid、ビルと電力網間の相互接続に関する専門家ワーキンググループ
(2)I2G:Industry-to-Grid、産業と電力網間を相互接続に関する専門家ワーキンググループ
(3)V2G:Vehicle-to-Grid、自動車と電力網間を相互接続に関する 専門家ワーキンググループ
(4)H2G:Home-to-Grid、家庭と電力網間を相互接続に関する専門家ワーキンググループ

などのように、それぞれの業界と電力網間の相互接続を検討する分科会がある。

一方、図1の右中央に示すPriority Action Plan Team(重点実行計画チーム)のように、18個のPAP(Priority Action Plan、重点実行計画、PAP0~PAP18。一部終了したPAPもある。詳細は、文末の用語解説を参照)があるが、このPAPは、スマートグリッドで必要と考えられるデータモデルなどを特定し、具体的に検討を進めている分科会である。


図1 SGIP(スマートグリッド相互運用性パネル)の組織構成(右下にB2Gがある)(クリックで拡大) 〔http://www.cpuc.ca.gov/NR/rdonlyres/229857FD-6623-4B0F-99A7-40CDE4236AF1/0/CA_PUC_day1_AM_briefing.pdf〕

≪2≫B2GとI2Gの合同セッションにおける江崎教授のIEEE 1888に関する実例報告

今回のGrid Interop 2011において東京大学の江崎教授は、図1に示す「B2G」(Building-to-Grid)と「I2G」(Industry-to-Grid)の合同セッションで、日本におけるIEEE 1888プロトコルに関する実例報告を行った。この報告時には、会場はほぼ満席となり、70人余の参加者で埋め尽くされた。

江崎教授は、写真1に示すように、Face Time(展示会)でも発表を行い、スマートグリッド・ステークホルダのトップレベルの人々と議論を行っている。


写真1 Face Time(展示会)での発表風景:江崎浩教授自らがテーブルに立ち、スマートグリッド・ステークホルダのトップレベルの人々と議論を行った。(クリックで拡大) 〔http://www.cpuc.ca.gov/NR/rdonlyres/229857FD-6623-4B0F-99A7-40CDE4236AF1/0/CA_PUC_day1_AM_briefing.pdf〕

その報告内容(タイトル)は、図2に示すように「IEEE 1888を用いた設備管理と制御に関するフレームワーク」であった。

具体的には、図3に示すIEEE 1888で構築されるシステムのアーキテクチャを示しながら、東日本大震災直後の2011年夏における、厳しい電力事情の中で運用された、東京大学工学部2号館のIEEE 1888システムを紹介した。


図2 江崎教授の報告内容:「IEEE 1888を用いた設備管理と制御に関するフレームワーク」(クリックで拡大)
図3 IEEE 1888で構築されるシステムのアーキテクチャ(クリックで拡大)

さらに、東京大学工学部2号館のIEEE 1888システムを導入した成果として、図4に示す4つの成果をアピールした。

(1)エネルギーに対するリスクマネージメントが可能になったこと

(2)パフォーマンスが向上したこと
 ①ピーク電力値を平均で44%削減でき、総電力量を31%削減できたこと
 ②電気代の削減により、2年で投資回収できること(RoI:Return of Investment)
 ③サーバの仮想化の場合は、0.5年で投資回収できること

(3)システムの持続的発展が可能となったこと

 ①オープンアーキテクチャであること
 ②マルチベンダでシステムが構築できること(東大では10社以上のシステムが相互に接続されて運用されていること)。

(4)新しいビジネスを開発できること


図4 東京大学工学部2号館における4つの成果(2011年夏)(クリックで拡大)
≪3≫IEEE 1888の規格の特徴とリスクマネージメントの重要性

IEEE 1888の規格は、中国と日本が協力して積極的に行い、2011年2月に標準化されたアプリケーション・プロトコルである。このIEEE 1888プロトコルは、HTTPベースのSOAP(注3)/XML通信を基本としており、これまでの設備ネットワークではあまり行われていなかった情報システム(データベースを含む)との連携性が非常によくなっている規格である。一方で、既存の設備ネットワーク系の規格と、整合性を保った形で共存することが可能であり、多様な個々の設備ネットワークを、情報システム側で平等に扱うことができるようになる。

(注3)SOAP:Simple Object Access Protocol、HTTPなどをベースとした、他のコンピュータにあるデータやサービスを呼び出すためのプロトコル。

この夏(2011年夏)における日本の厳しい電力事情に対し、図5に示すように、東京大学では5つのキャンパス(本郷・駒場1・駒場2・柏・白金)の電力消費量の「リアルタイム見える化(キャンパス内のエリア分割レベルと個別建物レベル)」を実施したが、その際にIEEE 1888の技術が用いられた。もともと、キャンパスごとに異なる通信仕様の機器が導入されていたが、IEEE 1888を適用したことによって、これらのマルチベンダ機器を統一的に接続し、見える化を実現することができた。その結果として、夏場の消費電力の運用改善に大きく貢献することになった。

東京大学は、東京都の中でもトップクラスの電力需要家として有名である。今回構築された東大のIEEE 1888システムでは、具体的に、ピーク電力の削減やトータルの電力消費量を削減することができた。同時に、電力システムの運用は、企業・組織のリスクマネージメントの観点からも非常に重要となってきていることが実証された。今回の東大の事例は、それをよく物語っているが、NISTにおいても、リスクマネージメントのような観点も含めて、スマートグリッドというものを考えていく必要がある。


図5 東京大学の5キャンパスを統合するIEEE 1888を使った電力見える化システム(クリックで拡大) ベンダーごとに異なる通信仕様をゲートウェイ(GW)により吸収し、電力の情報を統一的に扱えるようにしている。また、その電力情報は、データ蓄積装置(Storage)や、見える化アプリケーション(App)で扱っているが、これらはクラウド的に運用されている。

なお、技術の平等な開発機会と普及という観点から、B2G(Building-to-Grid)分科会のチェアであるNISTのデイビッド・ホルムバーグ(David Holmberg)氏から、オープンソースや、テスト・認証プログラム、ソフトウェア開発キット(SDK)についての質問があった。これに対し、江崎教授は、「現在、そのあたりの準備はまさに進めていて、数ヵ月後には整理したものを出せると思う」と回答した。


≪4≫IEEE 1888標準をSGIP「CoS」(技術標準のカタログ)に掲載の方向へ

今回、Grid Interop 2011へ参加したことは、SGIPのGovernance Board(進行役)を含む多くのスマートグリッド関係者と、直接顔を合わせながら議論を進めることができ、大きな成果をあげることができた。これらを通して、IEEE 1888標準への理解が深まり、今後、SGIPが策定を進めている、スマートグリッドに関する技術標準のカタログ(CoS:Catalog of Standards)に、IEEE 1888が掲載される方向で、話が進展している。

このCoSは、スマートグリッドを構築するうえで必要と思われる規格を、NISTが主導で選択し掲載するカタログであり、ここに掲載されることは、IEEE 1888を普及させるうえで大きな力となるものである。

そこで参考までに、SGIPが策定を進めているスマートグリッドに関する技術標準のカタログ(CoS)の構成を図6に、スマートグリッドに関する新技術標準をCoSに追加する場合の基本プロセスを図7に示す。


図6 スマートグリッドに関する技術標準のカタログの構成(クリックで拡大) 〔http://collaborate.nist.gov/twiki-sggrid/bin/view/SmartGrid/SGIPCatalogOfStandards〕
図7 スマートグリッドに関する新技術標準をCoSに追加する場合の基本プロセス(クリックで拡大) 〔http://collaborate.nist.gov/twiki-sggrid/bin/view/SmartGrid/SGIPCatalogOfStandards〕
※ スマートグリッド用語解説

B2G DEWG ... Building-to-Grid Domain Expert Working Group
BnP DEWG ... Business and Policy Domain Expert Working Group
BOP DEWG ... Bylaws and Operation Practices Working Group
CMEWG ...... Communication, Marketing and Education Working Group
CSWG ....... Cyber Security Working Group
DEWG ....... Domain Expert Working Group
DRGS DEWG .. Distributed Renewables, Generation, and Storage Domain Expert Working Group
EMIIWG ..... Electromagnetic Interoperability Issues Working Group
EV Fast Charge .. Electric Vehicle Fast Charge,
GBITF ...... Governing Board International Task Force
GWAC ....... GridWise Architecture Council
H2G DEWG ... Home-to-Grid Domain Expert Working Group
I2G DEWG ... Industry-to-Grid Domain Expert Working Group
IPRWG ...... Intellectual Property Rights Working Group
PAP00...... Meter Upgradability Standard(終了)
PAP01...... Role of IP in the Smart Grid(終了)
PAP02 ...... Priority Action Plan: Wireless Communications for the Smart Grid
PAP03 ...... Priority Action Plan: Common Price Communication Model
PAP06 ...... Priority Action Plan: Common Semantic Model for Meter Data Types
PAP07 ...... Priority Action Plan: Electric Storage Interconnection Guidelines
PAP08 ...... Priority Action Plan: CIM for Distribution Grid Management
PAP09 ...... Priority Action Plan: Standard DR and DER Signals
PAP12 ...... Priority Action Plan: Mapping IEEE 1815 (DNP3) to IEC 61850 Objects
PAP13 ...... Priority Action Plan: Harmonization of IEEE C37.118 with IEC 61850 and Precision Time Synchronization
PAP14 ...... Priority Action Plan: Transmission and Distribution Power Systems Model Mapping
PAP15 ...... Priority Action Plan: Harmonize Power Line Carrier Standards for Appliance Communications in the Home
PAP16 ...... Priority Action Plan: Wind Plant Communications
PAP17 ...... Priority Action Plan: Facility Smart Grid Information Standard
PAP18 ...... Priority Action Plan: SEP 1.x to SEP 2 Transition and Coexistence
SGAC ....... Smart Grid Architecture Committee
SGIP ....... Smart Grid Interoperability Panel
SGTCC ...... Smart Grid Testing and Certification Committee
TnD DEWG ... Transmission and Distribution Domain Expert Working Group
V2G DEWG ... Vehicle-to-Grid Domain Expert Working Group


【関連記事】

<IEEE 1888導入事例>
◆大塚商会がスマートグリッド用新プロトコル「IEEE 1888」で世界初の「見せる化」システムを構築=電力消費で、25%の大幅な節電を実現=
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110920/853

◆新菱冷熱工業がスマートグリッド用新プロトコル「IEEE 1888」で世界初の「広域多棟システム」を構築=本社ビル/中央研究所/第7新菱ビルの3棟を相互接続=
http://wbb.forum.impressrd.jp/news/20111130/860

<スマートグリッドスペシャル・インタビュー>
◆スマートグリッド向け新プロトコルによるIEEE 1888システムの構築を聞く!(前編)
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110501/840

◆スマートグリッド向け新プロトコルによるIEEE 1888システムの構築を聞く!(後編)


プロフィール

落合 秀也(おちあい ひでや)氏

現職:
東京大学 大規模集積システム設計教育研究センター 助教

【略歴】
2006年 東京大学 工学部 電子情報工学科卒業。
2008年 同大学大学院 情報理工学系研究科 修士課程了。
2011年 同大学大学院 同研究科 博士課程修了。同年同大学 大規模集積システム設計教育研究センター 助教、現在に至る。設備ネットワーク、広域センサーネットワーク、遅延耐性ネットワーク研究のほか、IEEE 1888およびASHRAEでの設備ネットワーク標準化活動に従事。情報理工学博士(東京大学)。

【主な著書】
江崎 浩/落合 秀也共著『スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011=東大グリーンICTプロジェクトの「IEEE 1888システム」と節電対策の実践=』(インプレスR&D刊、2011年)


インプレスR&D刊行の関連書籍

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具体的には、スマートハウス、スマートビル、スマートコミュニティの中核的な技術となる、「HEMS」(宅内エネルギー管理システム)、「BEMS」(ビルエネルギー管理システム)、「CEMS」(地域エネルギー管理システム)など、エネルギー管理システム(EMS)の全体像と、それらを実現するための「ネットワーク技術」「通信プロトコル」「プラットフォーム」「ミドルウェア」「半導体」などの要素技術を実用化の視点から解説し、その製品動向を多角的にとらえた内容になっています。
なかでも、これらのEMSを構築するうえで、とくに、現在注目され普及期を迎えているプラットフォームソフトウェア「OSGi」や「TR-069」(機器管理プロトコル)、さらに標準化の大詰めを迎えている「SEP 2」(電力消費量の測定や表示、デマンドレスポンスなどを行うアプリケーションプロトコル)に注目して解説していますスマートグリッドについては、米国のオバマ大統領が、「次のARPANET(インターネット)である」と演説し注目されましたが、インターネット以上の産業的な広がりをもって進展しています。このため、電力関連企業やICT関連企業だけでなく、建築から家電、自動車、ガスに至るまで、新しいビジネスチャンスを目指して、あらゆる産業からの新規参入が相次いでいます。本書は、それらの新規参入を目指している皆様のための必読の一冊です。


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本書は、電力・エネルギー危機に挑む、スマートグリッド組織「東大グリーンICTプロジェクト」の「IEEE 1888」システムを活用した節電対策の具体例を見ながら、新しいキャンパスやビルの方向性を示しつつビジネスの可能性と展開を解説していく。


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今、電力網と情報通信網を統合した「次世代電力網」すなわち「スマートグリッド」が国際的に大きく注目され、さまざまな国でその取り組みが開始されています。
私たちを取り巻く社会環境は、現在、地球温暖化問題やエネルギー枯渇問題、経済危機など、人類史上まれにみる深刻な危機に直面していますが、これらを解決する救世主として登場したのが、「スマートグリッド」です。
このスマートグリッドは、大きく3つの可能性をもっています。
1つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用することによって、「電気エネルギーの面」から今後、クリーンなエネルギーを持続的に供給することが可能になることです。2つ目は、情報通信技術を活用することによって、「送配電網の運用の面」から効率的で信頼性の高い電力の供給が可能となることです。3つ目は、家庭やオフィスなどの需要家側においては、電気エネルギーの使い方をスマートにすることによって省エネルギー化を可能とするなど、「消費の面」からも新しい局面を拓くことが可能になることです。
本書は、スマートグリッド関係の分野において、国際的な標準化活動や最前線で研究開発やビジネスを展開されている執筆陣によって刊行され、スマートグリッドの全体像を集大成した内容になっています。このため、電力業界はもとより、情報通信業界をはじめ、家電業界、自動車業界に至るまで、スマートグリッドに携わる幅広い方々が、次世代のビジネス戦略を考えるうえで、大いに参考になる必読の一冊となっています。


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また、標準化の場にはどのようなものがあるのか、諸外国は標準化にどのようにとり組んでいるのか、さらに特許をはじめとする知的財産と標準化の関係は何か、政府と大学の役割は何かなどを考えたうえで、日本企業が今後どのように標準化にとり組むべきかについて考えます。


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スマートグリッドシリーズ第6弾
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執筆者:丹 康雄(北陸先端科学技術大学院大学 教授)
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特に、スマートグリッドとしての制御系の波は、これまでのホームネットワークのシステムに、無線やPLC(電力線通信)などの通信技術の進展がみられたのに加えて、家庭内に創エネ、蓄エネの機器が出現し、重要なものになってきています。
さらに2011年3月11日に起きた災害は、人々の意識や社会的ニーズを一変させ、それまではコスト面などで敬遠されてきた再生可能エネルギーおよび分散電源の活用や、快適さを失うおそれから取り組みが足踏みしていた消費エネルギー抑制諸技術の実現に、改めて研究開発の方向性が向かいつつあります。
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スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


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スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
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執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。


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スマートグリッドシリーズ第2弾
日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010
[Smart Energy Profile 2.0によるスマートグリッドの新展開]

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執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
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〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


スタートした「次世代エネルギー・社会システム実証事業」 「地域節電所」を核にした北九州スマートコミュニティ=HEMS、BEMSと連携した「CEMS」による新しい挑戦=

月, 2011-12-12 14:59
「次世代エネルギー・社会システム実証事業」のひとつとして選定された北九州市八幡東区東田地区の外観
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041577.pdf

人口97万人の福岡県北九州市の八幡東田地区(7万人)は、広大な新日鉄八幡製鉄所の工場の跡地を再開発し、高度な都市基盤と環境を共生させた次世代のまちづくりを推進し、低炭素社会に向けた意欲的な取り組みを展開している。この北九州市は、今回の経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業」のひとつとして選定され、その取り組みである「北九州スマートコミュニティ創造事業」を推進している〔平成22(2010)年度~26(2014)年度の5年間〕。ここでは、「北九州市」が選定された背景や、スマートグリッド時代に、「地域節電所」(CEMS)を核に、どのようなスマートハウス(HEMS)やスマートビル(BEMS)、スマートショッピングモール等を構築し、新しいスマートコミュニティを目指しているのか、そのビジョンやダイナミックな取り組みを、現地取材をもとに見てみることにしよう。
なお、今回の取材には、北九州市環境局の広報担当課長の渡部誠司氏を中心に、環境政策部長の加茂野秀一氏、スマートコミュニティ担当係長の越智豊氏に多大なご協力をいただいた。ここに厚く御礼申し上げる(取材:WBB Forum編集部)
〔http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041576.pdf〕

≪1≫北九州スマートコミュニティ創造事業に向けた現在の状況 〔1〕九州電力に依存しない東田地区の電力

図1に示すように、北九州市八幡東区東田地区(以下、東田地区)は、もともと新日鉄(正式名:新日本製鐵株式会社)八幡の工場跡地であるが、10年前に開催された北九州博覧祭2001(2011年7月~11月。ジャパンエキスポ)が終わった後に、どのようまちづくりを進めていくかいわゆる「再開発の一環」として、平成16(2004)年に、「八幡東田グリーンビレッジ構想」が策定された。この構想の下に工場の跡地を再開発し、高度な都市基盤と環境との共生を両立させた次世代の街づくりが推進されて、環境ミュージアム、いのちのたび博物館、環境共生マンション、エコハウスなど多くの施設が建設されてきた(図2)。


図1 北九州市の東田地区の位置(クリックで拡大) 〔http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041576.pdf〕
図2 北九州市の東田地区エリアには、多くの施設があるため、至る所にこのような案内標識が立てられ見学しやすくなっている。(クリックで拡大)

その構想の中で、地域におけるエネルギー管理をどう実現するか、という課題を実現するため、現在、東田コジェネが稼働している。

東田コジェネの「コージェネレーション」とは「電力と熱」を有効に利用する方式であり、

(1)発電された電力は東田地区にすべて供給され、
(2)発生した熱(蒸気)は、すべて新日鉄構内に送られ再利用

されている。すなわち、東田地区と新日鉄がコラボでエネルギーを有効利用しているのである。

このため、東田地区では、九州電力からの電力を利用せず、この東田コジェネ(新日鉄)からの電力を利用している、日本でも珍しい地域のひとつになっている(図3)。

九州電力
  ↓電力供給
新日鉄(東田コジェネ)
  ↓電力供給
一般住宅(東田地区)


図3 東田地区には九州電力ではなく、新日鉄(東田コジェネ)から電力が供給されている(九州電力に依存していない)ことも、大きな特徴の一つである。(クリックで拡大)

これは、「北九州国際物流特区」の認定に伴う規制緩和項目の一つ、自営線による電力供給(資本関係等によらない密接な関係による電力特定供給)の下で実現できるようになったシステムである。

このコジェネがあるということが、今回の4つの「次世代エネルギー・社会システム実証事業」のうちのひとつに選定された大きな点ともなっている。特定供給エリアであるため、ある程度、思い切った実証ができるというのも1つの特徴となっている(注:宇宙テーマパーク「スペースワールド」のように電力消費が大きいところは、九州電力からの供給となっている)。

〔2〕新日鉄で副生された水素で「北九州水素ステーション」を完成

一方、新日鉄では製鉄の生産過程で水素が副生(副次的な生成物)されており、その水素自体は新日鉄自身もエネルギー源として使用しているが、この水素を例えば燃料電池自動車のような民生の用途に利用できないかということから、福岡県が主導して日本で初めて、パイプライン方式の「北九州水素ステーション」が、平成21(2009)年9月に完成した。

現在、北九州市にも、この水素エネルギーを利用した燃料電池自動車(トヨタ製)が走っているが、後述するように、このほか、スズキが開発した燃料電池スクーター「e-Let’s」の実証が行われている。

図4に、水素エネルギーステーションで、水素ガスを充てんしている燃料電池自動車を、図5に、水素エネルギーステーションのパネル(岩谷産業製)を示す。また図6に、燃料電池自動車のボンネットに書かれた文字を示す。


図4 今回の取材に使用された水素エネルギーを利用した燃料電池自動車(トヨタ製)と水素エネルギーステーション(クリックで拡大)
図5 水素エネルギーステーションのパネル(岩谷産業製)(クリックで拡大)
図6 燃料電池ハイブリッド車の前面のボンネットに書かれているFCHV-adv」(Fuel Cell Hybrid Vehicle – advanced)の文字(クリックで拡大)

また、図7に、同じENEOSスタンドの敷地内に設置された、水素エネルギースタンドの隣に設置されている電気自動車(EV)用の急速充電スタンド、さらに図8に、太陽光発電(3kW)による電気自動車用充電スタンドを示す。


図7 水素エネルギースタンドの隣のENEOSに設置されている電気自動車(EV)用の急速充電スタンド(クリックで拡大)
図8 ENEOSの太陽光発電(3kW)による電気自動車用充電スタンド(クリックで拡大)

(注1)水素エネルギー:「水素」と「酸素」が反応した時に得られるエネルギー。>生成物は「水」だけであるため、利用段階で二酸化炭素(CO2)をまったく発生しないことから、地球温暖化対策として期待されている。

〔3〕再生可能エネルギーの導入状況

このほか、太陽光発電などの再生可能エネルギーを積極的に導入してきており、すでに太陽光発電では400kW程度、風力発電は7kW程度が設置されている。

例えば、スマートビルディングの「九州ヒューマンメディア創造センター」(図9)には10kWの太陽光発電(図10)のほか、3kWの風力発電(図11)が設置されており、同ビルディングのエネルギー管理には「BEMS」(ビルエネルギー管理システム)が導入される予定であり、太陽光発電、風力発電など発電量の見える化も実現されている(図12)。さらに、前述したように、スズキが開発した「燃料電池スクーター」(2輪車)の実証実験も行われている(図13)。


図9 九州ヒューマンメディア創造センターの入り口(クリックで拡大)
図10 九州ヒューマンメディア創造センターの太陽光発電:出力10kW(クリックで拡大)
図11 九州ヒューマンメディア創造センターの風力発電:出力3kW(クリックで拡大)
図12 九州ヒューマンメディア創造センターの再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電)の見える化(発電量表示パネル)(クリックで拡大)
図13 九州ヒューマンメディア創造センターで実証実験(2011年5月17日~2012年8月31日)が行われている、スズキが開発した「電気スクーター(e-Let’s)」。(クリックで拡大)

このほか、大きな太陽光発電は、北九州市の「いのちのたび博物館」(図14)に160kW(燃料電池100kW)、環境共生マンションに170kW(HEMSを設置)が設置されている。この環境共生マンションでは、高断熱や高気密化を行い、一般マンションに比べて30%以上のCO2削減を実現しているのが特徴である。また、市の環境ミュージアム(図15)には、5kW太陽光発電と3kwの風力発電を設置。さらに、図16に示すエコハウスでは、太陽熱利用の床暖房・蓄熱利用、太陽光発電などの再生可能エネルギーをはじめ、気密性、風の流れなどを工夫し、家庭におけるCO2排出量の大幅な削減を目指した実証実験が行われている。


図14 160kWの太陽電池が稼働している「いのちのたび博物館」(クリックで拡大)
図15 5kW太陽光発電と3kwの風力発電が設置されている環境ミュージアム(クリックで拡大)
図16 太陽熱利用の床暖房・蓄熱利用、太陽光発電などの再生可能エネルギーをはじめ、気密性、風の流れなどを工夫したエコハウス。見学者が後を絶たない。2階建て、建築面積約130m2(クリックで拡大)

≪2≫北九州スマートコミュニティ創造事業のプロフィール

以上、東田地区における低炭素社会に向けた先進的な取り組みや、東田コジェネから供給されている電力の特定供給の地域ということを紹介してきたが、このような実績を背景に、今回の経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業」として指定された4地域(横浜市・豊田市・けいはんな学研都市・北九州市)のうちのひとつに「北九州市」が選定(2010年4月)されるに至った。

「北九州スマートコミュニティ創造事業」(表1)は、北九州市のほかの一般的な街区に比べCO2を50%程度削減することを目指して、2010年からスタートした。

この実証実験は、北九州市の八幡東田地区(120ha)で、平成22(2010)年度~26(2014)年度の5年間に163億円を投じて行われる計画で、現時点(2011年11月末現在)で53の企業・団体が参加している。これまで、関連機器やシステムの開発が進められてきており、平成23(2011)年度にはこれらの機器やシステムは、八幡東田地区に設置され整備されることになっている。平成24(2012)年度からは、本格的に実証が開始される予定となっている。

表1 「北九州スマートコミュニティ創造事業」の内容 項 目内 容 事業名北九州スマートコミュニティ創造事業 実施主体北九州スマートコミュニティ創造協議会
〔北九州市、新日本製鐵(株)、日本アイ・ビー・エム(株)、富士電機(株)、(株)安川電機、(株)日鉄エレックスなどで構成〕 実施地区八幡東区東田地区(約120ha) 実施期間平成22(2010)年度~26(2014)年度(5年間) CO2削減目標市内標準街区と比較して、2014年までに2005年比50%減 事業数38事業 総事業費163億円(5年間) マスタープラン(詳細)北九州スマートコミュニティ創造協議会:平成22(2010)年8月作成 http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041577.pdf

前述したように、すでに八幡東田地区では東田コジェネによる電力供給などにより、ほかの地域に比べて約30%のCO2削減は達成されているので、今回の北九州スマートコミュニティ創造事業により、約20%上積みをして、50%削減を目標としている。


≪3≫北九州スマートコミュニティ創造事業の4つの柱

次に、北九州スマートコミュニティ創造事業で推進される、4つの大きな柱(取り組み)を紹介する。

〔1〕第1の柱:新エネルギー等10%街区

第1の柱として、東田地区を「新エネルギー等10%街区」とし、契約電力ベースで約2万kWの10%にあたる2,000kW程度を、再生可能エネルギーである太陽光発電・風力発電や水素(燃料電池)などを利用して実現していく(図17)。


図17 新エネルギー等10%街区:4つの新エネルギーで2,000kWを発電(クリックで拡大) 〔出所 http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041576.pdf〕
〔2〕第2の柱:街区まるごとの省エネシステムの導入

また八幡東田地区には、住宅をはじめオフィス、病院、工場、商業施設など、いろいろな施設がある。それぞれに対応した省エネシステム開発が進められており、今後、順次導入が予定されている。

これらの省エネシステムを後述する「地域節電所」と連携させることで、個々の施設(スマートハウスやスマートビルなど)のエネルギー利用の最適化のみならず、街全体のエネルギー利用の最適化を両立させることが可能となる。

〔3〕第3の柱:地域エネルギーマネジメントシステム(地域節電所)の構築

このプロジェクトの中心(心臓部)になるのが前述した地域節電所であり、具体的には図18に示す地域エネルギーマネジメントシステム(一般にCEMS:Community Energy Management Systemともいわれる)の構築である。

この地域節電所(CEMS)は、図18に示すように、基本的に、

①インターネット網(双方向通信網)と
②送電線網(電力網)を

連携させ、地域全体のエネルギーの最小化を目指す、北九州スマートコミュニティ創造事業の心臓部である。

すなわち、地域節電所(CEMS)は、インターネットを利用して、スマートメータが導入されたいろいろな施設(スマートハウス等)や発電設備(太陽光発電等)から情報を収集し、地域のエネルギーの使用状況を把握しながら、より効率的にエネルギーを使えるようなシステムを目指している。


図18 地域エネルギーマネジメントシステム(地域節電所:CEMS)の構築(クリックで拡大) 〔出所 http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041576.pdf〕

(1)2つの電力の有効活用

この北九州スマートコミュニティ創造事業が行われる八幡東田地区における電力は、前述したように、九州電力からの電力は一切使用せず「東田コジェネ」(新日鉄)を基幹電力とし、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー等による電力(分散電源)の2つが利用される。

すなわち、安定的に供給される基幹電力と、再生可能エネルギーによる不安定な太陽光発電等による電力(分散電源)の両方がある環境で、不安定な太陽光発電の供給能力を予測しながら、地域節電所(CEMS)で電力情報を管理し、電力が余りそうなときは利用者(家庭や企業)に「使ってください」、足りないときは利用者に「ちょっと抑えてください」というような情報を流し、電力を有効に活用する。

(2)ダイナミックプライシングの導入

また、地域のエネルギー需給状況に応じて電力料金を変動させる「ダイナミックプライシング」制度を導入し、「電気が余っているときは、料金を安くし、逆のときは料金を高くする」というように、地域節電所(CEMS)から需要家(利用者)に情報を提供し、それに応じて需要家のほうで電力の利用を制御してもらう。これは手動の場合もあるが、今後、ビルにBEMS、家庭にHEMSなどが設置されれば、送られた情報に応じて自動的に、家電機器や空調関係機器などを制御することが可能となること、などを実証していく。

このダイナミックプライシングについては、現在、具体的にどのような料金体系にするか、いくつかシミュレーションしながら検討されている。

例えば、

①基本的な「ベーシックプライシング」の場合は、その年の初めに、「朝、昼、晩」の基本的な料金を決める。
②また、前日または当日朝などに、天候の予測やその日の電力需要の予測などを勘案し、本日の電気料金は「いくらにしますよ」というような情報を需要家に流す。
③さらに、かなり急な状況の変化によって需給が逼迫(ひっぱく)し、需給の状況が大分大きく変化したときときには、さらに3時間前ぐらいに、「リアルタイムプライシング」を設定し、料金を変える

というように、3パターンぐらいで電気料金を変えていくというようなことが考えられている。

〔4〕第4の柱:次世代交通システム

今回の北九州スマートコミュニティ創造事業は、このようなスマートグリッドやエネルギー管理などの実証が主ではあるが、図19に示すように、まちづくりの事業として、次世代交通システムによる地域社会づくりも重視されている。


図19 次世代交通システムによる地域社会づくり(クリックで拡大) 〔出所 http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000041576.pdf〕

すなわち、EV(電気自動車)やpHV(プラグインハイブリッド車)の導入はもとより、公共交通機関と連結するようなコミュニティ交通の導入、また地域内の移動には従来のような4人乗りの自動車ではなく、例えばセグウェイのような小型の移動体を普及させ、そのような省エネ車で地域の中は移動して、なるべくエネルギーを使わないようにする。同時に「東田グリーングリッドの構築」を目指して、まちの緑化を推進し、暮らして気持ちのよいまちづくりも推進されている。

        ☆    ☆    ☆    ☆        

以上、北九州市の八幡東田地区における、北九州スマートコミュニティ創造事業に向けた現在の状況、および、これから本格化するこのプロジェクトの中心となる「地域節電所」(CEMS)の構想などを見てきた。このHEMSやBEMSとの連携によって実現するCEMS(地域エネルギー管理システム)を核にした新しい視点の「地域節電所構想」は、最小エネルギーを目指す「まちづくり」を実現するに大きな期待が寄せられている。

この実証実験が、きめ細かい「日本版スマートグリッド」「日本版スマートコミュニティ」のモデルとなり、東日本大震災の復興のみならず、電力・エネルギー危機を迎えている欧米諸国や、新しく台頭しているアジア、アフリカなどの新興諸国のエネルギー問題の解決に向け、国際的にも役立てられるよう、そのプロジェクトの成功を期待したい。


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スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


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スマートグリッドシリーズ第3弾
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執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
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本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。


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スマートグリッドシリーズ第2弾
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執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
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〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


新菱冷熱工業がスマートグリッド用新プロトコル『IEEE 1888』で世界初の「広域多棟システム」を構築=本社ビル/中央研究所/第7新菱ビルの3棟を相互接続=

水, 2011-11-30 12:39

写真1 新菱冷熱工業・本社ビル(東京・四谷)
写真2 本社ビルの」受付とエコパネル(左)
写真3 時間とともに表示が変化するエコパネル。現在は各フロアの温度が中心に表示。この他、各フロアの電力使用量なども表示される。下段にはニュースが流されている。

電力・エネルギー危機を背景に、スマートグリッドが注目を集めているが、建築設備のうち、とくに、空調設備業界においてリーディングカンパニーとして活躍している新菱冷熱工業(株)は、民間企業のシステムとしては世界で初めて、スマートグリッド用プロトコル「IEEE1888」を用いて、複数の建物を統合した次世代オープン化システム「広域多棟エネルギー管理システム」を構築し注目を集めている。同社の新菱冷熱工業本社ビル(東京・四谷)、新菱冷熱工業/中央研究所(茨城県・つくば)、第7新菱ビル(東京・四谷)の3つのビルを相互接続し、2011年10月にIEEE 1888を利用したシステムの構築を完了。同システムの運用(実証実験)を開始した。

≪1≫ビルのエネルギー管理システム(BEMS)が求められる背景

最初に、新菱冷熱工業(表1)が、「広域多棟エネルギー管理システム」を構築した背景を説明しよう。

スマートグリッド時代を迎えて、家庭やオフィスにおける省エネ・節電など電力の効率的な利用が求められているが、最近では家庭のHEMS(Home Energy Management System)とともに、ビルのエネルギー管理システム(BEMS:Building Energy Management System)にも注目が集まっている。

表1 新菱冷熱工業のプロフィール 項 目内 容 社名新菱冷熱工業株式会社(Shinryo Corporation) 資本金35億円 本社所在地東京都新宿区四谷2丁目4番地
電話:03-3357-2151(大代表) 代表者取締役社長 志田 均 従業員数1,920人 売上高166,428百万円(平成22年9月期) 営業種目空気調和設備工事、給排水衛生設備工事、地域冷暖房設備工事
燃料エネルギー設備工事、情報管理システム工事、防災設備工事
電気設備工事、環境衛生設備工事、廃棄物空気輸送設備工事
水族館設備等特殊設備工事 他 主なグループ会社新菱工業、秋田キャッスルホテル、関東冷機、菱栄工業、エス・シー・エンジニアリング、レモン、城口研究所、大栄電気、東京ビルウォッチング、大阪ビルウォッチング、インフロント、美光写苑

ビルのエネルギー管理(省エネ)に関する社会的背景をみると、図1に示すように、中東情勢やギリシャをはじめとするユーロ危機の国際的な経済不安が高まる一方、地球温暖化対策に向けた国際的なCO2削減への対応も重要な課題となってきている。日本国内では改正省エネ法の施行をはじめとする新しいエネルギー施策が打ち出され、とくに、2011年に関しては東日本大震災という大災害が発生、それによる電力不足への緊急対応に迫られる事態を迎えた。このため、ビルや各種施設のオーナーには、省エネあるいはエネルギー管理への取り組みがいっそう強く求められる時代を迎えている。


図1 ビルのエネルギー管理(省エネ)に関する社会的背景(クリックで拡大)

竹之内 元氏
(新菱冷熱工業 執行役員
 中央研究所所長)

記者会見において、新菱冷熱工業 執行役員 中央研究所所長 竹之内 元氏は、

「このようなエネルギー危機・省エネが叫ばれる状況の中で、既存のBA(ビルディングオートメーション)システムの場合は、メーカー主導のシステムと運用になっています。すなわち、メーカーの独自技術によるクローズドシステムである場所も多く、ビルのオーナー側からみますと、システム選択の自由度が少ないというのが現状です。また、同じビルの中のシステムでも、異なるメーカーのいろいろ異なるプロトコルなどを使用したサブシステム(個々の独立したシステム)が混在している状況です。このため、系統別のサブシステムを統合することが難しい状況となっているのです。」

と述べ、現状のクローズドなビルのエネルギー管理システム環境に対して、オープンなシステム環境の必要性をアピールした。

これに加えて、現状のシステムでは、BA(ビルディングオートメーション)に特化した専門性の高い通信プロトコルを使用しているため、業務システム(OA)やインターネットサービスと連携する応用システムを開発することが困難であるという場合もある。また、すでにBEMS(ビルエネルギー管理システム)が導入されているビルにおいても、専門性が高いアプリケーションのため、ユーザーにとってその機能を十分に活用されていない状況となっている。


≪2≫新しスマートグリッド向けプロトコル「IEEE 1888」(FIAP)の選択 〔1〕東大グリーンICTプロジェクトへの参加

そのような現状の中で、新菱冷熱工業は、産学連携のプロジェクト「東大グリーンICTプロジェクト」(代表:東京大学大学院 教授 江崎 浩氏)に参加し、そのメンバーとして参加し活動してきた。

この「東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)」では、

(1)BA(ビルディングオートメーション)システムの設計・運用の改革(メーカー主導からオーナー主導へ)
(2)メーカー・系統別プロトコルロックイン(注1)からの解放
(3)設備データベースの利用可能性の拡大

などを目標に、Webサービス(注2)を基本とするオープン通信プロトコル「FIAP(フィアップ。Facility Information Access Protocol。注3)」が策定され、その後、このFIAPはIEEE 1888(正式名:IEEE1888-2011)として、国際標準化された。

(注1)プロトコルロックイン:特定の独自プロトコルによる製品、システム等を採用した際に、他のプロトコルによる同種の製品、システム等への乗り換えが困難になること。
(注2)Webサービス:インターネット通信技術を応用して、XML形式のプロトコルを用いコンピュータ同士でメッセージの送受信を行う技術、またはそれを適用したサービス。
(注3)FIAP(=IEEE1888-2011):スマートグリッド向けアプリケーションプロトコル。FIAPで構築されるシステムは、①ゲートウェイ(相互接続装置)、②ストレージ(データ蓄積装置)、③アプリケーションから構成され、これらの間をHTTPベースで通信する。HTTP(HyperText Transfer Protocol)とは、WebブラウザとWebサーバの間でデータを送受信するためのプロトコル。FIAPは、2011年2月にIEEE P1888ワーキンググループで標準化されたため、正式には「IEEE1888-2011」と呼ばれる。

この東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)は、東京大学の本郷キャンパス工学部2号館において既存のサブシステムを統合し各種設備データを収集・蓄積して、エネルギーの見える化をはじめとする、アカデミズムの分野では世界で初めて、複数の東大キャンパスを統合した広域多棟エネルギー管理システムを構築した。FIAPは、平成23(2011)年2月、国際標準規格「IEEE1888」に認定された。このGUTPには、現在65組織(45企業、20団体、2011年10月)が加盟している。

このような活動を通して、新菱冷熱工業では、FIAP(=IEEE1888)プロトコルを選択し、今回、実証実験を開始することになったのである。

〔2〕新菱冷熱工業の取り組み:「sc-brain」「SEMS」「SC-Eyes」

それでは、新菱冷熱自身はこれまで、どのような取り組みを展開してきたのだろうか。新菱冷熱工業では、エネルギー管理に関して、

①中央監視システム「sc-brain」
②エネルギー管理サービス「SEMS」
③エネルギーデータ解析ツール「SC-Eyes」

を中心に取り組み、それらを市場に提供してきた。

次にこれらのシステム/サービスを簡単に紹介しよう。

(1)sc-brain(中央監視システム)

まず、新菱冷熱工業はこれまで、図2に示すような、ビルや地域冷暖房プラントの中央監視システムとして「sc-brain」を開発し提供している。


図2 中央監視システム「sc-brain」(クリックで拡大)

このsc-brainは、もともと地域冷暖房施設の中央監視システムとして開発されており、「CEMS」(Community Energy Management System:地域エネルギー管理システム)に近い機能を備えたシステムなっている。すなわち、sc-brainはCEMSを先取りしたシステムであり、すでに東京・丸の内エリア、新宿エリア、池袋エリア、横浜エリアなどに導入されている。

この「中央監視システム」(sc-brain)は、図2に示すように、

①機器の効率管理やデータ分析を支援する「エネルギー管理システム」
②設備機器の運転をサポートする「運転支援システム」
③日常の現場業務から中長期計画まで統合的な保全業務管理を支援する「ファシリティマネージメント(FM)システム」(設備管理システム)

などの機能を備えている。

(2)SEMS(エネルギー管理サービス)

また、新菱冷熱工業では、図3に示すように、前述したsc-brainと連携させた、地域的なエネルギー管理サービス「SEMS」(Shinryo Energy Management Service)を提供している。このサービスは、顧客(オフィスビル、学校、病院、ホテル、工場等)の現状設備のエネルギーデータをSEMSセンターに収集してエネルギー消費の見える化や、データ分析に基づく性能評価を行い、最適な省エネルギープランを顧客に提案するサービスである。


図3 エネルギー管理サービス「SEMS」(クリックで拡大)

(3)SC-Eyes(エネルギーデータ解析ツール)

さらに、図4に示すように、新菱冷熱工業は、エネルギーデータ解析ツール「SC-Eyes」を開発。中央監視データから簡単操作で標準的なグラフや帳票などを作成し、運用状況の評価ができるとともに、評価結果の分析によってエネルギー利用の改善策を検討することができるツールとなっている。


図4 エネルギーデータ解析ツール「SC-Eyes」(クリックで拡大)

新菱冷熱では、以上のような市場を先取りした、独自の広域的なエネルギー管理システムを開発してきた。

〔3〕スマートエコオフィスコントローラによる省エネと快適性の両立

こうした取り組みに加えて、2009年11月、社内に「新菱冷熱自社ビル省エネeco化プロジェクト」を発足させ、『東京・四谷をタスマニアに』(タスマニア:世界で一番空気がきれいと言われているオーストラリアのタスマニア島)というキャッチフレーズのもと、同社の本社ビル(築40年経過)を、同社の最先端の省エネ技術を駆使してリニューアルし、2011年9月末に竣工。省エネ率32%、CASBEE(注4)の改修Sクラスを取得することに成功した。

省エネ率32%については、具体的に、次のような施策によって達成されている。

(1)高効率空冷ターボ冷凍機およびガスコージェネレーションシステムの採用
(2)自然エネルギーの利用
  ・太陽熱を冷暖房に利用するソーラークーリングシステム
  ・太陽光発電(約8kW)
  ・外気冷房、フリークーリングシステム
(3)断熱性能向上、および壁面緑化による建物負荷の削減
(4)除湿・冷却分離空調システムによる快適性と省エネ性の両立
(5)床吹出し空調方式およびスパン毎空調制御の採用
(6)人感センサーと各コントローラー情報を用いたスパン毎の空調・照明制御
(7)エネルギーの見える化

など、総合的な省エネ対策が行われている。

さらに、この改修後の本社オフィスでは、図5に示す「スマートエコオフィスコントローラ」によって、自席のパソコンからエネルギーを見える化し、省エネを啓蒙するとともに、「従業員(在室者)からの空調の温度や照明の明るさなどの申請機能」によって、快適性と省エネを両立させるなど、新しい試みも行われている。


図5 スマートエコオフィスコントローラによる省エネと快適性の両立(クリックで拡大)
(注4)CASBEE:Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency、建築環境総合性能評価システム。建築物の環境性能で評価し格付けする手法。①建築物のライフサイクルを通じた評価ができる、②「建築物の環境品質(Q)」と「建築物の環境負荷(L)」の両側面から評価する、③「環境効率」の考え方を用いた評価指標「BEE(建築物の環境性能効率、Built Environment Efficiency)」で評価する、という3つの理念に基づいて開発されている。「Sランク(素晴らしい)」から、「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」という5段階のランキングが与えられる。

図6に、スマートエコオフィスコントローラによって見える化された、パソコンの画面の例を示す。この画面には、現在の作業フロアの温湿度や照度といった情報が表示されるとともに、各種のナビゲーションが表示される。例えば、図6の左下側は、各フロア、スパン(空調エリア)のエネルギーの使用量を、見える化している円グラフである。図6の右下側には、同社は空調工事をメーン・ビジネスとしていることもあり、空調の快適性の指標を表示している。


図6 スマートエコオフィスコントローラのパソコンの画面の例(クリックで拡大)

具体的には、各フロアの居住者からの申請によって、図6の右上に示すように、空調に関しては「暖かく・涼しく」、照明に関しては「明るく・暗く」といった感覚的な操作で申請を行う仕組みとなっている。また、エネルギーのさらに詳細なデータを表示する機能も備えている。


≪3≫IEEE 1888による民間企業で世界初の広域多棟エネルギー管理システム

次に、新菱冷熱工業が今回の本社改修に合わせて、前述した既存のBAシステムの問題点をいかに解決して、新しいエネルギー管理システムを構築したかを見てみよう。

この新しいシステムは、

①メーカー主導からオーナー主導とする
②異なるメーカーのサブシステム(個別システム)を統合する
③複数のビルや施設、地域を一元管理する
④トータルなエネルギーのマネジメントが可能

というシステムを目指して構築された。


阿部 靖則氏
(新菱冷熱工業 執行役員、
計装エンジニアリング事業部 事業部長)

具体的には、図7に示すように、新しく国際標準化されたオープンなスマートグリッド向けプロトコル「IEEE 1888」を採用した、民間企業では世界初の「広域多棟エネルギー管理システム」となっている。

新菱冷熱工業 執行役員、計装エンジニアリング事業部 事業部長、阿部 靖則氏は、

「当社の計装エンジニアリング事業部では、本日発表させていただいた『IEEE 1888による広域多棟エネルギー管理システム』のように、オープン化ということを大きな1つの柱にして事業をどんどん展開していきたい。その第1号として、まず、自分たちで自社内にこのようなオープンなシステムをつくって、まず自分たちで使って、実証を開始したところです。」

と、今後のビジネス戦略の抱負を語った。

図7は、東京・四谷にある新菱冷熱本社ビルを中心として、本社近くの東京・四谷にある第7新菱ビルと茨城県つくば市にある同社の中央研究所の3つの拠点(広域的な多棟)をインターネット(VPN)で相互接続している。


図7 IEEE1888による広域エネルギー管理システム構成図(クリックで拡大)

この図7に示すシステムは、基本的に次のように動作する。

(1)各拠点(本社・中央研究所・第7新菱ビル)のXML化された設備データは、
(2)すべて本社ビルに設置されたIEEE 1888アプリケーションゲートウェイを介して収集し、本社ビルのFIAP(=IEEE 1888)ストレージ(注5)に蓄積される〔(株)ユビテック製〕。
(3)このストレージには、3拠点から1分ごとに、2500ポイントからのデータ(電力使用量や温度・照明他のデータ)が収集される。
(4)本社ビルおよびつくばの中央研究所にはsc-brainが設置されており、sc-brainのBACnet/WS(Web Service)インタフェースによって空調や照明、センサーのデータが吸い上げられる。さらに、中央研究所には、簡易的なBEMSを想定したoBIX(注6)サーバを設置し、そのサーバ下にoBIXコントローラをつけて、執務室がある研究所本館のエネルギーデータを収集している〔(株)ディー・エス・アイ製〕。oBIXとは、XML(注7)の標準化団体であるOASIS(注8)が策定した設備向けのオープンプロトコルで、これによって、既存設備との通信が可能となった。
(5)さらに、図7の右に示す第7新菱ビルでは、中小規模のビルを想定して、BACnet/WS(注9)コントローラーという小型のコントローラー〔写真6:アイテック阪急阪神(株)製〕を設置し、エネルギーのデータを収集している。

(注5)FIAP(=IEEE 1888)ストレージ:FIAPで構築されるシステムの構成要素である、データ蓄積装置のこと。
(注6)oBIX:Open Building Information Exchangeの略。OASISで策定されたBAとOAを接続するためのXML形式の通信プロトコル。
(注7)XML:Extensible Markup Language、「拡張可能なマークアップ言語」の意味で、インターネットで使用されるデータフォーマットの一つ。
(注8)OASIS:Organization for the Advancement of Structured Information Standardsの略。XMLに関連するオープンな標準技術の普及促進活動を行う非営利団体。
(注9)BACnet/WS:Webサービス技術と設備システムとの整合性を高めるためにASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)で標準化されたXML形式の通信プロトコル。
写真6 第7新菱ビル(東京・四谷)に設置されたBACnet/WSコントローラー〔アイテック阪急阪神(株)製〕(クリックで拡大)

これらのエネルギーデータは、すべて図7に示す本社のFIAP(=IEEE 1888)ストレージに蓄積されるが、この蓄積されたデータは分析処理などが行われ、図7の右上に示すパソコン、あるいはスマートフォンなどのブラウザの画面でデータを見ることができる。さらに、パソコンやスマートフォンなどから、設備機器のオン・オフ(稼働・停止)などの制御を行うことも可能となっている。


≪4≫IEEE 1888を利用したシステムを導入する最大のメリット

今回導入されたIEEE 1888を利用したシステムによってもたらされるメリットとしては、次のようなことが挙げられる(図8)。

(1)これまでのようなメーカー主導型のシステム運用からオーナー主導型のシステム運用にすることが可能となり、オーナー主導によって機器の選定やシステムの構築・運用が可能となるため、設備のライフサイクルコストがかなり削減できる。
(2)前述したsc-brainによって、エネルギー管理に加え、設備運転支援やファシリティマネジメント(設備管理)などの機能を導入することができる。
(3)エネルギーの見える化や設備の運転制御などによる省エネルギー管理を、広域にわたる複数拠点に渡って実現できる。
(4)OAシステムやインターネットサービスとの連携などによって、収集した設備関連データの2次利用が可能となる。例えば、今年の6月にISOからリリースされたエネルギーマネジメントシステム「ISO50001」(注10)において、この設備データを利用するというような2次利用が簡単に行うことができるというメリットがある。

(注10)ISO50001:ISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)が2011年6月に発行した「エネルギーマネージメントシステム(EnMS:Energy Management System)規格」。エネルギー管理システムによって、エネルギー効率などの改善することを目的として策定された規格。具体的には、エネルギー効率の向上、エネルギーコストの削減、温室効果ガスの排出量削減などを実現させることを目的としている。
図8 IEEE 1888システムによってもたらされるメリット(クリックで拡大)

≪5≫今後は、エネルギーに対するリスクマネジメントが重要

記者会見にかけつけた「東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)」代表の江崎浩氏(東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授)は、今回の新菱冷熱工業のIEEE 1888を利用したシステムについて、次のようにコメントした。


江崎 浩氏
(GUTP代表。東京大学大学院
 情報理工学系研究科 教授)

「今回構築された新菱冷熱工業のシステムのように、民間企業でIEEE 1888を用いて、3つのオフィスを統合して管理するという形態は、まさに我々の中でも初めてのことですし、世界でもこのような事例はありません。

とくに、今までのいわゆるデファクトスタンダードだったASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)のBACnet/WSと、LonWorks関連のoBIXをしっかりと取り込みながら広域管理をしているという意味においては、極めて現実的なシステムになっています。お客様、つまりユーザーサイドからすれば、安心して現在のシステムから新しいシステムに移行でき、また、スムーズに導入できるということが実際に体感できるようになっています。

もう1つ、今日はどちらかというと省エネという方向性でお話をいただきましたが、実は多棟管理が可能となっていることは、実際に新菱冷熱工業さんの3つの拠点の建物に関して、エネルギーのリスクマネジメントができる基盤になっていること、でもあるのです。とくに東日本大震災を受けた実感として、今後どのようにBCP(事業継続計画)をしっかりつくっていくか、ここに、企業としての重要性が増してきていると思います。

そういう意味で言うと、新菱冷熱工業の志田社長さんご自身が、このシステムに大変ご興味をお持ちで、社長さんご自身がスマートフォンでこのシステムにぜひアクセスしたいとおっしゃっていた。このことは、マネジャーとして会社がどういう状況で動いているのかを、リアルタイムにしっかりと把握をしたいというお気持ちの表れだと思います。それが、多分、3.11(東日本大震災)を受けてさらに強くなってきているのだと思います。エネルギーが途絶えると産業活動がほんとうに止まってしまいます。そこで今後は、省エネとともに、エネルギーへのリスクマネジメントということを、企業としてどう考えるかという方向に、力点が動いていくことになります。

そうすると、先ほどお話のあった、設備データの2次利用というキーワードはものすごく重要で、今後どのように、2次利用してエネルギーへのリスクマネジメントに生かしていくかが大事になってくると思います。そのときに、私自身が個人的に期待しているのは、『企業の意思決定をされる方』が、このような情報をごらんになる方向になってきていることです。そうすると、会社の各建物ごとにどういうリスクを負っているのか、インシデント(重大な事象)に対してどのように対応するか、そのような判断は、リアルタイムに問われるようになってきます。

このとき、新システムの中に、設備データがデータベースとして残っていてしっかりと解析ができるということが、新菱冷熱工業のお客さんに対してたいへん説得力のあるご経験になっていくのではないかと思います。また、新菱冷熱工業さんご自身がマルチベンダーの環境でシステムを構築する、すなわち、自分の技術で顧客を囲い込もうとするのではなく、オープンな方向に『かじをお切りになった』ということに大きな意味があると思います。」


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半導体産業を通してスマートグリッド関連ビジネスを推進している企業だけでなく、新しい家電機器をはじめ、電気自動車やスマートハウス関連の新ビジネスを推進する企業の、今後の戦略的な参考資料としての一冊となっています。


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スマートグリッドシリーズ第4弾
世界のスマートグリッド政策と標準化動向2011
[実用期に入ったNIST/IEC/IETF/IEEEの全仕様とサイバーセキュリティ]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartGrid2011

執筆者:新井宏征/名和利男/湧川隆次
ページ数:328P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


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スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
http://r.impressrd.jp/iil/SmartMeter2011

執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。


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スマートグリッドシリーズ第2弾
日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010
[Smart Energy Profile 2.0によるスマートグリッドの新展開]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2010

執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!<第5回(最終回)>=SMB SG3(スマートグリッド担当)が目指すもの=

月, 2011-11-28 10:16

スマートハウスからスマートコミュニティへと進展をみせるスマートグリッドの世界は、電力・エネルギー危機を背景に、新しいビジネスを求めて、日本を含むアジアや、米国、欧州においても、活発な展開を見せている。ここでは、スマートグリッドの国際標準化を推進しているIEC(国際電気標準会議)/SMB(標準管理評議会)のSG3(スマートグリッド担当)の日本代表である、九州大学大学院 電気システム工学部門の合田忠弘(ごうだただひろ)教授に、スマートグリッドについて国際標準化の動向や、世界各国の取り組みをお聞きした。また、合田教授がマイクログリッドやスマートグリッドに取り組んだ動機をはじめ、IECとNISTやIEEEなど他の標準化団体との連携や、スマートグリッドが拓く新しいビジネスモデル等もお聞きした。

第5回(最終回):日本が目指すべきスマートグリッドの方向性

≪1≫注目される「発電と送電」の分離問題

■ 前回(第4回)の「電力(エネルギー)供給システムの新しいコンセプト」のお話は、スマートグリッド時代の電力システムのとらえ方として、たいへん新鮮で、説得力もありよく整理できました。ところで、最近、日本の発送配(発電・送電・配電)一貫体制について異論がでていて、「発電」と「送電」の分離問題が話題となっています。米国などでも分離されていることもあって関心も高いのですが、日本としては、この辺をどのように考えたらよろしいのでしょうか。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 はい。この問題は一長一短がありまして、私は、どちらかというと、現在の一貫体制がよいと思っています。1995年以来の電気事業法の改正に伴って、現在日本には、10電力会社や卸電気事業者(例:J-Power)以外に、例えば、

(1)一般家庭には供給しないで10電力会社に電気を卸す合計200 万kW 超の発電設備をもつ電気事業者として「IPP」(独立系発電事業者)や、
(2)また、契約電力50kW以上の需要家に対して、一般電気事業者(10電力会社)の送電線を利用して小売を行う「PPS」(特定規模電気事業者)他、

などの事業者が電気事業法で定められ営業を行っています(注1)。

(注1)IPP:IPPIndependent Power Producer、独立系発電事業者。例:住友共同電力など数社。
PPS:Power Producer and Supplier、特定規模電気事業者。特別高圧・高圧受電による契約電力50kW以上の需要家に対して、一般電気事業者(10電力会社)の送電線を利用して小売を行う事業者。例:ダイヤモンドパワー、NTTグループのエネット他、40社以上

■ なるほど。規制緩和され、それなりに電力が自由化されているということですね。

合田 そうなのです。さらに電力取引所を開設されていますので、現状の仕組みを有効に機能させれば必ずしも水平分割(例:発電・送電の分離など)をしなくても、現在の電力供給体制で安全な電気を安心して安定的に供給できると思っています。

現在の一貫体制を水平分割したときに、末端の需要家に対して、平常時のみならず事故直後の緊急時や復旧時にも電力を安定して供給できるような仕組みができるのかどうか、あるいは将来を見越しても、きちんと供給できる体制を確立できるのかどうかを検討する余地はあります。このことは既に結論が出ているのですが、今回の大震災みあいで見直すということです。ただし、震災後8カ月を経過しても復旧の目途がたたない東北地方の鉄道のような状況にはならないようにする必要はあると思います。

電力供給体制は各国の事情にあったものにすべきで、外国の体制をそのまま導入すれば良いものではありません。例えば、米国の場合、日本と違うのは、発電所をつくるにしてもガスのパイプラインなどがきちんと整備をされているうえに、水量が豊かで流れのゆるやかな河川があり、どこでも非常に短期間に発電所を建設できたりするのです。ところが日本の場合は、なかなかそう環境になっていない。ですから、電力の需要が逼迫してきたからといって、すぐに発電所を建設することはできないのです。このような状況を考慮しますと、どちらがいいのかということを、もっともっと考えていくべきだろうと思います。


≪2≫なぜ、米国で「デマンドレスポンス」が重視されるのか

■ なるほど。国情の違いやエネルギーに関する環境の違いは重要な要素ですね。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 また、米国がなぜ、スマートグリッドによって、電力ネットワークを強化しようと言い出したかというと、米国では基本的に需要に対して発電量が足らないのです。ですから米国では、デマンドレスポンス(注2)が非常に重視されています。また、東日本大震災直後に、日本では計画停電がありましたが、米国ではこれを「ブラウンアウト」〔Brownout、計画停電。通常の停電はブラックアウト(Blackout)という〕といいまして、日本よりもっと多発しているのです。

(注2) デマンドレスポンス:Demand Response(DR)、需要家(電力の消費者:一般家庭等)側での電力消費を調整するように促すことによって、電力会社側の負荷を軽減し、最適な電力の需給バランスをとること。例えば、ピーク時に需要家の電力消費の抑制を促す(例:冷房の温度を2度上げてもらう)ことなどがこれに相当する。

■ 「ブラウンアウト」とは、聞きなれない言葉ですね。

合田 ブラウンアウト(Brownout)というのは、「計画停電のこと」ですから、通常の停電(ブラックアウト)とは違います。このブラウンという意味は、いきなりすべてを停電させるのではなく、「一部を停電させて、順次、輪番に停電させていく」ことです。ですから、全体から見ると「ブラックではなく、またホワイトでもない」ので、「ブラウン」というのです。米国ではこの「ブラウンアウト」というのがあって、ずっと前から実施されています。また、ブラウンという意味には、停電させるだけではなくて、供給電圧を下げて消費電力を減少し需給のバランスをとるという意味もあります。例えば、電圧を下げて若干照明は暗くしても、電力供給は続ける方法です。

■ 「ブラウンアウト」(計画停電)と「ブラックアウト」(停電)の違いがよくわかりました。

合田 このように、米国では電力の供給が足らない場合に、従来は、このような対策で解決してきたのです。これに対し、スマートグリッドでは、前述した「デマンドレスポンス」という考え方を導入し、例えば、協力してくれた家庭に対して、電力料金などを安くする(料金対応)などのインセンティブを与えることによって、安定した電力を供給すること、などが考えられているのです。

米国の場合はこのような考えであるため、日本のように「需要家に対して、垂直一貫体制で電力会社が絶対的な供給責任をもつ」、ということとはかなり異なっています。ですから、電力システムの在り方について、どちらがいいかというのは、各国でよく考えなければならないことだと思います。

■ なるほど。

合田 日本も、昭和の初期には650社ぐらいの電力会社がありました。戦後(第2次大戦後)、日本の電力エネルギーをどうするかということが検討され、電力9社体制になり、その後沖縄電力を入れて10社体制というのをつくり、今日まで、10電力会社が地域独占をしてきたわけです。

その体制は、戦後の高度成長期にはたいへんよい体制だったと思います。しかし、高度成長期も過ぎた現在、今後もその体制のままでよいのかどうかということは、現時点で、もう一度見直す必要があると思います。そのため、今後、日本として何を目指すのかというところを、きちんと議論すべきで、別に米国がやっているからとか、英国がやっているからとかということでなくて、日本としてとことん議論したうえで、日本の取るべき道を決めるべきだと思います。


≪3≫国内のプロジェクトの推進と国際的な展開

■ ありがとうございました。ところで、現在、日本の経済産業省は、国内でいろいろ予算つけてスマートグリッドのプロジェクトをスタートさせ、NEDOは米国のニューメキシコ州をはじめ、国際的な協力を積極的に展開しています。その辺の日本の活動をどのように見ておられますか。

合田 はい。これは、2つの視点から見ていく必要があると思います。1つは国内向の側面でスマートグリッドという次世代電力ネットワークを実現するために、いろいろなプロジェクトでの実証実験を通してメリットやデメリットを明確にし、スマートグリッドのイメージをつくり上げてそれを一般の人々に理解をしてもらうことが非常に大事なことと思います。

一方、海外向のプロジェクトに協力するということは、海外ビジネスを展開することが目的ですから、実証実験などを通して日本の技術を海外に展開し、理解してもらうことは非常に大事なことだと思います。

■ はい、そう思います。

合田 ところが、実証実験の方法については、各国によってその方法が違います。その具体例として、日本国内のプロジェクトの実証実験のやり方と、韓国のプロジェクトの実証実験の方法について、その違いを見てみましょう。

図1は、韓国のスマートグリッドの取り組みと、今、済州島(チェジュトウ)でやっている実証実験の内容を示しています。

■ まず、2013年までに済州島のすべてをスマートグリッド化してしまう計画ですね。


図1 韓国のスマートグリッドの取り組みと、済州島(チェジュトウ)における実証実験の内容(クリックで拡大)

合田 はいそうです。また、図2は、韓国の知識経済部という、日本の経済産業省に相当するところが出している「韓国のスマートグリッド戦略」の中の記述です。この中で注目されるのは、済州島(チェジュトウ)の実証実験は、スマートグリッドの実用化はもちろんのこと、最初から輸出産業化を目指すと、明確に位置付けられているところが、日本と違うところです。しかも、世界のスマートグリッド市場の30%を獲得することを目標としています。


図2 韓国のスマートグリッド戦略(クリックで拡大)

ですから、韓国は、企業を主体にして、まずスマートグリッド関係の完成品技術を開発し、同時にその技術の国際標準化をはかるという方向で動いているのです。このような戦略目標から、予算がかなりかかることを考慮して、従来2カ所でやっていたスマートグリッドプロジェクトを済州島の1カ所に絞ったのです。この韓国におけるスマートグリッドプロジェクトの事業分野と事業目的は、図3に示すように、5つの事業分野と事業目的をもって推進されています。


図3 韓国におけるスマートグリッドの構成要素(事業分野と事業目的)(クリックで拡大)

■ なるほど。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 しかし、日本はそうではなくて、前回(第4回)お話ししたように、韓国とほぼ同じ時期に4カ所(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)で実証実験が開始されています。そこで、私は、韓国の1カ所集中方式と、日本の4カ所分散方式の、どちらのスタイルのプロジェクトが成功するか。すなわち、このプロジェクトが終わった後に、日本と韓国のどちらのスマートグリッド製品が国際市場で売れていくか、ということに注目しています。

■ 合田先生としては、日本と韓国のプロジェクトの進め方をどのように見ておられますか。

合田 両者は、一長一短あると思いますが、私は、一本化した韓国も結構いい成果を上げるのではないかと思っています。ただ、日本はすでに海外に出て実証実験をやっていますので、その経験をうまく日本の海外ビジネスにつなげられると期待しています。


≪4≫日本が目指すべきスマートグリッドの方向性

■ 今後、日本が目指すべきスマートグリッドの方向性について、標準化も含めて、合田先生が考えておられることをお話しいただけますか。

合田 先ほど申し上げましたように、スマートグリッドというのは、ビジネス自身が非常に大きな社会インフラですから、デファクト標準というのではなくて、やはり国際的なデジュール標準を策定して、相互接続がきちんと保障されることが重要と思います。そのデジュール標準を日本が牽引役となって推進していくことが期待されています。標準化については、図4に示すように、経済産業省の方針として、

(1)標準化とは、「競争領域と協調領域の線引きを行うルール作り」であること
(2)「標準を制する者が市場を制する」ということ
(3)「市場構造はデファクト標準からデジュール標準へ」と向かっていること

ということなのです。つまり、何よりも「ルールづくり」が重要視されているのです。


図4 国際標準化に取り組む意義(クリックで拡大)

≪5≫スマートグリッドとM2M(機器間)通信の重要性とその役割

■ ところで、スマートグリッドの大きな特徴として、双方向通信が重視されていますが。

合田 そうですね。スマートグリッド環境におけるビジネスモデルにおいて、通信が果たしている役割を整理しますと図5のようになります。図5に示すように、通信の第1ステップは、もともと電話のように人と人のコミュニケーションでした。その次の第2ステップでは、いろんな情報を人にということで、例えばサーバ(機械)と人(パソコンを操作する人)の間での情報のやりとりをするようになりました。

ところが、最近では、これもさらに進化して、次のステップ3として、機械(Machine)と機械(Machine)の通信、すなわちM2M(Machine to Machine Communication)というような形で、機器同士が情報を提供しあい、いろいろと制御できるようになってきました。

例えば、図5に示すように、HEMS(宅内エネルギー管理システム)を包含したホームネットワーク(HAN)と接続されたスマートメーター(SM)が、図5の右に示すサービスプロバイダーのサーバと通信しあってエネルギーの制御を行うような、新しいビジネスモデルが可能となってきました。


図5 M2Mによる新しいビジネスモデル(クリックで拡大)

■ なるほど。

合田 このようなビジネス形態になってくると、個別(プロプライアタリー)のベンダのシステムは別にして、国際ビジネスを目指す汎用的なスマートグリッドシステムでは、デジュール標準でないと相互接続できなくなってくるのではないかと思います。

今後、スマートグリッドは、ますます重要性を増していき、ICTと連携した次世代電力網は、電力・エネルギー危機を乗り越えるエースとして期待されています。その時に重要なのはお互いにきちんと接続できるような相互接続性のルールが国際標準として策定されていること、さらに安全で安心できるセキュリティが確保されていることが重要になってくるのです。その中で、日本が国際的にリードできるよう活動していきたいと思います。

■ ご多忙のところ、いろいろとお話しいただきありがとうございました。

(終わり)


バックナンバー

<新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!>

第1回:日本におけるスマートグリッド/マイクログリッドの始まり
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110925/854

第2回:IEC SMBに、スマートグリッド戦略グループ(SG3)を設立
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111010/855

第3回:スマートグリッドの標準化に向けた各国の動き
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111023/856

第4回:20XX年に向けた「新しい電力システムの提案」とその構築
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111111/858

第5回(最終回):日本が目指すべきスマートグリッドの方向性
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111128/859


プロフィール

合田忠弘(ごうだ ただひろ)氏

現職:
九州大学大学院 システム情報科学研究院 電気システム工学部門(電気エネルギー・環境工学講座担当)教授 工学博士

【略歴】
1973年3月 大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。
1973年4月 三菱電機(株)入社。電子計算機やマイクロプロセッサを使用した電力系統の保護制御システム(系統安定化・事故波及防止システムや電圧無効電力制御システムなど)の開発・製造、パワーエレクトロニクスや電力自由化・規制緩和関連システム(電力取引関連システムやPPS 向け需給制御ステムなど)の開発・製造、系統解析シミュレータやマイクログリッドの開発に従事。同社の電力系統技術部長、電力流通システムプロジェクトグループ長を歴任。
2006年3月 三菱電機(株)を退社。
2006年4月より、現職。電力系統の安定度解析やマイクログリッドおよびスマートグリッドの運用制御方式の研究を実施。

<受賞・学会活動他>
1980年 日本電機工業会進歩賞、1991年 電気学会論文賞を受賞。工学博士。
2006年 電機工業会功労賞受賞

<主な著書>(いずれも共著)
「ITが拓く電力ビジネス革命」:オーム社(2002年)。「マイクログリッド」:(社)日本電気協会新聞部(2004年)。「エネルギーの貯蔵・輸送」:NTS社(2008年)。「スマートグリッドの構成技術と標準化」:日本電気協会(2010年)。「スマートグリッド教科書」:インプレスジャパン(2011年)。


インプレスR&D刊行の関連書籍

最新刊
スマートハウスとHEMS/BEMS/CEMS最新技術動向2012
http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2012

インターネットメディア総合研究所 [編]
ページ数:266P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
現在、スマートグリッドは、準備段階の実証実験のレベルから実用化のレベルへと移行しはじめています。このような背景から発行される本書は、スマートグリッドの国際的な最新動向をとらえながら、スマートグリッドの心臓部である「EMS」(エネルギー管理システム)に焦点を当て、徹底的に解説しています。
具体的には、スマートハウス、スマートビル、スマートコミュニティの中核的な技術となる、「HEMS」(宅内エネルギー管理システム)、「BEMS」(ビルエネルギー管理システム)、「CEMS」(地域エネルギー管理システム)など、エネルギー管理システム(EMS)の全体像と、それらを実現するための「ネットワーク技術」「通信プロトコル」「プラットフォーム」「ミドルウェア」「半導体」などの要素技術を実用化の視点から解説し、その製品動向を多角的にとらえた内容になっています。
なかでも、これらのEMSを構築するうえで、とくに、現在注目され普及期を迎えているプラットフォームソフトウェア「OSGi」や「TR-069」(機器管理プロトコル)、さらに標準化の大詰めを迎えている「SEP 2」(電力消費量の測定や表示、デマンドレスポンスなどを行うアプリケーションプロトコル)に注目して解説していますスマートグリッドについては、米国のオバマ大統領が、「次のARPANET(インターネット)である」と演説し注目されましたが、インターネット以上の産業的な広がりをもって進展しています。このため、電力関連企業やICT関連企業だけでなく、建築から家電、自動車、ガスに至るまで、新しいビジネスチャンスを目指して、あらゆる産業からの新規参入が相次いでいます。本書は、それらの新規参入を目指している皆様のための必読の一冊です。


好評発売中!
インプレス標準教科書シリーズ スマートグリッド教科書
http://www.impressjapan.jp/books/2981

監修者:合田 忠弘(九州大学大学院)、
    諸住 哲(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ページ数:384P
サイズ・判型:B5判
定価:[本体4,700円+税]

〔本書の特徴〕
今、電力網と情報通信網を統合した「次世代電力網」すなわち「スマートグリッド」が国際的に大きく注目され、さまざまな国でその取り組みが開始されています。
私たちを取り巻く社会環境は、現在、地球温暖化問題やエネルギー枯渇問題、経済危機など、人類史上まれにみる深刻な危機に直面していますが、これらを解決する救世主として登場したのが、「スマートグリッド」です。
このスマートグリッドは、大きく3つの可能性をもっています。
1つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用することによって、「電気エネルギーの面」から今後、クリーンなエネルギーを持続的に供給することが可能になることです。2つ目は、情報通信技術を活用することによって、「送配電網の運用の面」から効率的で信頼性の高い電力の供給が可能となることです。3つ目は、家庭やオフィスなどの需要家側においては、電気エネルギーの使い方をスマートにすることによって省エネルギー化を可能とするなど、「消費の面」からも新しい局面を拓くことが可能になることです。
本書は、スマートグリッド関係の分野において、国際的な標準化活動や最前線で研究開発やビジネスを展開されている執筆陣によって刊行され、スマートグリッドの全体像を集大成した内容になっています。このため、電力業界はもとより、情報通信業界をはじめ、家電業界、自動車業界に至るまで、スマートグリッドに携わる幅広い方々が、次世代のビジネス戦略を考えるうえで、大いに参考になる必読の一冊となっています。


好評発売中!
スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011
http://r.impressrd.jp/iil/GUTP2011

執筆者:江崎浩、落合秀也
ページ数:324P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
東日本大震災は、深刻な電力・エネルギー危機を引き起こし、日本における企業・産業・社会活動に対して、これまでとはまったく異なる次元から、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)を確立する必要性があることをつきつけた。
こうした背景のもとに、東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)では、新しく標準化されたスマートグリッド向けの標準プロトコル「IEEE 1888プロトコル」を用いた世界初のマルチベンダシステムを工学部2号館に構築した。それを構成する機器の相互接続試験も成功し、全学的な展開が開始されている。すでに、電力消費が年間最大となる2011年7月には、対前年同月比の30%の電力削減に成功し、今後の展開が国の内外から大きな注目を集めている。
本書は、電力・エネルギー危機に挑む、スマートグリッド組織「東大グリーンICTプロジェクト」の「IEEE 1888」システムを活用した節電対策の具体例を見ながら、新しいキャンパスやビルの方向性を示しつつビジネスの可能性と展開を解説していく。


好評発売中!
世界のマイクログリッドと再生可能エネルギー2011
http://r.impressrd.jp/iil/Microgrid2011

執筆者:新井 宏征
ページ数:206P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
東北地方を中心に、日本の歴史上、最大級の被害を与えた東日本大震災(2011年3月11日発生)は、東京電力管内の福島第一原子力発電所をも直撃しました。近年では経験することのなかった電力危機に直面し、従来の大規模な発電の仕組みに頼らない発電方法に、今、注目が集まっています。
本書では、近年のスマートグリッドの取り組みの高まりや、震災後のエネルギー計画の見直しなどの背景を踏まえたうえで、マイクログリッドを構成する技術やそのビジネス動向、さらに活発化する世界のマイクログリッドプロジェクトの動向などを解説しています。


好評発売中!
標準化/特許/知的財産戦略2011
http://r.impressrd.jp/iil/IPstrategy2011

執筆者:平松 幸男(大阪工業大学大学院 教授)、 小町 祐史(大阪工業大学 教授)
ページ数:138P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
国際的に、標準化/特許/知的財産が、国や企業、大学などの今後の展開に大きな影響を与えるキーワードとして注目を集めています。そのようななか、特許を収益につなげる知的財産戦略が浮上しています。
そこで本書では、標準化と特許の歴史から振り返り、それが時代とともにどのように変遷してきたかを見ることによって、私たちが置かれた現状に対する理解を進めたうえで、「IT」「エレクトロニクス」「通信」「エネルギー環境」等の産業技術分野において標準化が今後、企業にとってどのような意義をもつのかを考えます。
また、標準化の場にはどのようなものがあるのか、諸外国は標準化にどのようにとり組んでいるのか、さらに特許をはじめとする知的財産と標準化の関係は何か、政府と大学の役割は何かなどを考えたうえで、日本企業が今後どのように標準化にとり組むべきかについて考えます。


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スマートグリッドシリーズ第6弾
スマートハウス構築のためのホームネットワーク技術2011
http://r.impressrd.jp/iil/HomeNetwork2011

執筆者:丹 康雄(北陸先端科学技術大学院大学 教授)
ページ数:232P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド/スマートハウス時代に、ホームネットワークが急速に注目を集め、新しい標準が次々に登場しています。ホームネットワークはアプリケーション分野の面、技術要素の面のどの観点から見ても多数の要素が互いに関連する複合型のシステムとなっています。そのため、特定の技術が開発されれば一気に実現できるようなシステムではありません。それぞれの部分にあった適切な技術を組み合わせ、全体としては一般ユーザーが運用していける使いやすいシステムを構築する必要があるのです。
特に、スマートグリッドとしての制御系の波は、これまでのホームネットワークのシステムに、無線やPLC(電力線通信)などの通信技術の進展がみられたのに加えて、家庭内に創エネ、蓄エネの機器が出現し、重要なものになってきています。
さらに2011年3月11日に起きた災害は、人々の意識や社会的ニーズを一変させ、それまではコスト面などで敬遠されてきた再生可能エネルギーおよび分散電源の活用や、快適さを失うおそれから取り組みが足踏みしていた消費エネルギー抑制諸技術の実現に、改めて研究開発の方向性が向かいつつあります。
本書は、現時点の最新技術の羅列ではなく、過去からの技術の蓄積に基づき、スマートハウスを実現するために必要となるホームネットワークの一連の技術について述べたものになっています。


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スマートグリッドシリーズ第5弾
グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011
[太陽電池/LEDテレビから電気自動車までの新戦略を解明]

http://r.impressrd.jp/iil/GreenSemicon2011

執筆者:津田建二(国際技術ジャーナリスト)
ページ数:150P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
半導体は今や、ハード指向からソフトウェアをのせる時代に進化しています。人間の知恵を埋め込んだ新しい半導体が次々と生まれ、スマートフォンやタブレットPCをはじめ、新しい電子機器が生まれてきています。私たち人類の知恵を実現してくれるのが半導体であるからこそ、将来に向けてCO2を削減し、青い地球を維持するために欠かせない環境技術を開発し継続していくことと、半導体技術は一体なのです。
本書は、半導体を使ってグリーン化が進み、今後の推進可能な分野を、調査データと技術解説の両方から解説しています。
半導体産業を通してスマートグリッド関連ビジネスを推進している企業だけでなく、新しい家電機器をはじめ、電気自動車やスマートハウス関連の新ビジネスを推進する企業の、今後の戦略的な参考資料としての一冊となっています。


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スマートグリッドシリーズ第4弾
世界のスマートグリッド政策と標準化動向2011
[実用期に入ったNIST/IEC/IETF/IEEEの全仕様とサイバーセキュリティ]

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執筆者:新井宏征/名和利男/湧川隆次
ページ数:328P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


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スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
http://r.impressrd.jp/iil/SmartMeter2011

執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。


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スマートグリッドシリーズ第2弾
日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010
[Smart Energy Profile 2.0によるスマートグリッドの新展開]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2010

執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!<第4回>=SMB SG3(スマートグリッド担当)が目指すもの=

金, 2011-11-11 09:00

スマートハウスからスマートコミュニティへと進展をみせるスマートグリッドの世界は、電力・エネルギー危機を背景に、新しいビジネスを求めて、日本を含むアジアや、米国、欧州においても、活発な展開を見せている。ここでは、スマートグリッドの国際標準化を推進しているIEC(国際電気標準会議)/SMB(標準管理評議会)のSG3(スマートグリッド担当)の日本代表である、九州大学大学院 電気システム工学部門の合田忠弘(ごうだただひろ)教授に、スマートグリッドについて国際標準化の動向や、世界各国の取り組みをお聞きした。また、合田教授がマイクログリッドやスマートグリッドに取り組んだ動機をはじめ、IECとNISTやIEEEなど他の標準化団体との連携や、スマートグリッドが拓く新しいビジネスモデル等もお聞きした。

第4回:20XX年に向けた「新しい電力システムの提案」とその構築

≪1≫欧州は製品化前に「デジュール標準」を優先して取り組む

■ 前回(第3回)では、スマートグリッドに関する世界の標準化動向をお話しいただきましたが、日本のスマートグリッドの標準化活動につきましてはいかがでしょうか。

合田 そうですね。国際的には、例えば、この連載第3回の図1(再掲載)に示したように、IECの中でもTC100(オーディオ・ビデオ・マルチメディア機器およびシステム)では、セクレタリー(国際幹事)としてソニーの江崎 正氏が活躍され、宅内の通信(ホームネットワーク)関連の規格などに取り組んでいます。IECで規格を作成するうえで、チェアマン(議長)やセクレタリーというようなポジションをとることは、標準化に対して日本の意見を反映させリードするうえで、大変重要なことなのです。


図1 IECのスマートグリッド関連のTC(技術委員会)(再掲載:クリックで拡大)

合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 このほか、スマートグリッド関係のIECの技術委員会(TC)として、TC8(担当分野:電力供給にかかわるシステムアスペクト)では、分散型電源の系統連系に関する規格を、それからTC57(担当分野:電力システム管理および関連する情報交換)では、電力通信関係の規格を扱っています。

国際標準化に関しては、日本の活動にはまだまだ努力の余地があると思います。

私自身は、標準に関して、日本は米国と同じような傾向があり、極端な言い方をすれば、いい製品をつくれば、それで市場では勝っていけるというデファクト標準重視のスタンスではないかと感じています。すなわち、よい製品が市場を制覇し、その製品の仕様が標準となる「事後標準型」であると思います。

ところが欧州の場合は、どちらかというとそうではなくて、まず「デジュール標準」ありきという考えで、標準規格に取り組んでいるのです。

■ さすが哲学の欧州ですね。

合田 ですから、製品が出る前に事前に標準規格を作ることが重視されているのです。そのことについて、私は必ずしもデファクト標準がだめだっていうことではないのです。スマートグリッドのような大きな社会インフラになってくると、欧州では、製品開発の前にデジュール規格をつくってから取り組む、という考え方が基本になっているのではないか、という気がしますね。


≪2≫マイクログリッドの登場とスマートグリッド

■ なるほど。先生、スマートグリッドというと、言葉や展示会などがたいへん先行していて、初めての人たちにとっては、すでにスマートグリッドが完成したように見えるたり、現実は、まだこれからのようなところもあります。実際のところ、今スマートグリッド、山でいうとは何合目ぐらいのところにいるのでしょうか。

合田 何合目にいるかというのは、なかなか難しい質問ですね。各国によってスマートグリッドの中のどこ部分を取り組むのかについて、それぞれ違うと思います。最初に、米国からスマートグリッドという言葉がブームのように登場してきたとき、日本の電力会社の反応というのは極端でしたね。当時米国が、スマートグリッドを提唱し、ICT(情報通信技術)を利用して、例えば電力ネットワークや基幹系統を強くしていこう、さらに配電の自動化をしていこう、ということを前面に押し出していたため、日本の電力会社は、極端な言い方をすればね、「そのようことは、もう日本ではとっくに終わっている」というような反応でした。

■ はい、その通りでした。

合田 ところが、日本の実態はそうではなかった。図2に示すように、スマートグリッドというのは、地域的な小規模規模のマイクログリッド(μG)をはじめ、需要家のネットワーク(例:一般家庭のホームネットワーク。HAN)や、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーなども全部含んでいるのです。このようなところまで日本の電力ネットワークは十分に対応できているかといったら、そうではなかったのです。


図2 スマートグリッド(次世代電力網)の概念(分散型電源による次世代電力網の構築)(クリックで拡大)

ですから、マイクログリッド(μG)をどの視点から見るかによって、まったく反応が違ってくるのです。現在では、日本でも、需要家ネットワークや再生可能エネルギーも含めたスマートグリッドに取り組むようになってきています。さらに、とくにこの震災(2011年3月)以降は、それまでは世界でも最強(ストロング)と言われていた日本の電力ネットワークが、実は最強ではなかったことが国民の目にも明らかになりましたので、そこをもう1回見直すようなことを言われているので、スマートグリッドは、まだこれからなのです。

国際標準機関のIECの中でも、スマートグリッドの定義については、まだはっきりしていないところがあるのです。

■ エッ!もうとっくに定義が終わっているものと思っていましたが。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 ええ。実際にそうなのです。スマートグリッドの定義というのは、各国でいろいろと定義されていますが、IEC SG3の報告書では、スマートグリッドは技術用語ではなく、マーケティング用語であると明記されています。ですから、これからきちんと「スマートグリッドの定義をしていく」というようになっています。

その定義をつくるのはSG3ではなく、TC8が担当で、このTC8はそれなりの定義は出していますが、それは必ずしもまだはっきりとしたものではありません。ですから、何か問題があると、それはスマートグリッドで解決すればいいという状況になっています。スマートグリッドの概念を明確にし、その実現のためのファンクションを明確にしていくことが重要であり、このためにSG3では2010年5月にロードマップ第1版を発刊し、スマートグリッドの基本構成要素などを確定していっています。2012年にはロードマップ第2版を発刊予定です。

■ はい、わかりました。しかし、スマートグリッドに関連して、日本でも国内の代表的なスマートシティー・プロジェクトとして、日本政府の「環境未来都市」構想に基づく「次世代エネルギー・社会システム実証事業」で、2011年4月から実証地域として選ばれた4市(神奈川県・横浜市、愛知県・豊田市、京都府・けいはんな学研都市、福岡県・北九州市)でのプロジェクトがスタートしています。その場合、スマートグリッドの概念がある程度あって、その考えに基づいて進めているのではないかと思うのですが。

合田 日本としての共通概念があって、それに基づいて、その各プロジェクトがやっているということではなくて、全体はまだぼんやりしているので、各プロジェクトが自分たちの思い描くスマートグリッド、スマートコミュニティという実証実験をやっていっているのだと思います。そのような実証プロイジェクトをやりながら、日本としてのスマートグリッド、スマートコミュニティはこういうものだ、というようなものをつくっていこうとしているのだと思います。


≪3≫スマートグリッドが提供する新しい可能性

■ ところで、震災以降、日本で「計画停電」とか、聞きなれない言葉が出てきましたが、こんなにIT(ICT)が進んでいるのに、家庭の冷蔵庫までも止められてしまって、とても原始的な感じをもちましたが。

合田 おっしゃる通りですね。それは、今後スマートグリッドが何をするかということとも関係があります。例えば、冷蔵庫の電気でも病院の手術室の電気でもいいのですが、今後、電気の絶対量が不足している時にどのように対応していくかをきちんと考えていく必要があります。今回は震災によって原発などが停止し、電気が足らない状態になっているので、どこかをとめざるを得ないのです。それを、各家庭に任せて電気を止めるようにお願いしても、その実現が難しいときに「根元(電力会社)で止めてしまう」のか、「一番末端(一般家庭)で止めるのか」という、ことです。

■それはどのような仕組みで実現されるのでしょうか。

合田 例えば、これから日本で設置されようとしている、「スマートメーター」の機能の中には、使用電力量を計測するという機能ほかに、直接負荷(家庭の冷蔵庫やエアコン)を切るというような機能も入れようとしています。これによって、電力会社の指令で、強制的に電気を「家単位で止める」という停電ではなくて、「各家電機器の単位」であまり影響のない電気を止める(例:ご飯を炊いている電気釜は除外する)ということが可能になります。

ですから、このようなことができるように、きちんと議論をしていく必要があると思います。


≪4≫20XX年に向けた「電力供給システムの新コンセプト」の提案

■ 具体的に、どのような議論を行い、どのように変えていくとよいのでしょうか。

合田 そうですね。それでは、図3を見ながら簡単に説明しましょう。図3は、私が提案している20XX年(2020年か2030年かは不明ですが)の実現をめざす、電力(エネルギー)供給システムの新概念の構築図です。


図3 電力(エネルギー)供給システムの新概念の構築図(クリックで拡大)

■ 図3は、これまでの電力システムとはずいぶん違う流れですね。

合田 はい。ご存じのように今までは、図3の上部に示すように

         発電 ⇒ 送電 ⇒ 配電 ⇒ 需要家

というように、電気は送られていましたが、これらとはがらりと変えた考えとなっています。すなわち、図3の下部に示すような

         発電 ⇒ 輸電 ⇒ 共電 ⇔ 用電

のような流れの考え方です。

■ 4つであることは変わりませんが、ずいぶん聞きなれない新しい用語が出てきましたね。

合田 そうですね。図3の下部では、末端の需要家側で太陽光発電や風力発電などが行われ、従来とは異なる電源利用される環境になりますので、セキュリティの問題への対処も含めて、少し従来の電力システムとその概念を変えたらどうかということです。今までは、電力会社の「配電」の概念の中には、太陽光発電や風力発電などの「発電」という考えはなく、上位系統から送られてきた電気を需要家に配るということをその役割としてきました。

■ そうですね。

合田 しかし、今後、配電の中に、例えば大規模な太陽光発電のメガソーラー(メガワット級の太陽光発電)なども入ってくる可能性がありますし、もちろん需要家側(ユーザー宅)にも小型の太陽光発電も入ってきます。

このように需要家側で発電した電力を使うということもありますから、従来の「配電」というところでも、発電が行われているという意味を込めて、「供電」(この名前が適切かどうかわかりませんが)という名前を提案にしています。

■ 「供電」ということですね。もう少し説明していただけますか。

合田 「供電」の「供」というには、「供給の供」という意味です。これは単に電気を配るという意味ではなく、

(1)電力事業者が従来の配電の中で発電も行い、ここで発電した電力を上位系統から受電する電力と合わせて上手に使って、供給エリア内へ高信頼度かつ経済的な電気を供給していく、
(2)一方、需要家のほうも、これは電気を「消費する」だけではなく自らも発電を行いながら、電気をいかに「利用する」かを考える

というように変わっていくべきでないかと思うのです。

■ 需要家側(一般家庭等)は、電力を単に「消費」するということではないということでしょうか。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 ええ。ですから需要家側で「用電」という「電気をいかに利用するか」という概念が必要になってくるのではないか。具体的に言いますと、例えば、「用電」(電気をいかに利用するか)ということ、すなわち、電気が足らない場合は供給に見合った消費をするということですから、例えば今電気が足りませんといったときに、直接制御する(例:電気が不足するときは電気事業者が直接エアコンを切る)という方法もあります。しかし、例えばHEMSのような家庭内エネルギー管理システムや、あるいはCEMS(地域のエネルギー管理システム)のような、その家庭や、地域内の電気を管理しているところから、今、「電気はこれだけしかないので、これだけ使ってください」というような指令を出して、供給に見合った需要をしていくというようなシステムに、つくり変えていく必要があるのではないか。

私は、まず、こういうところを本当は、きちんと議論すべきだと思っていますので、今までの概念(図3の上部)のままで話しても発展がないので、言葉から変えていくほうがいいと思っているところです。


≪5≫ストロングな「発電」とスマートな「用電」を

■ おっしゃる通りと思います。スマートグリッド時代を迎えるのに従来の電力システムの流れのまま、ということはあり得ないことです。ところで、この考え方は、今どういうところで提案されて、議論されているのですか。

合田 いや、これは私が言っているだけです。図3の下部に「新しい電力(エネルギー)供給システム(Strong & Smart NW)」と書いていますが、「発電」のところを「Strong NW(Network)」、「用電」のところを「Smart」(電気の効率的な使い方)と呼んでいます。

一方、日本の場合、今までは非常に電力の供給体制は強いと言われていましたが、今回の震災では、60Hzの関西の電力と、50Hzの関東地域の電力がお互いに融通できない(一部可能であったが)という、電力の融通力の問題がありました。

■ そうでしたね。

合田 日本では、電力会社間の相互融通は必要最小限にするという考え方を基本にして、電力ネットワークをつくってきていますが、本当にそれでよいのかということを、もう1回議論すべきという意味で、「ストロング(Strong)なネットワーク」を新しいネットワークの検討課題に入れています。

■ たしかに、今回の地震以降、電力の相互融通が話題になりましたね。その時、関西・中部と関東の中間地点ある60Hzと50Hzの周波数変換能力は「佐久間周波数変換所が30万kW、新信濃変電所が60万kW、東清水変電所が10万kW(将来は30万kW)、合計100万kW」と言われましたが、なぜあんなに細い(100万kW程度)相互融通なのでしょうか。その理由は何でなんのでしょうか。なぜでもっと太くしないのでしょうか。

合田 はい。太くすることは可能なのですが、そうするとお金がかかってしまうということもありますが、もともとお互いに電力の相互融通はしないという前提でつくってあるのです。これは極論ですが、各電力会社は自分自身で電力の需給のバランスをとるといことを前提に電力システムをつくっています。ですから、緊急状態のときに少しだけ融通しますということになっているのです。すなわち、今回のように大規模な電力の融通するということは、最初から考慮されていないのです。逆に、そういう設備をつくってしまうと、ふだんは使わない設備ですから、その分、電気代にもはね返ってくることになります。

ただ、現状では、電力会社間の連系が弱いので、今後、例えば再生可能エネルギーが、北海道や東北、あるいは九州などで、たくさん発電しても、相互融通の制限があるため、完全に利用できないという問題は検討課題として残っています。

■ たしかにそうですね。

合田 そういうことも含めて、次世代の電力網というのは、私はスマートでなくて、「ストロング・アンド・スマート」ネットワークを目指してやっていくべきではないかと思っているのです。

■ そのような先生の考え方は、日本の政策にならないのですか。いつも、図3の上部の「発電⇒送電⇒配電⇒需要家」という図式の流れですと、絶望感がありますね。電力会社からの一方通行のダウンストリームみたいになっていますので。

合田 そうですね、私は2005年頃から、図3の下部のようなことを自分の中では思っていていまして、シンポジウムとか、講演会では、将来ビジョンとして話していますが、現状はこのレベルです。


≪6≫緊急状態を考慮した電力の自由化・規制緩和の議論を!

■ どんどん提案していただきたいと思います。

合田 現在は、前よりはこういうことを言える状況になっていますので、今後は、きちんと議論していきたいと思っています。これは、水平分割とか垂直統合とか言うことではなく、望ましい電力の供給形態にするにはどういう電力システムを構築しておいたら一番いいのかということです。

例えば、電力業界を自由化にして発電会社のビジネスをもっと競合状態にすれば、それで電力料金が安くなりますと言われます。たしかに競争の原理によって、定常的には電気の値段は安くなるかもしれませんが、それで今回のように、電力の供給量が不足したときの問題が解決するでしょうか。どの電力事業者が、例えば1,000万kWに相当するような遊びの電力(100万kWの発電所を10カ所)を持っているでしょうか。それは経済的にもてないのです。結局自由化しても、しなくても電力の予備力(予備の電力として供給が可能な電力量)としてはあまり変わってこないと思います。

■ しかし、流れとしては電力も自由化の方向に向かっていますね。

合田 そうですね。しかし、自由化によって定常的には電気料金は安くなるかもしれませんが、今度のような緊急状態のときに自由化という状態で、対応できるのかどうか。そういうことも含めてきちんと、議論をすべきで時がきたと思っています。現在の状態をどうしたら解決できるのか、よくなる方向に向かってまず当面の課題を解決したうえでその次のステップにおいて、課題が残っているのならもう1回自由化や規制緩和を含めた議論をやることが重要だと思います。それがまさにスマートグリッド時代の電力システム、電力ビジネスの方向性を創り出していくのだと思います。

(第5回につづく)


バックナンバー

<新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!>

第1回:日本におけるスマートグリッド/マイクログリッドの始まり
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110925/854

第2回:IEC SMBに、スマートグリッド戦略グループ(SG3)を設立
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111010/855

第3回:スマートグリッドの標準化に向けた各国の動き
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111023/856

第4回:20XX年に向けた「新しい電力システムの提案」とその構築
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111111/858

第5回(最終回):日本が目指すべきスマートグリッドの方向性
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111128/859


プロフィール

合田忠弘(ごうだ ただひろ)氏

現職:
九州大学大学院 システム情報科学研究院 電気システム工学部門(電気エネルギー・環境工学講座担当)教授 工学博士

【略歴】
1973年3月 大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。
1973年4月 三菱電機(株)入社。電子計算機やマイクロプロセッサを使用した電力系統の保護制御システム(系統安定化・事故波及防止システムや電圧無効電力制御システムなど)の開発・製造、パワーエレクトロニクスや電力自由化・規制緩和関連システム(電力取引関連システムやPPS 向け需給制御ステムなど)の開発・製造、系統解析シミュレータやマイクログリッドの開発に従事。同社の電力系統技術部長、電力流通システムプロジェクトグループ長を歴任。
2006年3月 三菱電機(株)を退社。
2006年4月より、現職。電力系統の安定度解析やマイクログリッドおよびスマートグリッドの運用制御方式の研究を実施。

<受賞・学会活動他>
1980年 日本電機工業会進歩賞、1991年 電気学会論文賞を受賞。工学博士。
2006年 電機工業会功労賞受賞

<主な著書>(いずれも共著)
「ITが拓く電力ビジネス革命」:オーム社(2002年)。「マイクログリッド」:(社)日本電気協会新聞部(2004年)。「エネルギーの貯蔵・輸送」:NTS社(2008年)。「スマートグリッドの構成技術と標準化」:日本電気協会(2010年)。「スマートグリッド教科書」:インプレスジャパン(2011年)。


インプレスR&D刊行の関連書籍

最新刊
スマートハウスとHEMS/BEMS/CEMS最新技術動向2012
http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2012

インターネットメディア総合研究所 [編]
ページ数:266P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
現在、スマートグリッドは、準備段階の実証実験のレベルから実用化のレベルへと移行しはじめています。このような背景から発行される本書は、スマートグリッドの国際的な最新動向をとらえながら、スマートグリッドの心臓部である「EMS」(エネルギー管理システム)に焦点を当て、徹底的に解説しています。
具体的には、スマートハウス、スマートビル、スマートコミュニティの中核的な技術となる、「HEMS」(宅内エネルギー管理システム)、「BEMS」(ビルエネルギー管理システム)、「CEMS」(地域エネルギー管理システム)など、エネルギー管理システム(EMS)の全体像と、それらを実現するための「ネットワーク技術」「通信プロトコル」「プラットフォーム」「ミドルウェア」「半導体」などの要素技術を実用化の視点から解説し、その製品動向を多角的にとらえた内容になっています。
なかでも、これらのEMSを構築するうえで、とくに、現在注目され普及期を迎えているプラットフォームソフトウェア「OSGi」や「TR-069」(機器管理プロトコル)、さらに標準化の大詰めを迎えている「SEP 2」(電力消費量の測定や表示、デマンドレスポンスなどを行うアプリケーションプロトコル)に注目して解説していますスマートグリッドについては、米国のオバマ大統領が、「次のARPANET(インターネット)である」と演説し注目されましたが、インターネット以上の産業的な広がりをもって進展しています。このため、電力関連企業やICT関連企業だけでなく、建築から家電、自動車、ガスに至るまで、新しいビジネスチャンスを目指して、あらゆる産業からの新規参入が相次いでいます。本書は、それらの新規参入を目指している皆様のための必読の一冊です。


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インプレス標準教科書シリーズ スマートグリッド教科書
http://www.impressjapan.jp/books/2981

監修者:合田 忠弘(九州大学大学院)、
    諸住 哲(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ページ数:384P
サイズ・判型:B5判
定価:[本体4,700円+税]

〔本書の特徴〕
今、電力網と情報通信網を統合した「次世代電力網」すなわち「スマートグリッド」が国際的に大きく注目され、さまざまな国でその取り組みが開始されています。
私たちを取り巻く社会環境は、現在、地球温暖化問題やエネルギー枯渇問題、経済危機など、人類史上まれにみる深刻な危機に直面していますが、これらを解決する救世主として登場したのが、「スマートグリッド」です。
このスマートグリッドは、大きく3つの可能性をもっています。
1つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用することによって、「電気エネルギーの面」から今後、クリーンなエネルギーを持続的に供給することが可能になることです。2つ目は、情報通信技術を活用することによって、「送配電網の運用の面」から効率的で信頼性の高い電力の供給が可能となることです。3つ目は、家庭やオフィスなどの需要家側においては、電気エネルギーの使い方をスマートにすることによって省エネルギー化を可能とするなど、「消費の面」からも新しい局面を拓くことが可能になることです。
本書は、スマートグリッド関係の分野において、国際的な標準化活動や最前線で研究開発やビジネスを展開されている執筆陣によって刊行され、スマートグリッドの全体像を集大成した内容になっています。このため、電力業界はもとより、情報通信業界をはじめ、家電業界、自動車業界に至るまで、スマートグリッドに携わる幅広い方々が、次世代のビジネス戦略を考えるうえで、大いに参考になる必読の一冊となっています。


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スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011
http://r.impressrd.jp/iil/GUTP2011

執筆者:江崎浩、落合秀也
ページ数:324P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
東日本大震災は、深刻な電力・エネルギー危機を引き起こし、日本における企業・産業・社会活動に対して、これまでとはまったく異なる次元から、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)を確立する必要性があることをつきつけた。
こうした背景のもとに、東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)では、新しく標準化されたスマートグリッド向けの標準プロトコル「IEEE 1888プロトコル」を用いた世界初のマルチベンダシステムを工学部2号館に構築した。それを構成する機器の相互接続試験も成功し、全学的な展開が開始されている。すでに、電力消費が年間最大となる2011年7月には、対前年同月比の30%の電力削減に成功し、今後の展開が国の内外から大きな注目を集めている。
本書は、電力・エネルギー危機に挑む、スマートグリッド組織「東大グリーンICTプロジェクト」の「IEEE 1888」システムを活用した節電対策の具体例を見ながら、新しいキャンパスやビルの方向性を示しつつビジネスの可能性と展開を解説していく。


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世界のマイクログリッドと再生可能エネルギー2011
http://r.impressrd.jp/iil/Microgrid2011

執筆者:新井 宏征
ページ数:206P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
東北地方を中心に、日本の歴史上、最大級の被害を与えた東日本大震災(2011年3月11日発生)は、東京電力管内の福島第一原子力発電所をも直撃しました。近年では経験することのなかった電力危機に直面し、従来の大規模な発電の仕組みに頼らない発電方法に、今、注目が集まっています。
本書では、近年のスマートグリッドの取り組みの高まりや、震災後のエネルギー計画の見直しなどの背景を踏まえたうえで、マイクログリッドを構成する技術やそのビジネス動向、さらに活発化する世界のマイクログリッドプロジェクトの動向などを解説しています。


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標準化/特許/知的財産戦略2011
http://r.impressrd.jp/iil/IPstrategy2011

執筆者:平松 幸男(大阪工業大学大学院 教授)、 小町 祐史(大阪工業大学 教授)
ページ数:138P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
国際的に、標準化/特許/知的財産が、国や企業、大学などの今後の展開に大きな影響を与えるキーワードとして注目を集めています。そのようななか、特許を収益につなげる知的財産戦略が浮上しています。
そこで本書では、標準化と特許の歴史から振り返り、それが時代とともにどのように変遷してきたかを見ることによって、私たちが置かれた現状に対する理解を進めたうえで、「IT」「エレクトロニクス」「通信」「エネルギー環境」等の産業技術分野において標準化が今後、企業にとってどのような意義をもつのかを考えます。
また、標準化の場にはどのようなものがあるのか、諸外国は標準化にどのようにとり組んでいるのか、さらに特許をはじめとする知的財産と標準化の関係は何か、政府と大学の役割は何かなどを考えたうえで、日本企業が今後どのように標準化にとり組むべきかについて考えます。


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スマートグリッドシリーズ第6弾
スマートハウス構築のためのホームネットワーク技術2011
http://r.impressrd.jp/iil/HomeNetwork2011

執筆者:丹 康雄(北陸先端科学技術大学院大学 教授)
ページ数:232P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド/スマートハウス時代に、ホームネットワークが急速に注目を集め、新しい標準が次々に登場しています。ホームネットワークはアプリケーション分野の面、技術要素の面のどの観点から見ても多数の要素が互いに関連する複合型のシステムとなっています。そのため、特定の技術が開発されれば一気に実現できるようなシステムではありません。それぞれの部分にあった適切な技術を組み合わせ、全体としては一般ユーザーが運用していける使いやすいシステムを構築する必要があるのです。
特に、スマートグリッドとしての制御系の波は、これまでのホームネットワークのシステムに、無線やPLC(電力線通信)などの通信技術の進展がみられたのに加えて、家庭内に創エネ、蓄エネの機器が出現し、重要なものになってきています。
さらに2011年3月11日に起きた災害は、人々の意識や社会的ニーズを一変させ、それまではコスト面などで敬遠されてきた再生可能エネルギーおよび分散電源の活用や、快適さを失うおそれから取り組みが足踏みしていた消費エネルギー抑制諸技術の実現に、改めて研究開発の方向性が向かいつつあります。
本書は、現時点の最新技術の羅列ではなく、過去からの技術の蓄積に基づき、スマートハウスを実現するために必要となるホームネットワークの一連の技術について述べたものになっています。


好評発売中!
スマートグリッドシリーズ第5弾
グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011
[太陽電池/LEDテレビから電気自動車までの新戦略を解明]

http://r.impressrd.jp/iil/GreenSemicon2011

執筆者:津田建二(国際技術ジャーナリスト)
ページ数:150P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
半導体は今や、ハード指向からソフトウェアをのせる時代に進化しています。人間の知恵を埋め込んだ新しい半導体が次々と生まれ、スマートフォンやタブレットPCをはじめ、新しい電子機器が生まれてきています。私たち人類の知恵を実現してくれるのが半導体であるからこそ、将来に向けてCO2を削減し、青い地球を維持するために欠かせない環境技術を開発し継続していくことと、半導体技術は一体なのです。
本書は、半導体を使ってグリーン化が進み、今後の推進可能な分野を、調査データと技術解説の両方から解説しています。
半導体産業を通してスマートグリッド関連ビジネスを推進している企業だけでなく、新しい家電機器をはじめ、電気自動車やスマートハウス関連の新ビジネスを推進する企業の、今後の戦略的な参考資料としての一冊となっています。


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スマートグリッドシリーズ第4弾
世界のスマートグリッド政策と標準化動向2011
[実用期に入ったNIST/IEC/IETF/IEEEの全仕様とサイバーセキュリティ]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartGrid2011

執筆者:新井宏征/名和利男/湧川隆次
ページ数:328P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


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スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
http://r.impressrd.jp/iil/SmartMeter2011

執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。


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スマートグリッドシリーズ第2弾
日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010
[Smart Energy Profile 2.0によるスマートグリッドの新展開]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2010

執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


『スマートハウスとHEMS/BEMS/CEMS最新技術動向2012』を11月4日に発売

金, 2011-11-04 09:00

インプレスグループで法人向け情報コミュニケーション技術関連メディア事業を手がける株式会社インプレスR&D(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:井芹昌信)のシンクタンク部門であるインターネットメディア総合研究所は、スマートグリッドの国際的な最新動向をとらえながら、東日本大震災以降、国内でもその実用化が一気に加速してきたスマートハウスやスマートコミュニティの最新動向について解説した、『スマートハウスとHEMS/BEMS/CEMS最新技術動向2012』を、11月4日(金)に発売いたしました。

実用期を迎えたOSGi/TR-069からSEP 2までを網羅して解説!

深刻な電力・エネルギー危機や、地球温暖化問題などを背景に、ICT技術と電力システムを連携させ、「経済的で、信頼性の高い電力供給」や「省エネルギー/節電」などを実現する次世代電力網「スマートグリッド」への関心が国際的に高まり、各国でダイナミックな取り組みが展開されています。これを裏づけるかのように、スマートグリッド関連投資を含む、世界のグリーン分野のインフラ投資予定額は、公表されているだけでも、すでに430兆円を超える巨大な額にのぼっています。

一方、日本においては、歴史的にも最大級の被害をもたらした2011年3月11日の東日本大震災以降、スマートグリッドの実用化への関心と期待が高まっています。とくに、スマートグリッドを構成する要素である、スマートハウスやスマートビル、スマートコミュニティなどは、早急な災害復興への願いとも関連して、さまざまなプロジェクトが前倒しして展開されています。

現在、スマートグリッドは、準備段階の実証実験のレベルから実用化のレベルへと移行しはじめています。このような背景から発行される本書は、スマートグリッドの国際的な最新動向をとらえながら、スマートグリッドの心臓部である「EMS」(エネルギー管理システム)に焦点を当て、徹底的に解説しています。

具体的には、スマートハウス、スマートビル、スマートコミュニティの中核的な技術となる、「HEMS」(宅内エネルギー管理システム)、「BEMS」(ビルエネルギー管理システム)、「CEMS」(地域エネルギー管理システム)など、エネルギー管理システム(EMS)の全体像と、それらを実現するための「ネットワーク技術」「通信プロトコル」「プラットフォーム」「ミドルウェア」「半導体」などの要素技術を実用化の視点から解説し、その製品動向を多角的にとらえた内容になっています。

なかでも、これらのEMSを構築するうえで、とくに、現在注目され普及期を迎えているプラットフォームソフトウェア「OSGi」や「TR-069」(機器管理プロトコル)、さらに標準化の大詰めを迎えている「SEP 2」(電力消費量の測定や表示、デマンドレスポンスなどを行うアプリケーションプロトコル)に注目して解説しています。

本書は、「スマートグリッドシリーズ」第9弾で、各章の内容は、次の通り。

第1章では、ICT(情報通信技術)を駆使したスマートグリッド環境で、電力エネルギーを制御し節電を実現させるための中核となる「エネルギー管理システム」(EMS)の全体像を解説します。とくに、それぞれの中核技術となる「HEMS」や「BEMS」、「CEMS」などの動向をとらえます。また、それらの実証実験などを紹介しながら、日本の風土に適した「日本版スマートグリッド」への期待を述べます。

第2章では、各EMSに必要なプラットフォーム(基盤)の要件や各種の標準化の動向、これらの標準化動向と並行して行われている国内/海外のトライアル(実証実験)を整理して解説しています。具体的には、HEMSを実現するには、「ホームICT」がキーとなること、また、この「ホームICT」よって、サービス事業者は、新しいマルチベンダサービスを創出することが可能となることなどを解説します。

第3章では、EMSを構築する場合、その技術要素として必要な通信プロトコルの仕様を策定し、さらにその仕様に対応した半導体の設計やミドルウェアの開発に加えて、フレームワークを確立していくことも重要です。そこで、スマートグリッド用のアプリケーションプロトコル「SEP 2」を紹介しながら、関連する半導体やミドルウェア、フレームワークについて解説します。また、「OSGi」や「TR-069」の製品動向も含めて、詳しく解説します。

第4章では、「HEMS/BEMS/CEMSなどを構成する際のプラットフォームをどのように構成するか」という視点から、OSGiによるオープン・プラットフォームの仕組みを述べます。同時に、ホームゲートウェイとサービスゲートウェイの定義や機能と役割を明確にし、製品の動向もとらえていきます。また、プラットフォームの構成要素や、その管理方法、さらにプラットフォームの導入事例も紹介します。

第5章では、国際的に急速に拡大するスマートグリッドやスマートコミュニティ関連の市場を概観しながら、米国やドイツなど欧米諸国をはじめ、日本・中国・韓国などアジア諸国の具体的な実証実験やその政策とビジネス動向について、具体例を挙げて紹介します。また、日本におけるスマートコミュニティ実証事業の例を見ながら、HEMS/BEMS/CEMSに設定された目標値をどのように実現しようとしているのかなどについても解説します。

スマートグリッドについては、米国のオバマ大統領が、「次のARPANET(インターネット)である」と演説し注目されましたが、インターネット以上の産業的な広がりをもって進展しています。このため、電力関連企業やICT関連企業だけでなく、建築から家電、自動車、ガスに至るまで、新しいビジネスチャンスを目指して、あらゆる産業からの新規参入が相次いでいます。本書は、それらの新規参入を目指している皆様のための必読の一冊です。

なお、これまで発売されたスマートグリッドシリーズのタイトルは、以下の通り。

第1弾:『日米欧のスマートグリッド政策と標準化動向2010』

第2弾:『日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010』

第3弾:『日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011』

第4弾:『世界のスマートグリッド政策と標準化動向2011』

第5弾:『グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011』

第6弾:『スマートハウス構築のためのホームネットワーク技術2011』

第7弾:『世界のマイクログリッドと再生可能エネルギー2011』

第8弾:『スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011』

調査報告書の製品形態、および販売に関するご案内

『スマートハウスとHEMS/BEMS/CEMS最新技術動向2012』

インターネットメディア総合研究所 [編]

製品形態・販売価格一覧

発売日 :2011年11月4日(金)(好評発売中)
価格 :CD(PDF)版 89,250円(税込)
CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)
判型 :A4判
ページ数:266ぺージ

詳細、ご注文はこちらよりご覧ください。 → http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2012

弊社の調査報告書は「libura PRO(ライブラ・プロ)」からもご購入いただけます(新刊は近日登録予定)。⇒ https://libura-pro.com/

※libura PROでは、誌面イメージを確認してから、ダウンロード版/CD版/冊子版を購入していただけるだけでなく、商品の興味のある一部分(現在は章単位)だけを選んで購入したり、選んだ部分をPOD(プリント・オン・デマンド)で製本してご購入いただくことができます。

インプレスR&D インターネットメディア総合研究所の調査報告書は、お客様のご利用ニーズに合わせ、簡易製本の冊子版、CD(PDF)版をご用意しております。

目次

はじめに

第1章 スマートグリッドにおけるHEMSとBEMS、CEMSの機能と役割

1.1 東日本大震災以降のスマートグリッド

 1.1.1 今年こそ日本版スマートグリッド元年

 1.1.2 スマートメーター 5年間で急速に普及

 〔1〕次世代型の電子メーター「スマートメーター」の登場

 〔2〕今後5年以内に総需要の80%のスマートメーター導入へ

 〔3〕スマートメーターによる新しいサービス

 1.1.3 リアルタイム自動調整を可能にするスマートメーター

 1.1.4 スマートグリッドとは何か

 〔1〕少ない投資で電力需給のバランスを最適化

 〔2〕日本で活発化するスマートコミュニティの実証実験

 〔3〕国際標準化を目指して製品やシステムの開発を

1.2 スマートハウスの中核技術:HEMS

 1.2.1 期待されるスマートハウスの実用化

 〔1〕スマートグリッドの構成要素の最小単位:スマートハウス

 〔2〕新タイプの次世代型住宅:自然熱エネルギーを利用

 1.2.2 スマートハウスの構成要素とHEMSの役割

 〔1〕スマートハウスの構成要素とHEMS

 〔2〕HEMSにおける「見える化」機能と節電効果

 〔3〕10社によるHEMSアライアンスの立ち上げ

 1.2.3 スマートハウスに利用可能な標準規格

 〔1〕スマートハウスの標準規格になるか?:ECHONETとJEM-A(HA)端子

 〔2〕ECHONET:HEMSやスマートメーターへの対応

 〔3〕JEM-A(HA)端子:ホームオートメーション制御

 1.2.4 急がれる日本版スマートハウスの統一規格

 1.2.5 スマートハウスの実用化の展望と方向性

 〔1〕スマートハウス実証実験

1.3 スマートビルの中核技術:BEMS

 1.3.1 スマートビルにおけるBEMSの役割

 1.3.2 可能となってきたBEMSにおけるマルチベンダ環境

1.4 スマートコミュニティにおけるCEMSの役割

 1.4.1 地域レベルで行うエネルギー管理

 1.4.2 日本の優れたスマートグリッド技術を海外へ

1.5 震災以降、本格化するスマートグリッド

 1.5.1 日本版スマートグリッドの必要性

 1.5.2 現状の電力は送電時に44%が損失する

 1.5.3 重要な動く蓄電池としての電気自動車

第2章 HEMS/BEMS/CEMSの関連技術の標準化動向とトライアルの全体像

2.1 EMSに必要なプラットフォームの要件

 2.1.1 EMSに必要なプラットフォーム

 〔1〕HEMSの例:大和ハウス工業のスマートハウス向けプラットフォーム

 〔2〕BEMSの例:東光電気のインテリジェント・ネットワーク・コントローラ(iNC)

 〔3〕CEMSの例:日本IBMの「クラウド上の地域共通プラットフォーム」

 2.1.2 スマートハウスを囲む外部/内部インタフェース

 〔1〕ホームゲートウェイ

 〔2〕ホームICT

 〔3〕サービス

 2.1.3 スマートハウスのインタフェースやサービスの課題

 〔1〕スマートハウスの外部インタフェース

 〔2〕スマートハウスの内部インタフェース

 〔3〕スマートハウスのビジネススコープ

2.2 EMS技術/標準化動向

 2.2.1 エネルギー業界の視点から誕生した技術

 2.2.2 通信業界の視点から誕生した技術

 2.2.3 エネルギー業界と通信業界を融合させるための技術

 2.2.4 ビジネス軸に即した標準化に対する考え方

 〔1〕接続機器のマルチベンダ化

 〔2〕ビジネスのマルチベンダ化

 〔3〕サービスのマルチベンダ化

2.3 スマートグリッドに関連する国際標準化動向

 2.3.1 NIST:米国国立標準技術研究所

 〔1〕EPRI:米国電力中央研究所

 〔2〕SGIP:スマートグリッド相互運用性パネル

 2.3.2 IEEE P2030 WGで策定された「IEEE 2030-2011」標準

 2.3.3 IEC SMB SG3(スマートグリッド担当)

 2.3.4 CENELEC

 2.3.5 スマートコミュニティ・アライアンス

2.4 各種アライアンス/フォーラムの標準化活動

 2.4.1 HomePlug Powerline Alliance

 2.4.2 HomeGrid Forum

 2.4.3 HD-PLC Alliance

 2.4.4 ZigBee Alliance

 2.4.5 Z-Wave Alliance

 2.4.6 Wi-Fi Alliance

 〔1〕4者が「SEP 2相互接続推進のためのコンソーシアム」を結成

 〔2〕史上初となるWi-Fi SEP 2相互接続性の大規模デモを実施

 〔3〕IEEE 802.11s(メッシュネットワーク)標準化が完成

 2.4.7 USNAP Alliance

 〔1〕異なる無線通信インタフェースを1つのアダプタで実現

 〔2〕USNAP AllianceとEPRIがスマートグリッド用インタフェース規格を策定へ

 2.4.8 Open Smart Grid(OpenSG)

 2.4.9 ECHONET Consortium

 〔1〕ISO/IECで標準化された「ECHONET」規格

 〔2〕スマートハウス構築を目指した「ECHONET Lite規格」を発表

 〔3〕「ECHONET機器オブジェクト」を改訂

 2.4.10 Broadband Forum

 2.4.11 Femto Forum

 2.4.12 HomeGateway Initiative

 2.4.13 OSGi Alliance

 〔1〕アルカテル・ルーセントの「OSGiM2Mゲートウェイのためのソリューション」

 〔2〕Orangeの「オープンホームオートメーション基盤」

2.5 スマートハウスに関連する国内/海外トライアル

 2.5.1 日本企業5社:「ICTを用いた環境負荷低減」に関する実証実験

 〔1〕5社による実証実験の目的と内容

 〔2〕参加各社の主な実証実験の内容

 2.5.2 日本企業12社:「スマートネットワークプロジェクト」に関する実証実験

 〔1〕「住宅/EVネットワーク」グループ

 〔2〕「EVサポートネットワーク」グループ

 2.5.3 ケイ・オプティコム:宅内サービス事業「eoスマートリンク」

 〔1〕宅内サービス提供の課題とケイ・オプティコムの役割

 〔2〕eoスマートリンクの概要

 〔3〕eoスマートリングの試験サービスの目的

 〔4〕実証実験における「電力見える化サービス」の構成

 〔5〕対象世帯数を750世帯に拡大

 2.5.4 NTTスマイルエナジー:家庭向け省エネ支援サービス

 2.5.5 ドイツ政府の国家プロジェクト「E-Energy」とドイツテレコムのコネクテッドホーム「Smart Connect」

 〔1〕6地域で国家プロジェクトを展開

 〔2〕スマートハウスのための管理プラットフォーム「Smart Connect」

 〔3〕Smart Connectを支えるプラットフォームへの標準化

 2.5.6 エリクソン:「Web Smart Home Access」プラットフォーム

 〔1〕Web Smart Home Accessのイネーブラ

 〔2〕遠隔管理プロトコル「TR-069」による機能の拡張

 〔3〕Web Smart Home Accessのサービス事例

 2.5.7 サジェムコム(Sagemcom)のスマートハウス向けプラットフォーム

 2.5.8 国内/海外トライアルからの考察

2.6 事業化へ向けた技術動向の課題とその解決方法

第3章 EMSを実現するプロトコルや半導体、ミドルウェア等の要素技術

3.1 EMS(エネルギー管理システム)に関するプロトコル

 3.1.1 EMS構築に関係するプロトコルの全体像

 3.1.2 SEP 2と関連する物理媒体の関係

 〔1〕SEP 2の仕様要求と対象デバイス、サービス例

 〔2〕SEP 2の基本構成

 〔3〕SEP 2相互接続推進のためのコンソーシアムを設立

 〔4〕SEP 2と物理媒体の関係

 3.1.3 ユースケース:各種機器のエネルギー管理に必要なミドルウェア

 〔1〕「NetFront Smart Object」の仕様

 〔2〕NetFront Smart Objectの主な用途での利用例

 〔3〕電力管理を行うための家電ネットワーク化、および制御

3.2 EMS(エネルギー管理システム)に関する半導体

 3.2.1 IEEE 802標準を基本にした半導体の全体像

 〔1〕代表的な通信規格とスマートグリッドとの関係

 3.2.2 IEEE 802.11標準規格対応の半導体チップ

 〔1〕Qualcomm Atherosの「AR4100」

 〔2〕802.11n Wi-Fiモジュール「TWR-WIFI-AR4100」

 3.2.3 ZigBee対応のモジュール

 〔1〕920MHz帯への移行

 〔2〕スマートハウスの実現に必要な通信インフラ

 3.2.4 Z-Wave対応の半導体チップ/モジュール製品

 3.2.5 PLC対応の半導体チップ/モジュール製品

 〔1〕高速PLC対応の半導体チップ

 〔2〕低速PLC対応の半導体チップ/モジュール

 〔3〕屋外向けと屋内向けのPLCチップ

 3.2.6 ユースケース:スマートハウスに必要な半導体

 〔1〕マーベル社のトータルソリューション

 〔2〕マーベル社が提供するソフトウェア

 〔3〕マーベル社が提供するWi-Fi対応のリはレンスデザイン

 〔4〕ITU-T G.hn標準規格と対応LSI

3.3 EMS構築に必要なプラットフォーム・ソフトウェア

 3.3.1 TR-069(機器管理プロトコル)の基本仕様と特徴

 〔1〕TR-069を搭載した通信機器の利点

 〔2〕TR-069(機器管理プロトコル)の基本仕様

 〔3〕TR-069で提供される遠隔設定RPC

 〔4〕ACS(Auto Configuration Server)の基本仕様

 〔5〕ACSに関する各社の製品

 3.3.2 OSGiフレームワークソフトウェア

 〔1〕OSGiを搭載する通信機器の利点

 〔2〕OSGiフレームワークの仕様

 〔3〕プロビジョニングサーバの仕様

 〔4〕OSGi/TR-069で実現するライフサイクル管理

 〔5〕OSGiを用いたプラットフォームを構築する際の課題と対策

 〔6〕OSGiフレームワークソフトウェアの各社製品

 〔7〕OSGiを商品へ導入する際のユースケース:ホームゲートウェイの例

 〔8〕OSGi対応製品の開発と企業の連携

 3.3.3 OSGi、TR-069を用いたシステム構成

 〔1〕エコ対応テレメタリング・システム

 〔2〕IP-PBXへOSGiやTR-069を導入したシステム構築

 3.3.4 ユースケース:ウインドリバーのプラットフォーム(Wind River Linux Paltform for Gateays)

 〔1〕ホームゲートウェイの役割

 〔2〕「Wind River Linux Platform for Gateway」の例

第4章 HEMS/BEMS/CEMSを構成するオープン・プラットフォームと導入事例の検証

4.1 OSGiによるオープン・プラットフォームの仕組み

 4.1.1 サービスゲートウェイの登場とその機能

 4.1.2 利用するサービスとそれに対応する技術

 〔1〕ネットワークサービス提供者の増加と多様化に対する課題

 〔2〕具体例

 4.1.3 既存プラットフォームの課題

 4.1.4 既存プラットフォームの解決

 4.1.5 OSGiプラットフォームの汎用化と提供する機能

 4.1.6 スマートハウスにおける「プラットフォーム」の機能と役割

 〔1〕スマートハウスにおけるプラットフォームの目的

 〔2〕プラットフォームにおける主なサービス機能等

 〔3〕各ベンダの視点からの整理

4.2 M2Mサービスプラットフォームの構成とその特徴

 4.2.1 NECが提供するプラットフォーム

 〔1〕低コストで実現する「M2Mサービスプラットフォーム」を開発

 〔2〕ホームゲートウェイ(HGW)基盤の開発

 〔3〕ホームゲートウェイ(HGW)基盤の特長

 〔4〕ホームゲートウェイ(HGW)基盤の利用例

 4.2.2 富士通が提供するプラットフォーム

 〔1〕スマートセンシングプラットフォームの開発

4.3 ホームゲートウェイとサービスゲートウェイの役割

 4.3.1 ホームゲートウェイ(HGW)の位置づけ

 〔1〕ホームゲートウェイとパソコンのUSBの関係

 〔2〕ホームゲートウェイの仕組み

 4.3.2 ホームゲートウェイとサービスゲートウェイの役割と機能

 〔1〕ホームゲートウェイとサービスゲートウェイの定義と役割

 〔2〕ホームゲートウェイとサービスゲートウェイの機能

 4.3.3 ホームゲートウェイ/サービスゲートウェイがスマートハウスに導入された時の効果

 〔1〕サービスゲートウェイの5つのテーマ

 〔2〕サービスゲートウェイを支える「OSGi」「TR-069」

 4.3.4 現行システムの課題を解決:IT地震センサーシステムの例

 〔1〕ITK-002:センサー内蔵タイプのITKセンサー

 〔2〕AK-002 & KS-002:既存センサー接続タイプのITKセンサー

 〔3〕ITKセンサーのユースケース

4.4 ホームゲートウェイとサービスゲートウェイの製品動向

 4.4.1 NECアクセステクニカのホームゲートウェイ

 〔1〕CEATEC JAPAN2011に登場したホームゲートウェイ

 〔2〕HSEの主な仕様と機能

 4.4.2 ホームゲートウェイ/サービスゲートウェイの課題とその解決策

 〔1〕今後のホームゲートウェイ/サービスゲートウェイに関するポイント

 〔2〕ハードウェア主体からサービス主体のビジネスへの転換

4.5 プラットフォームの導入事例

 4.5.1 公表されている「プラットフォーム」サービス

 〔1〕NTT東日本/NTT西日本:サービス事業者向けの「フレッツ・ジョイント」

 〔2〕大和ハウス工業:HEMS制御によるスマートハウス

 4.5.2 ユーザー視点から考えるサービス像

 〔1〕スマートライフの未来風景/電力70%モード

 〔2〕「電力70%モード」を実現するシステム構成

 〔3〕ユーザー視点でのサービスイメージ

 〔4〕住宅設備機器の電子カタログ運用など

 4.5.3 「あるとよい」と思うサービス像

 〔1〕しゃべるホームゲートウェイ(Internet of Things)

 〔2〕ホームゲートウェイを利用する具体例

4.6 事業化へ向けたプラットフォーム構築の課題とその解決方法

 4.6.1 サービスプラットフォームの役割

 4.6.2 業種業態の連携による新事業体

第5章 スマートハウス/スマートコミュニティに関する政策動向とビジネス動向

5.1 スマートコミュニティ/スマートグリッドの市場規模

5.2 スマートコミュニティ/スマートシティの海外における取り組み

5.3 米国における政策動向とビジネス動向

5.4 欧州ドイツの政策動向とビジネス動向

5.5 アジアにおける政策動向とビジネス動向

 5.5.1 中国のスマートグリッドプロジェクト

 5.5.2 韓国のスマートグリッドプロジェクト

5.6 日本における政策動向とビジネス動向

 5.6.1 4地域で「スマートコミュニティ実証事業」を展開

 5.6.2 HEMS、BEMS、CEMSの目標値の設定

5.7 まとめ

索引


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http://www.impressjapan.jp/books/2981

監修者:合田 忠弘(九州大学大学院)、
    諸住 哲(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ページ数:384P
サイズ・判型:B5判
定価:[本体4,700円+税]

〔本書の特徴〕
今、電力網と情報通信網を統合した「次世代電力網」すなわち「スマートグリッド」が国際的に大きく注目され、さまざまな国でその取り組みが開始されています。
私たちを取り巻く社会環境は、現在、地球温暖化問題やエネルギー枯渇問題、経済危機など、人類史上まれにみる深刻な危機に直面していますが、これらを解決する救世主として登場したのが、「スマートグリッド」です。
このスマートグリッドは、大きく3つの可能性をもっています。
1つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用することによって、「電気エネルギーの面」から今後、クリーンなエネルギーを持続的に供給することが可能になることです。2つ目は、情報通信技術を活用することによって、「送配電網の運用の面」から効率的で信頼性の高い電力の供給が可能となることです。3つ目は、家庭やオフィスなどの需要家側においては、電気エネルギーの使い方をスマートにすることによって省エネルギー化を可能とするなど、「消費の面」からも新しい局面を拓くことが可能になることです。
本書は、スマートグリッド関係の分野において、国際的な標準化活動や最前線で研究開発やビジネスを展開されている執筆陣によって刊行され、スマートグリッドの全体像を集大成した内容になっています。このため、電力業界はもとより、情報通信業界をはじめ、家電業界、自動車業界に至るまで、スマートグリッドに携わる幅広い方々が、次世代のビジネス戦略を考えるうえで、大いに参考になる必読の一冊となっています。


好評発売中!
スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011
http://r.impressrd.jp/iil/GUTP2011

執筆者:江崎浩、落合秀也
ページ数:324P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
東日本大震災は、深刻な電力・エネルギー危機を引き起こし、日本における企業・産業・社会活動に対して、これまでとはまったく異なる次元から、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)を確立する必要性があることをつきつけた。
こうした背景のもとに、東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)では、新しく標準化されたスマートグリッド向けの標準プロトコル「IEEE 1888プロトコル」を用いた世界初のマルチベンダシステムを工学部2号館に構築した。それを構成する機器の相互接続試験も成功し、全学的な展開が開始されている。すでに、電力消費が年間最大となる2011年7月には、対前年同月比の30%の電力削減に成功し、今後の展開が国の内外から大きな注目を集めている。
本書は、電力・エネルギー危機に挑む、スマートグリッド組織「東大グリーンICTプロジェクト」の「IEEE 1888」システムを活用した節電対策の具体例を見ながら、新しいキャンパスやビルの方向性を示しつつビジネスの可能性と展開を解説していく。


好評発売中!
スマートグリッドシリーズ第6弾
スマートハウス構築のためのホームネットワーク技術2011
http://r.impressrd.jp/iil/HomeNetwork2011

執筆者:丹 康雄(北陸先端科学技術大学院大学 教授)
ページ数:232P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド/スマートハウス時代に、ホームネットワークが急速に注目を集め、新しい標準が次々に登場しています。ホームネットワークはアプリケーション分野の面、技術要素の面のどの観点から見ても多数の要素が互いに関連する複合型のシステムとなっています。そのため、特定の技術が開発されれば一気に実現できるようなシステムではありません。それぞれの部分にあった適切な技術を組み合わせ、全体としては一般ユーザーが運用していける使いやすいシステムを構築する必要があるのです。
特に、スマートグリッドとしての制御系の波は、これまでのホームネットワークのシステムに、無線やPLC(電力線通信)などの通信技術の進展がみられたのに加えて、家庭内に創エネ、蓄エネの機器が出現し、重要なものになってきています。
さらに2011年3月11日に起きた災害は、人々の意識や社会的ニーズを一変させ、それまではコスト面などで敬遠されてきた再生可能エネルギーおよび分散電源の活用や、快適さを失うおそれから取り組みが足踏みしていた消費エネルギー抑制諸技術の実現に、改めて研究開発の方向性が向かいつつあります。
本書は、現時点の最新技術の羅列ではなく、過去からの技術の蓄積に基づき、スマートハウスを実現するために必要となるホームネットワークの一連の技術について述べたものになっています。


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スマートグリッドシリーズ第4弾
世界のスマートグリッド政策と標準化動向2011
[実用期に入ったNIST/IEC/IETF/IEEEの全仕様とサイバーセキュリティ]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartGrid2011

執筆者:新井宏征/名和利男/湧川隆次
ページ数:328P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


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スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
http://r.impressrd.jp/iil/SmartMeter2011

執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。


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スマートグリッドシリーズ第2弾
日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010
[Smart Energy Profile 2.0によるスマートグリッドの新展開]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2010

執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!<第3回>=SMB SG3(スマートグリッド担当)が目指すもの=

月, 2011-10-24 00:44

スマートハウスからスマートコミュニティへと進展をみせるスマートグリッドの世界は、電力・エネルギー危機を背景に、新しいビジネスを求めて、日本を含むアジアや、米国、欧州においても、活発な展開を見せている。ここでは、スマートグリッドの国際標準化を推進しているIEC(国際電気標準会議)/SMB(標準管理評議会)のSG3(スマートグリッド担当)の日本代表である、九州大学大学院 電気システム工学部門の合田忠弘(ごうだただひろ)教授に、スマートグリッドについて国際標準化の動向や、世界各国の取り組みをお聞きした。また、合田教授がマイクログリッドやスマートグリッドに取り組んだ動機をはじめ、IECとNISTやIEEEなど他の標準化団体との連携や、スマートグリッドが拓く新しいビジネスモデル等もお聞きした。

第3回:スマートグリッドの標準化に向けた各国の動き

≪1≫IECはすでに「スマートグリッド標準化ロードマップ1.0」を発表

■ 前回(第2回)はIEC SMB SG3(スマートグッド担当)の活躍についてお聞きしましが、具体的な成果としては、どのようなものがありますか。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 そうですね。現在、スマートグリッドに関係する標準は、たくさんがありますのでIEC/SG3では、2010年6月に「IEC Smart Grid Standardization Roadmap(IECスマートグリッド標準化ロードマップ)1.0」(http://www.iec.ch/smartgrid/roadmap/)を公表し、スマートグリッドに関連した規格や、それらの規格を策定しているTC(Technical Committee、専門委員会)やSC(Subcommittee、分科委員会)を整理しました(図1)。

ご存じのように、すでにNISTは、2010年1月に「NIST Framework and Roadmap for Smart Grid Interoperability Standards, Release 1.0(スマートグリッドの相互接続性のためのフレームワークとロードマップ)」を発表しています。NISTのリリース2は2011年末に予定されているとのことですが、現在、IEC版のロードマップのバージョンアップも策定中で、来年(2012年)には、発表できると思います。


図1 IECのスマートグリッド関連のTC(技術委員会)の内容の例(クリックで拡大)

≪2≫IECとNISTはどのような関係にあるか?

■ そこでちょっと聞きしたいのですが、IECとNISTの関係はどのようになっているのでしょうか。

合田 はい。IECとNISTの間では、基本的にはリエゾン(連携)関係はありますので時々情報交換などが行われています。例えば、2009年11月に米国のデンバーで、SGIPの会議が行われたときに、丁度そこで第2回IEC/SG3の会合も開催されました。

■ SGIPとはどのような組織ですか。

合田 SGIP(Smart Grid Interoperability Panel)というのは、NISTが2009年11月に立ち上げた「スマートグリッド相互接続性パネル(委員会)」で、この組織は、スマートグリッドのセキュリティや相互接続性標準の開発などを目指しています。また、スマートグリッド関連の標準を開発するために、その優先順位を決める行動計画(PAP:Priority Action Plans)の策定なども担当しています。

■ なるほど。

合田 デンバーでのIEC/SG3の会合の前、IECとSGIPやNISTのトップとの会合を開催して、これからお互いに協力関係をもって連携(リエゾン)していきましょうということになりました。このように、基本的にはリエゾン関係にあるのですが、お互い独立した組織ですからそこは配慮しながらの連携となります。

■ しかし、NISTがロードマップを出すと、マスコミは賑やかに扱いますが、IECがロードマップを出してもあまり大きな話題にならないような印象を受けますが、この辺はいかがでしょうか。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 IECとNISTは、基本的に組織構成や目的が異なっていますし、活動スタイルも異なります。NISTの場合は、組織の参加メンバーは、世界中から何百人も参加しています。ところが、IECの場合は、第2回でもお話ししたように、個人や企業単位ではなく、国単位でメンバーを決めて標準化を行う組織となっています。おっしゃるように、確かに広く知られていないところもありますが、しかし、規格という面でからみますと、NISTが主導する規格というのはあくまでも米国の規格なのです。それに対し、IECの規格は国際標準規格(世界規格)となりますので、両者の違いははっきりしています。

■ なるほど。

合田 また、極端な言い方をしますと、IEC側からみると、NISTという組織は規格をつくるところではなく、米国の調達仕様を策定しているという方が正しいと思います。米国では、IETF(インターネット技術標準化委員会)やIEEE(米国電気電子学会)が実際の規格を策定しているのです。


≪3≫IECは標準規格の策定の組織、NISTは調達仕標策定の組織

■ NISTは、そのようないろいろな標準を束ねて、米国の調達仕様をつくる組織なのですね。

合田 ええ。ですからIECはNISTとリエゾン関係をとって活動をしてはいますが、粛々と国際標準の作成活動を展開しています。

■ 当編集部は、どちらかというとスマートグリッドをIT関係の視点から見ています。IECは、電力関係から見ていますね。米国の場合はITのベンダー側の企業が大変熱心ですね。しかし、実際のスマートグリッドの規格になってくると、NISTのロードマップでは、多くのIECの規格が参照されています。この辺の微妙なニュアンスが、伝わりにくいような気がするのですが。

合田 その辺は、米国の場合、多分電力関係の規格をつくらないことを基本にして、そのときどきで、一番いい規格(IEC規格がよければIEC規格)を適用して、使っていく(準拠する)という格好になると思うのです。準拠すべきものがない場合は、規格をつくるということになるのです。例えば、IECで通信関係の標準化は、前述した図1に示すように、TC57(電力システム管理及び関連する情報交換)という技術委員会が担当していますが、ここで作成した規格を、NISTも使用するというようになっています。


≪4≫各国のスマートグリッドの国際標準化への取り組み
合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

■ ありがとうございました。今のお話と関連して世界各国のスマートグリッドの標準化への特徴や取り組みはいかかでしょうか。

合田 はい。図2、図3をご覧になってください。欧州には、IEC/ISOの他に、CEN(欧州標準化委員会、注1)、CENELEC(欧州電気標準化委員会)という規格団体があって、CENはISOに対応し、CENELECはIECに対応していますが、これは欧州の規格を策定する組織なのです。その上に、国際規格を検討するIEC/ISOがあるのです。ですから、CEN/CENELECで検討し策定された規格は、IEC/ISOにも挙げられてくる可能性が強いのです。

注1 CEN: European Committee for Standardization、欧州標準化委員会 注2 CENELEC European Committee for Electrotechnical Standardization、欧州電気標準化委員会
図2 スマートグリッドに関する各国の国際標準化活動の特徴(クリックで拡大)
図3 各国のスマートグリッドの国際標準化への取り組み(クリックで拡大)

■ 図3の中の欧州のところに、ENTSO-Eと言う聞きなれない組織がありますね。

合田 はい、ENTSO-Eは「エンソ・イー」と読むのです。European Network of Transmission System Operators for Electricityの略で、欧州電力系統運用者ネットワークのことです。

ENTSO-Eはベルギーに本部があって、ここでいろいろな電気関連の規格を精力的につくっています。また図3に、(系統容量828GW、34ヵ国、42個のISO)と書かれていますが、これは、ENTSO-E傘下には、欧州34ヵ国、42の系統運用事業者(ISO:Independent System Operator)があり、系統容量で言うと828GW(日本の4倍強)を管理下においていると言う意味です。IECは、こういう組織とも関連をもちながら活動しています。

そういう面から見ると、日本の規格をつくる体制は欧州に比べて若干弱いように感じます。

■ そうなのですか。日本は結構リードしているという感じがしていましたが。

合田 いや、製品の面ではリードしている部分があるかもしれませんが、規格という面ではやっぱり弱いのではないかなと思いますね。

日本の役所にも規格を対応するところがありますが、人数がまったく少ない状況です。例えば、韓国の韓国技術標準院(KATS:カッツ。Korean Agency for Technology and Standards)は、韓国政府の中の規格担当部門ですが、職員は数百人で、国を挙げて標準化活動をしています。

これに対して、日本では、経済産業省の基準認証政策課の中の1つのグループが規格を担当しているということですから、全然人数が違います。NISTも、組織全体(2011年10月現在の職員数は2,900名)が規格に関係しているわけではありませんが、そのうち中の何割かの人数が規格を担当しています。中国も、スマートグリッド対応だけでも、国家電網公司内の数十人のグループが担当しています。各国とも標準規格というものに相当力を入れているというのが現在の状況です。

(第4回に続く)


バックナンバー

<新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!>

第1回:日本におけるスマートグリッド/マイクログリッドの始まり
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110925/854

第2回:IEC SMBに、スマートグリッド戦略グループ(SG3)を設立
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111010/855

第3回:スマートグリッドの標準化に向けた各国の動き
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111023/856

第4回:20XX年に向けた「新しい電力システムの提案」とその構築
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111111/858

第5回(最終回):日本が目指すべきスマートグリッドの方向性
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111128/859


プロフィール

合田忠弘(ごうだ ただひろ)氏

現職:
九州大学大学院 システム情報科学研究院 電気システム工学部門(電気エネルギー・環境工学講座担当)教授 工学博士

【略歴】
1973年3月 大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。
1973年4月 三菱電機(株)入社。電子計算機やマイクロプロセッサを使用した電力系統の保護制御システム(系統安定化・事故波及防止システムや電圧無効電力制御システムなど)の開発・製造、パワーエレクトロニクスや電力自由化・規制緩和関連システム(電力取引関連システムやPPS 向け需給制御ステムなど)の開発・製造、系統解析シミュレータやマイクログリッドの開発に従事。同社の電力系統技術部長、電力流通システムプロジェクトグループ長を歴任。
2006年3月 三菱電機(株)を退社。
2006年4月より、現職。電力系統の安定度解析やマイクログリッドおよびスマートグリッドの運用制御方式の研究を実施。

<受賞・学会活動他>
1980年 日本電機工業会進歩賞、1991年 電気学会論文賞を受賞。工学博士。
2006年 電機工業会功労賞受賞

<主な著書>(いずれも共著)
「ITが拓く電力ビジネス革命」:オーム社(2002年)。「マイクログリッド」:(社)日本電気協会新聞部(2004年)。「エネルギーの貯蔵・輸送」:NTS社(2008年)。「スマートグリッドの構成技術と標準化」:日本電気協会(2010年)。「スマートグリッド教科書」:インプレスジャパン(2011年)。


インプレスR&D刊行の関連書籍

好評発売中!
インプレス標準教科書シリーズ スマートグリッド教科書
http://www.impressjapan.jp/books/2981

監修者:合田 忠弘(九州大学大学院)、
    諸住 哲(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ページ数:384P
サイズ・判型:B5判
定価:[本体4,700円+税]

〔本書の特徴〕
今、電力網と情報通信網を統合した「次世代電力網」すなわち「スマートグリッド」が国際的に大きく注目され、さまざまな国でその取り組みが開始されています。
私たちを取り巻く社会環境は、現在、地球温暖化問題やエネルギー枯渇問題、経済危機など、人類史上まれにみる深刻な危機に直面していますが、これらを解決する救世主として登場したのが、「スマートグリッド」です。
このスマートグリッドは、大きく3つの可能性をもっています。
1つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用することによって、「電気エネルギーの面」から今後、クリーンなエネルギーを持続的に供給することが可能になることです。2つ目は、情報通信技術を活用することによって、「送配電網の運用の面」から効率的で信頼性の高い電力の供給が可能となることです。3つ目は、家庭やオフィスなどの需要家側においては、電気エネルギーの使い方をスマートにすることによって省エネルギー化を可能とするなど、「消費の面」からも新しい局面を拓くことが可能になることです。
本書は、スマートグリッド関係の分野において、国際的な標準化活動や最前線で研究開発やビジネスを展開されている執筆陣によって刊行され、スマートグリッドの全体像を集大成した内容になっています。このため、電力業界はもとより、情報通信業界をはじめ、家電業界、自動車業界に至るまで、スマートグリッドに携わる幅広い方々が、次世代のビジネス戦略を考えるうえで、大いに参考になる必読の一冊となっています。


最新刊
スマートグリッド向け新プロトコル「IEEE 1888」の全容と省エネ戦略2011
http://r.impressrd.jp/iil/GUTP2011

執筆者:江崎浩、落合秀也
ページ数:324P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
東日本大震災は、深刻な電力・エネルギー危機を引き起こし、日本における企業・産業・社会活動に対して、これまでとはまったく異なる次元から、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)を確立する必要性があることをつきつけた。
こうした背景のもとに、東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)では、新しく標準化されたスマートグリッド向けの標準プロトコル「IEEE 1888プロトコル」を用いた世界初のマルチベンダシステムを工学部2号館に構築した。それを構成する機器の相互接続試験も成功し、全学的な展開が開始されている。すでに、電力消費が年間最大となる2011年7月には、対前年同月比の30%の電力削減に成功し、今後の展開が国の内外から大きな注目を集めている。
本書は、電力・エネルギー危機に挑む、スマートグリッド組織「東大グリーンICTプロジェクト」の「IEEE 1888」システムを活用した節電対策の具体例を見ながら、新しいキャンパスやビルの方向性を示しつつビジネスの可能性と展開を解説していく。


好評発売中!
世界のマイクログリッドと再生可能エネルギー2011
http://r.impressrd.jp/iil/Microgrid2011

執筆者:新井 宏征
ページ数:206P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
東北地方を中心に、日本の歴史上、最大級の被害を与えた東日本大震災(2011年3月11日発生)は、東京電力管内の福島第一原子力発電所をも直撃しました。近年では経験することのなかった電力危機に直面し、従来の大規模な発電の仕組みに頼らない発電方法に、今、注目が集まっています。
本書では、近年のスマートグリッドの取り組みの高まりや、震災後のエネルギー計画の見直しなどの背景を踏まえたうえで、マイクログリッドを構成する技術やそのビジネス動向、さらに活発化する世界のマイクログリッドプロジェクトの動向などを解説しています。


好評発売中!
標準化/特許/知的財産戦略2011
http://r.impressrd.jp/iil/IPstrategy2011

執筆者:平松 幸男(大阪工業大学大学院 教授)、 小町 祐史(大阪工業大学 教授)
ページ数:138P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
国際的に、標準化/特許/知的財産が、国や企業、大学などの今後の展開に大きな影響を与えるキーワードとして注目を集めています。そのようななか、特許を収益につなげる知的財産戦略が浮上しています。
そこで本書では、標準化と特許の歴史から振り返り、それが時代とともにどのように変遷してきたかを見ることによって、私たちが置かれた現状に対する理解を進めたうえで、「IT」「エレクトロニクス」「通信」「エネルギー環境」等の産業技術分野において標準化が今後、企業にとってどのような意義をもつのかを考えます。
また、標準化の場にはどのようなものがあるのか、諸外国は標準化にどのようにとり組んでいるのか、さらに特許をはじめとする知的財産と標準化の関係は何か、政府と大学の役割は何かなどを考えたうえで、日本企業が今後どのように標準化にとり組むべきかについて考えます。


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スマートグリッドシリーズ第6弾
スマートハウス構築のためのホームネットワーク技術2011
http://r.impressrd.jp/iil/HomeNetwork2011

執筆者:丹 康雄(北陸先端科学技術大学院大学 教授)
ページ数:232P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド/スマートハウス時代に、ホームネットワークが急速に注目を集め、新しい標準が次々に登場しています。ホームネットワークはアプリケーション分野の面、技術要素の面のどの観点から見ても多数の要素が互いに関連する複合型のシステムとなっています。そのため、特定の技術が開発されれば一気に実現できるようなシステムではありません。それぞれの部分にあった適切な技術を組み合わせ、全体としては一般ユーザーが運用していける使いやすいシステムを構築する必要があるのです。
特に、スマートグリッドとしての制御系の波は、これまでのホームネットワークのシステムに、無線やPLC(電力線通信)などの通信技術の進展がみられたのに加えて、家庭内に創エネ、蓄エネの機器が出現し、重要なものになってきています。
さらに2011年3月11日に起きた災害は、人々の意識や社会的ニーズを一変させ、それまではコスト面などで敬遠されてきた再生可能エネルギーおよび分散電源の活用や、快適さを失うおそれから取り組みが足踏みしていた消費エネルギー抑制諸技術の実現に、改めて研究開発の方向性が向かいつつあります。
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スマートグリッドシリーズ第5弾
グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011
[太陽電池/LEDテレビから電気自動車までの新戦略を解明]

http://r.impressrd.jp/iil/GreenSemicon2011

執筆者:津田建二(国際技術ジャーナリスト)
ページ数:150P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 89,250円(税込)
   CD(PDF)+冊子版 99,750円(税込)

〔本書の特徴〕
半導体は今や、ハード指向からソフトウェアをのせる時代に進化しています。人間の知恵を埋め込んだ新しい半導体が次々と生まれ、スマートフォンやタブレットPCをはじめ、新しい電子機器が生まれてきています。私たち人類の知恵を実現してくれるのが半導体であるからこそ、将来に向けてCO2を削減し、青い地球を維持するために欠かせない環境技術を開発し継続していくことと、半導体技術は一体なのです。
本書は、半導体を使ってグリーン化が進み、今後の推進可能な分野を、調査データと技術解説の両方から解説しています。
半導体産業を通してスマートグリッド関連ビジネスを推進している企業だけでなく、新しい家電機器をはじめ、電気自動車やスマートハウス関連の新ビジネスを推進する企業の、今後の戦略的な参考資料としての一冊となっています。


好評発売中!
スマートグリッドシリーズ第4弾
世界のスマートグリッド政策と標準化動向2011
[実用期に入ったNIST/IEC/IETF/IEEEの全仕様とサイバーセキュリティ]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartGrid2011

執筆者:新井宏征/名和利男/湧川隆次
ページ数:328P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


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スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
http://r.impressrd.jp/iil/SmartMeter2011

執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
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ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
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本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!<第2回>=SMB SG3(スマートグリッド担当)が目指すもの=

月, 2011-10-10 13:25

スマートハウスからスマートコミュニティへと進展をみせるスマートグリッドの世界は、電力・エネルギー危機を背景に、新しいビジネスを求めて、日本を含むアジアや、米国、欧州においても、活発な展開を見せている。ここでは、スマートグリッドの国際標準化を推進しているIEC(国際電気標準会議)/SMB(標準管理評議会)のSG3(スマートグリッド担当)の日本代表である、九州大学大学院 電気システム工学部門の合田忠弘(ごうだただひろ)教授に、スマートグリッドについて国際標準化の動向や、世界各国の取り組みをお聞きした。また、合田教授がマイクログリッドやスマートグリッドに取り組んだ動機をはじめ、IECとNISTやIEEEなど他の標準化団体との連携や、スマートグリッドが拓く新しいビジネスモデル等もお聞きした。

第2回:IEC SMBに、スマートグリッド戦略グループ(SG3)を設立

≪1≫IECの組織構成と戦略グループ(SG)の位置づけ

■ 合田先生が、本格的にスマートグリッドに取り組まれたのはいつ頃からでしょうか。また、IEC(国際電気標準会議)の活動に参加された時期はいつ頃でしょうか。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 それでは、図1に示す国際標準化組織であるIEC(International Electro-technical Commission、国際電気標準会議)の組織を見ながら説明しましょう。

図1に示すように、IEC総会の下にある標準管理評議会(SMB:Standardization Management Board。注1)の下には、「セクターボード」(SB、注2)や、2009年4月に広範な分野が関連するスマートグリッドの標準化を推進するため新たに設立された「戦略グループ」(SG:Strategic Group)、さらに複数の専門委員会(TC:Technical Committee)などがあります。

注1 SMB:Standardization Management Board、SMBの下にある、戦略グループ(SG:Strategic Group)やセクターボード(SB:Sector Board)と連携しながら、専門委員会(TC:Technical Committee)の設置や改廃、TCの幹事国の割り当ておよび議長の任命、TCの業務の調整などを行う組織。 注2 SB:Sector Board、セクターボード。SMB(Standardization Management Board,標準管理評議会)直下に位置し、産業界の意見をIEC の標準化作業に反映させるために複数のTC(技術委員会)を横断的にカバーする評議会

■ なるほど。IECのスマートグリッドについては、この戦略グループ(SG:Strategic Group)が標準化の要となっているのですね

合田 そうですね。私がIECの標準化に取り組むようになったのは、実際にIECの標準を策定するTC(技術委員会)を横断的に関与するセクターボード(SB:Secter Board)という組織に所属してからです。


図1① 欧州の国際標準化 組織:IECの組織と戦略グループ(SG)の位置づけ(クリックで拡大)
〔参考サイト http://www.jisc.go.jp/international/iec-guide.html〕

当時、このセクターボード(SB)には、図1②に示すように、

(1)SB1:送変電および配電分野を担当〔SB1は、その後、ACTAD(Advisory Committee on Electricity Transmission and Distribution、送変電および配電)という名称に変更された。2010年9月〕
(2)SB3:産業オートメーションシステムを担当
(3)SB4:通信ネットワーク分野を担当

と3つがあり、私はSB1に所属することになりました。これは、世界各国から、約20名程度のメンバー構成でした。

■ いつ頃のことですか。

合田 はい、2004年頃でした。丁度このころ、SB1で次世代電力ネットワークを検討する機運が高まり、電力機器を中心とした電力網だけでなく効率的な電力系統運用を踏まえた次世代電力制御の世界標準を議論する必要が出てきました。この時期、日本電機工業会(JEMA)でこの関係の検討委員会の委員長をしていた関係でIECに参加することになりました。この時期は、まだスマートグリッドということではありませんでした。

これ以降規格づくりに関与するようになっていきます。この活動の成果の一つに、UHV(Ultra-High-Voltage)の標準電圧として1100kV(キロボルト)をIEC規格とした件があります。これは、日本で使用されているUHVの電圧(1100kV)が、IECの標準電圧として採用されたのです。このような標準化活動の中で、SB1でスマートグリッドのような新たなテーマを検討していきましょうということになりました。


≪2≫IEC SMB内に4つのSG(戦略グループ)を設置

■ その当時から「スマートグリッド」という用語が使用されていたのですか。

合田 いいえ、その時点ではスマートグリッドではなく、日本は「マイクログリッド」と言い、それから欧州は「スマートグリッド」と言うというような状態で、現在いわれている「スマートグリッド」とは若干異なるイメージです。

このような活動をSB1でやっているうちに、前述した図1の②に示す、TC8(第8技術委員会)もスマートグリッドを取り上げましょうという話が起こってきたのですね。

そこで、TC8のほうから先に、SMBの総会にスマートグリッドの国際標準化に関する提案が出されたのです。その審議の結果、SMBの下に表1に示すように、「戦略グループ」(SG:Strategic Groups)が設置され2007年から2009にかけて、順次、SG1からSG2、SG3、SG4と4つのグループが設立されました。このうち、2008年に設立されたSG3(Strategic Group on Smart Grid)がスマートグリッドを担当することになり、私が日本の代表として参加することになったのです。

表1 SMB内の4つSG(Strategic Groups、戦略グループ) SG内 容設 立 SG 1Energy efficiency and renewable resources
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
エネルギー効率と再生可能エネルギー2007年 SG 2Standardization of Ultra High Voltage Technologies (UHV)
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
超高電圧技術の標準化(交流1000kV以上、直流800kV以上)2008年 SG 3Smart Grid
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
スマートグリッド装置のインターオペラビリティを実現するためのフレームワーク(プロトコルや標準モデルを含む)の開発等2008年 SG 4LVDC distribution systems up to 1500V DC
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
スマートグリッド装置のインターオペラビリティを実現するためのフレームワーク(プロトコルや標準モデルを含む)の開発等2009年

■ その当時、日本は、スマートグリッドに対する取り組みというのは、どのような状況でしたか。

合田 そうですね。前回お話ししたように、日本は、世界から比べますと、マイクログリッドという名前でしたが、非常にしっかりした取り組みが行われていました。例えば、2003年度から2007年度の5カ年にわたって、青森県八戸市や愛知県瀬戸市・常滑市、京丹後市などで、マイクログリッドの実証プラントがつくられ研究が行われましたが、これは、世界から比べても大変進んでいました。


≪3≫「スマートグリッド」は2009年からブームへ

■ そのあとにスマートグリッドのブームが来たのですか。

合田 スマートグリッド(次世代電力網)という用語は、2009年1月に誕生した米国のオバマ政権が、「グリーン・ニューディール」政策を展開し、2009年に米国の景気対策向けに、合計45億ドル(約4,000億円)の予算をスマートグリッド技術開発関連に投じることを決定したことから、急速に注目され、ブームとなりました。

第1回にも掲載した図2に示すように、それまではいろいろな言葉が使われていました。

図2 日本におけるスマートグリッドの検討経緯(クリックで拡大)

■ はい、そうでしたね。

合田 1990年代後半頃から、次世代の電力ネットワークをどうするかという話が始まっていて、この当時は、ちょうど電力の規制緩和(電力自由化時代)という動きがあり、電力(サプライサイド:電力サイド)の世界をどのように変えていくのかという議論が、活発に行われました。このような議論を経て、2000年代前半には、分散型電源や地球環境問題などがクローズアップされ、今度は、需要家サイド(デマンドサイド)をどうするかということが注目されるようになり、日本はマイクログリッドの研究開発が進みました。この頃に、HEMS(宅内エネルギー管理システム)やBEMS(ビル・エネルギー管理システム)なども注目されました。

■ なるほど。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 一番最初にマイクログリッドという言葉を使い出したのは米国でしたが、この頃に、マイクログリッドや、インテリグリッド(米国)、スマートグリッド(欧州)というようなことが言われるようになってきたのです。

それが2000年代後半(2010年頃)の低炭素社会時代になると、今度は、電力側(サプライサイド)と需要家側(デマンドサイド)の両者がどのように協調させていくかということが重視されるようになりました。

この頃になると、スマートメーターやデマンドレスポンス(DR:電力需給の制御)、需要家側に設置される分散形電源と従来の大型発電機による双方向電力潮流(電力側⇔需要側)などが注目され、さらに、双方向通信などのICT技術を駆使して電力を制御するという「スマートグリッド」(次世代電力網)の姿が具体的に見えるようになってきました。

■ ようやく整理されてきたということですか。

合田 その通りです。スマートグリッドというのは、昔言われていたスマートグリッドよりも進化していて、電力側の電力ネットワーク(送電網)を変えること同時に、、需要家をどうするのか、さらには両者のバランスをも意識して議論され出したことが重要である、というふうに私は理解をしています。


≪4≫米国に3,000社もの電力会社があるのは特殊な事情

■ ここで、電力側(電力供給会社)の状況についてお聞きしたいのですが、日本と欧米の違いなど。

合田 歴史的に見ますと、日本も紆余曲折(例;昭和の初期には日本に電力会社が850社もあった)して、現在は、10電力会社に集約されていますが、この状況は、欧州の電力会社も日本の状況に似て、集約されています。ただ、欧州の場合は日本と違って陸続きになっていることや欧州連合(EU)など国同士の協力関係もあるため、電力の相互融通が活発です。ですから競争相手は、国内だけでなく国外の企業も競争相手となります。

例えばフランスの場合は、最大の電力会社としてEDF(Électricité de France、フランス電力公社)がありますが、このほか、EDFに比べてシェアの小さいSNET、CNR、SHEMなどの発電会社があります。このほか、欧州の場合は、ライバルとして自国ではなく、国外の発電・配電会社があります。

イタリアの大手電力会社エネル(Enel SpA)は、イタリア国内で独占的なシェアを持ち、国際的にも上位に位置する電力会社で、海外でも発電を行う一方、フランスから電力を購入しています。ドイツのエーオン(E.ON)は、電力・ガスなどを供給する欧州でもトップクラスの大手電力・エネルギー会社です。ですから欧州は、どちらかというと日本に近いような感じですね。

■ すると、現在、電力会社が3,000社もあるといわれている米国は、国際的に見て特殊な状況なのですね。

合田 そうですね。ただ電力の自由化が起こったときに、例えば英国などは、国営(電力庁)の発電局が、1999年の電力自由化法の成立によって発電3社と送電1社に分割民営化されたのをはじめ、さらに50社くらいの新規参入企業がありました。また、各地区配電局(12局)も地域配電会社に民営化されたりした時期もありました。

■ なるほど。

合田 そのような電力の自由化状況は、現在でも多少の違いはありますが、ある時期まではすすんだのですが、その時期以降はそのままで続いてきていると思います。というのは、米国のカリフォルニア州の、カリフォルニア・ガス・アンド・エレクトリック(Pacific Gas and Electric Company, PG&E)が2000年のカリフォルニア電力危機の際に経営危機に陥り、つぶれたということがありました。それからエンロン(米国テキサス州ヒューストン)の巨額な不正経理問題など明るみに出て、倒産(2001年12月)する問題が起こったりしました。このため、私は、あの時点から、電力の自由化というのは止まってしまっていると思っています。ですから、その時点から電力会社の形態自身は、あまり変わっていないのではないかなと思っています。


≪5≫IEC SMB SB1(セクターボード1)からSG3への進展

■ なるほど。そういう動きの中で、合田先生がIEC SMB SG3(スマートグリッド担当)の日本の代表として、活躍されるようになられた背景についてお話いただけますか。


合田 忠弘教授
(九州大学大学院、
IEC SMB SG3日本代表)

合田 SG3の日本代表になったいきさつについて明確なことは、自分でもわからないところがありますが、ただSG3を担当する前に、先ほど申し上げましたように、SMBのSB1(セクターボード1:送変電および配電分野を担当)の委員をずっとやっていたことと関係があったのではないかという気がします。このSB1ではスマートグリッドや、あるいは次世代電力ネットワーク、マイクログリッドなどをIECで取り組もう、というような議論をしていたからです。

■ なるほど。ところで、その当時(2007年〜2008年頃)、日本の電気学会とか、いわゆる電気関係の団体などは、スマートグリッド関係への取り組みとか、議論はどのような状況でしたか。

合田 電気学会では、学会の活動としてマイクログリッドなどのテーマをいろいろ議論をしていましたし、それから、このIEC SMB SB1に対しても、国内の対応委員会がありまして、そこに電気学会やいろいろな組織が参加していました。ですから、このSB1に日本の代表が参加し議論する場合は、日本としての意見をまとめるため、SB1対応委員会で議論しました。具体的には、電気学会をはじめ、経産省から規格担当者や、日本規格協会の中に設置されたAPC(IEC Activities Promotion Committee of Japan, 財団法人 日本規格協会 IEC活動推進会議)などのメンバーが参加していました。


≪6≫IEC SMB SG3では、3つのグループがスマートグリッドの規格を策定

■ その後、スマートグリッドは、SG3が担当するとのことでしたが、SG3ではどんなことが議論されていて、各国のメンバーはどんな思いで参加しているのでしょうか。

合田 スマートグリッドというのは、これからの電力ネットワークの形態を決めるようなものですね。それで、一口に電力ネットワークといっても、非常に広範囲なものが含まれますね。ですから、うまく標準規格をつくっていかないと、各国でばらばらになってしまうため、とにかくしっかりした統一的な規格をつくっていこうということで、各国も非常に力を入れています。

■ それは素晴らしいですね。

合田 しかし、スマートグリッドの取り組みについては、各国によって大分温度差がありまして、例えば、一番最初のSG3を立ち上げるとき(2008年頃)に、IECに参加している世界中の国(参加国:81ヵ国、2011年9月現在。http://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:5:0)に、参加しませんかと挙手を求めたときに、最初に手を挙げたのは13カ国しかなかったのです。このように、当時、興味を持っている国が非常に少なかったのです。参考までに、表2に、現在のIEC SMB SG3(スマートグリッド担当)の役員構成(2011年9月現在)を示します。

表2 IEC SMB SG3(スマートグリッド担当)の役員構成(2011年9月現在) 構成員氏 名国 名 議長Mr Richard SchombergFRフランス 委員1Mr Mark R. AmosAUオーストラリア 委員2Mr Xiaomin BaiCN中国 委員3Mr Santiago Blanco PéreESスペイン 委員4Ken CairdUS米国  委員5Mr Antonio Marcos CamposBRブラジル 委員6Teus de ZwartNLオランダ 委員7Mr Eugenio di MarinoITイタリア 委員8Mr Karl ElfstadiusSEスウェーデン 委員9Mr Tadahiro Goda(合田忠弘)JP日本  委員10Mr Eckardt GüntherDEドイツ 委員11Mr Tae-Wan KimKR韓国 委員12Mr Ivano LabricciosaCAカナダ 委員13Mr Eric MewhinneyCAカナダ 委員14Mr Thomas SchaubCHスイス 委員15Mr John SinclairGBイギリス 委員16Mr Serge VolutFRフランス 〔出所:http://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:85:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:4272,25〕

■ そうだったのですか。それでは、13カ国でスタートしたのですね。

合田 はい。アジアからは、日本、中国、韓国で、米国、カナダとブラジル、あとは欧州でした。その後、オーストラリアやスペインが参加し、現在は15か国が参加しています。SG3の会合は、年に2回〜3回ぐらいの間隔で開かれています。

■ 具体的な活動テーマは、どのようなものでしょうか。

合田 そうですね、SG3全体の活動のほかに、次の3つのグループをつくっています。

【第1グループ】ロードマップの策定
第1グループは、どのようなステップでスマートグリッドの規格を策定していくかという「スマートグリッドのロードマップ」をつくるグループです。

【第2グループ】基本アーキテクチャーの策定
第2グループは、スマートグリッドの基本アーキテクチャーを検討し策定するグループです。

【第3グループ】ユースケースの策定
第3グループは、スマートグリッドがどのように利用されるかという、ユースケースの策定を行うグループです。

一応、各国はどれかのグループに属するということになっていまして、私(日本)はユースケースのグループに参加しています。

(第3回に続く)


バックナンバー

<新国際標準をつくるIECのスマートグリッド戦略を聞く!>

第1回:日本におけるスマートグリッド/マイクログリッドの始まり
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110925/854

第2回:IEC SMBに、スマートグリッド戦略グループ(SG3)を設立
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111010/855

第3回:スマートグリッドの標準化に向けた各国の動き
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111023/856

第4回:20XX年に向けた「新しい電力システムの提案」とその構築
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111111/858

第5回(最終回):日本が目指すべきスマートグリッドの方向性
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20111128/859


プロフィール

合田忠弘(ごうだ ただひろ)氏

現職:
九州大学大学院 システム情報科学研究院 電気システム工学部門(電気エネルギー・環境工学講座担当)教授 工学博士

【略歴】
1973年3月 大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。
1973年4月 三菱電機(株)入社。電子計算機やマイクロプロセッサを使用した電力系統の保護制御システム(系統安定化・事故波及防止システムや電圧無効電力制御システムなど)の開発・製造、パワーエレクトロニクスや電力自由化・規制緩和関連システム(電力取引関連システムやPPS 向け需給制御ステムなど)の開発・製造、系統解析シミュレータやマイクログリッドの開発に従事。同社の電力系統技術部長、電力流通システムプロジェクトグループ長を歴任。
2006年3月 三菱電機(株)を退社。
2006年4月より、現職。電力系統の安定度解析やマイクログリッドおよびスマートグリッドの運用制御方式の研究を実施。

<受賞・学会活動他>
1980年 日本電機工業会進歩賞、1991年 電気学会論文賞を受賞。工学博士。
2006年 電機工業会功労賞受賞

<主な著書>(いずれも共著)
「ITが拓く電力ビジネス革命」:オーム社(2002年)。「マイクログリッド」:(社)日本電気協会新聞部(2004年)。「エネルギーの貯蔵・輸送」:NTS社(2008年)。「スマートグリッドの構成技術と標準化」:日本電気協会(2010年)。「スマートグリッド教科書」:インプレスジャパン(2011年)。


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このスマートグリッドは、大きく3つの可能性をもっています。
1つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用することによって、「電気エネルギーの面」から今後、クリーンなエネルギーを持続的に供給することが可能になることです。2つ目は、情報通信技術を活用することによって、「送配電網の運用の面」から効率的で信頼性の高い電力の供給が可能となることです。3つ目は、家庭やオフィスなどの需要家側においては、電気エネルギーの使い方をスマートにすることによって省エネルギー化を可能とするなど、「消費の面」からも新しい局面を拓くことが可能になることです。
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また、標準化の場にはどのようなものがあるのか、諸外国は標準化にどのようにとり組んでいるのか、さらに特許をはじめとする知的財産と標準化の関係は何か、政府と大学の役割は何かなどを考えたうえで、日本企業が今後どのように標準化にとり組むべきかについて考えます。


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スマートグリッド/スマートハウス時代に、ホームネットワークが急速に注目を集め、新しい標準が次々に登場しています。ホームネットワークはアプリケーション分野の面、技術要素の面のどの観点から見ても多数の要素が互いに関連する複合型のシステムとなっています。そのため、特定の技術が開発されれば一気に実現できるようなシステムではありません。それぞれの部分にあった適切な技術を組み合わせ、全体としては一般ユーザーが運用していける使いやすいシステムを構築する必要があるのです。
特に、スマートグリッドとしての制御系の波は、これまでのホームネットワークのシステムに、無線やPLC(電力線通信)などの通信技術の進展がみられたのに加えて、家庭内に創エネ、蓄エネの機器が出現し、重要なものになってきています。
さらに2011年3月11日に起きた災害は、人々の意識や社会的ニーズを一変させ、それまではコスト面などで敬遠されてきた再生可能エネルギーおよび分散電源の活用や、快適さを失うおそれから取り組みが足踏みしていた消費エネルギー抑制諸技術の実現に、改めて研究開発の方向性が向かいつつあります。
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スマートグリッド(次世代電力網)は、2010年1月にNIST(米国国立標準技術研究所)が「スマートグリッド標準仕様 第1版」を発表して以来、急速に世界的な取り組みが活発になってきた。本書は、具体化してきたNISTやIEC、IETF、IEEEなどの標準仕様や世界各国の政策、参入プレイヤーの動向など、最新動向を網羅する。
まず標準化動向については、2010年まではNIST中心に見えていたスマートグリッドを、欧州のIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)における取り組みについても広く取り上げてまとめている。さらに、個々の標準化のフレームワークのなかの具体的な技術仕様である、IETFやIEEEの最新動向についても整理している。
また各国の事情によって異なるスマートグリッド政策とビジネス動向については、国内をはじめ、米国、欧州、アジア諸国について最新動向と今後のロードマップについてまとめている。特に中国と韓国を中心としたアジア諸国で急速に推進されているスマートグリッド政策については、新しい動きとして注目できる。
さらにスマートハウスやスマートシティにおいて、ネットワーク経由で収集される家庭や企業の個々の電力情報に関するセキュリティ対策も重要視され、いくつかの国で、スマートグリッドのサイバーセキュリティに関する先進的な施策が推進されている。本書では、スマートメーターやスマートハウスにおいて想定されるサイバーセキュリティ対策についても、その脅威について触れながら解説している。
本書の最後には、最新のスマートグリッドの用語集も付け、読者がより理解できるように工夫されている。


好評発売中!
スマートグリッドシリーズ第3弾
日米欧のスマートメーターとAMI・HEMS最新動向2011
http://r.impressrd.jp/iil/SmartMeter2011

執筆者:新井宏征(株式会社情報通信総合研究所)
ページ数:172P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
本書は、第1弾のスマートグリッド、第2弾のスマートハウスに続いてく、「スマートグリッドシリーズ」の第3弾である。本書は、現時点におけるスマートグリッドビジネスの本丸とも言えるスマートメーターをテーマとして、関連するさまざまなトピックを取り上げている。電力量計の歴史をひもときながら、スマートメーターの登場までをたどり、スマートメーターの仕組みや、スマートメーターと密接に関連する重要な要素であるAMI(高度メータ―基盤)やHEMS(宅内エネルギー管理システム)について解説をしている。
わかりやすく整理した「スマートメーター・AMI・HEMS関連用語集」付き。


好評発売中!
スマートグリッドシリーズ第2弾
日米欧のスマートハウスと標準プロトコル2010
[Smart Energy Profile 2.0によるスマートグリッドの新展開]

http://r.impressrd.jp/iil/SmartHouse2010

執筆者:
新井宏征(情報通信総合研究所)、 水城官和・林為義(Wireless Glue Networks)
ページ数:174P
サイズ・判型:A4判
価格:CD(PDF)版 85,000円(税抜)
   CD(PDF)+冊子版 95,000円(税抜)

〔本書の特徴〕
スマートハウスを実現するための技術動向とSmart Energy Profile 2.0に関する初めての解説書スマートハウスは、近年、地球温暖化対策などの観点から、国際的にその必要性が注目されている。スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用して、住宅を取り巻くさまざまなアプリケーションを統合的に制御する取り組みであり、「省エネ」(エネルギー消費の削減)「創エネ」(再生可能エネルギーなどによるエネルギー生成)「蓄エネ」(蓄電池や電気自動車のバッテリーなどを利用したエネルギー貯蔵)が期待されている。米国では、すでにスマートメーターの設置やホーム内での監視制御機器に関しての標準化が活発になっており、日本でも国内版のスマートハウスに関連する動向が注目されている。
本書では、先行する米国のホームエリアネットワーク(HAN)技術を中心に、最新のアプリケーション「Smart Energy Profile 2.0」について全体像を解説している。さらに、スマート ハウスを構成する「スマートメーター」「HEMS」(ホームエネルギー管理システム)」「エネルギー端末」について整理してまとめ、続いてスマートハウスに関連する実証実験プロジェクトやビジネス動向についても触れている。


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